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街を歩く

秩父でパンを買った訳は

西武秩父駅から5分ほど歩くと秩父神社の正面に出る。その道が神社の参道にあたるのだが、参道沿いに小体な商店が立ち並でいる。ナショナルチェーン店が見当たらない、まさにThe 商店街なのだが、その中には明治大正に建てられた古い洋館や店舗が散在している。最近では小ぶりな旅館・プチホテルに改装されたところもあり、なかなか元気がある商店街として生き残っている。
その商店街の一番神社寄りの場所にあるベーカリーというかパン屋さんがずっと気になっていた。

信号待ちで店の前に立ち止まった時、何気なく入り口を眺めていたらなんだかすごいことが書いてあった。「昭和レトロ 元気の出る味。」とは、いったいいかなることなのかだ。
お店を見ても、昭和レトロと言うにはちょっと新しい。最近流行りのブーランジェリーという感じではないが、ごくごく普通の店の作りではないか。となると、お店がレトロではなく、パンの味がレトロということか。
横須賀の駅前にあるコッペパン屋みたいな、見た目も商品も昭和前期的レトロ感が全開の店も世の中には確かに存在する。だが、この店の醸し出す「普通感」と言えば、東京の下町商店街あたりでは当たり前にありそうだ。わざわざ「レトロ」をいうほどではないだろう。やはり、パンがレトロなのか。
そうすると現代日本の生きる化石パンである「コッペパン」推しか、それともメロンパン推しか。
どうにも気になってしまい、恐る恐る店内に入った。

色々と美味しそうなパンは並んでいるが、どうも普通のパンばかりに見える。パンについているPOPにも「元気の出るパン」は見当たらない。いや、ひょっとしたらすでに売り切れているのかもしれない。などなど考え、諦めきれずにようやく見つけたのが「くるみデニッシュ」だった。(名前を正確には覚えていないので、うろおぼえ記憶モードです)

家に持ち帰り食べてみて初めてわかったのだが、四角いパンの上に胡桃の入ったビスケット生地(たぶん)をメロンパンのように被せたものだ。胡桃の味が強いアクセントになっている。試しにと思って上面のくるみの入った生地を剥がして食べてみた。甘くて美味いが、ここだけ食べるとソフトなクッキーのような感じで、パンというよりお菓子だ。
わかりやすく言えば、四角いメロンパンのようなものだが、これはなかなか気に入った。好みの味だと思うのだが、これを食べて元気が出るかと言われるとちょっと微妙なところがある。くるみを使っているのが秩父らしいと言われると、まあ、そうかなとは思う。
やはり、ここは素直にもう一度お店に行って「元気の出る味」について店主に伺うことにすべきか、迷っている。それと、人気があるパン屋の特徴で、昼前に行かないとお目当ての人気パンは売り切れているというパン屋アルアルが起こっている可能性もあり、元気のある味を確かめるには、開店から午前10時までに訪れるべきだろう。ただ、その早朝訪店ツアーを冬にやるのは個人的に厳しいし、寒すぎてちょっと辛い。なので、もう少し暖かくなった頃に計画してみたい。

街を歩く

家の近くで洋食ランチ

駅前のURマンションとけやき並木

自宅近くの駅前は昭和の中期に開発された公団アパートが広がっている。そのアパート群も老朽化により平成には建て替えが進み、いまではURの賃貸マンションとして生まれ変わっている。旧公団アパートとしては珍しく駅前にひろがる交通至便な場所で、お家賃もそれなりに高いのだがいつも空き部屋待ちになっている人気物件らしい。
敷地内に公園もあり付近の道幅も広い。小学校も徒歩5分圏内なので、お子様がいるファミリーには人気があるようだ。それでも、小学生の数は減っている。日本の少子高齢化に抵抗している街なのだが、通りを歩く人の半数は高齢者なので、やはり今ではジジババ・タウンなのだ。

My Best オムライス の一つ

ただ、ジジババ・タウンであっても良いところがある。さすがに喫茶店の数は少なくなったが、町の洋食屋が生き残っている。それも平成の洋食屋ではなく昭和スタイルの洋食屋だ。だから、オムライスはふわふわたまごにデミグラスソースではなく、薄い卵焼きにたっぷりケチャップのスタイルだ。これが芸術的に素晴らしい。新宿の洋食屋とどちらか美味いと言われると、判断が難しいハイレベルだ。銀座の老舗洋食屋と比べるとこちらが好みだ。麻布にある有名な洋食屋のフワトロオムライスと比べたとしても、圧倒的にこちらが好みだ。
まさに一点の曇りなき究極のオムライス(ただし昭和版)だろう。新宿の洋食屋、岩手県花巻市にある大食堂のオムライスと並ぶ、日本三大オムライス(個人認定)であり、えへんえへん、と言いたい。
ちなみに中身は、チキンが入ったケチャップライスだ。自分好みのチキンが多めなもので、味つけも強めになっている。オムライスもチャーハンと同じで、自宅で作った物はプロの作品に及ばない料理の典型だ。やはりチキンライスが炒め物料理として難度が高いせいだろう。ケチャップで味付けしながらご飯を程よくぱらりとさせるのは本当に難しい。家庭で作るとどうしてもご飯がべちゃりとくっつき気味になる。
やはりオムライスはプロの腕を信じて、洋食屋で食べるべき食べ物なのだ。

駅から徒歩1分でとてもリーズナブルなお値段 おすすめは豚天

地元の街には、20世紀の終わり頃に中国残留孤児の帰還支援センターが置かれていたためか、本格的な中華料理屋も多い。最近はやりのガチ中華というものの走りだろう。ただ、そのガチ中華も今では日本生まれの2世が跡を継いだ店も増えているようで、だいぶマイルドになってきた感じもする。
ジジババの街でも老舗洋食屋とガチ中華が楽しめるのだから、人生捨てたものではないなと感じる最近であります。

旅をする

秩父土産で調達したもの

秩父鉄道 秩父駅は一階が土産物屋になっている。どうやら春先に改装したようで、店内が別物になっていた。コロナの3年間は観光業界に深刻なダメージを与えたはずだが、秩父では積極的に攻める作戦をとっているようだった。Good Job!!

その改装された秩父物産館?であれこれ物色していて見つけたのが「秩父路ぷりん」。あえてひらがなで「ぷりん」と書いてあるのが気になり、確かめてみたら「豆腐」のぷりんだった。早速一つ買って試食してみた。確かに豆腐の味がする。ほのかな甘味と豆腐(大豆)の味がする。一緒についていた黒蜜が甘さを強める道具として良い働きをしていた。
おしゃれなお土産だと感心したが、よく考えるとなぜ秩父で「ぷりん」なのか、それはわからないままの謎あり名品だ。まあ、美味いものに文句をつける気はない。

こちらは秩父駅ではなく、西武秩父駅の酒売り場で見つけたもので、ちょっと面白いPOPが付いていた。サンフランシスコ空港のJALラウンジで採用されたのはめでたいことだと思うが、それを宣伝するのも何か微妙な感じがする。右側にある「金賞受賞」をもっと大きくしても良いのでは…………
インバウンドの外国人観光客が戻ってきたら、JALラウンジの話を英語で書けば効き目があるかもしれないが。秩父で酒を買う人がサンフランシスコに行く確率はあまり高くないだろう。ただ、このサンフランシスコを他の地名に置き換えてみると、それなりに意味がありそうな気もしてきた。ニューヨークでとかロンドンでと書くとビジネス旅に出た感じが増す。シンガポールとかジャカルタと書くと、異郷の地で日本を楽しむ的な観光旅の気がしてくる。サンフランシスコは、ビジネスというより観光だろうか。 
それでも、この話に釣られて一本土産に買ってしまったので、POPはしっかりお仕事しているということだ。

秩父の酒は地元の街でもそれなりに買えるが、やはり品揃えは少ない。秩父に出向けば種類をあれこれ選べることもあり、ついつい買ってしまう。駅から少し歩くと酒蔵まで簡単に行けるし、試飲もできる。まさに秩父に行けば「呑み鉄旅」になる。そういえば某国営放送局の番組である呑み鉄旅も秩父に来ていたなと思い出した。首都圏にありながらローカル旅ができるのが秩父の良いところだな。

街を歩く, 食べ物レポート

カツカレーを食べに秩父まで

一年に何度か無性にこの店に来たくなる。中毒性の高い秩父の老舗食堂だ。特に、夏の暑い時期より冬の寒い時期の方が好みだ。夏の秩父は盆地のせいもあり、とてつもなく暑く感じる。以前、札所巡りをした時に、車移動でありながら死にそうに暑いと思って以来、夏の秩父は敬遠ぎみだ。コロナのせいもあり、2年ほど夏には来ていない。
ただ、茹だるような暑さの中、この店でうちわを使いながらクリームソーダを飲んで見たいとは思うのだが。

今回のお目当ては、いつものオムライスではなくカツカレーだ。店に入る前からメニューを決めているというのは、自分としてはありえないくらい珍しいことだが、この日は席につくなり注文完了した。
このドロドロ系のカレーと、カリカリにあげたカツの組み合わせを夢で見てしまった。なぜカツカレーの夢を見たのかはよくわからないが、少なくとも目が覚めて「これから秩父に行ってカツカレーを食べるしかない」と思い込んでしまった。そして、夢にまで見たカツカレーを完食して大満足した。最近では、これほど食事に満足したことはない。
ちなみに、カツカレーのカツは肉薄め、衣も薄めの「カツ」ではなく「カトゥレットゥ」みたいな感じが好みだ。厚切りロースのゴロンとしたカツや柔らかヒレ肉のカツが乗ったカツカレーも食べたが、やはり薄めのカツが良い。若い時分の貧乏経験で植え付けられた、カツカレー=貧乏人のご馳走感がいまだに抜けないからだろう。多分、一生抜けない我が人生で最大の「誤った」刷り込みだ。
福神漬けとカレーの組み合わせも素晴らしい。これが刻んだピクルスやラッキョウがついてくると、いきなり高級度が増すので(個人的な感想です)、自己評価としてはちょっと残念感が出る。
我がパーフェクト・カツカレーとは、カレーのルーにインド的本格感はいらない。ただ、昭和の蕎麦屋風の黄色いカレーではちょっと物足りない。茶色でドロドロしてあまりスパイス感がバリバリ出ない方が良い。まさに、この食堂のカツカレーは理想に近い。

テーブルの上にあるメニューも昭和の食堂感たっぷりなのだが、今回来てみるとファミレス的なメニューブックも置かれていた。中身を見ると、写真入りセットメニューが中心で確かにあれこれ頼みたい客向けには好ましい。
おまけにLINEのアカウントもできていた。友達になるとアイスクリームがサービスになるというので、さっそく友達申請した。普段はほとんど食べないアイスクリームだが、こういう出され方をするとなんだか一段上の食べ物に見えてくる。(美味しくいただきました)

店の外に出て改めて気がついたのだが、窓に貼られていたスプライトの看板が超絶に昭和を思い出させる。今では瓶入りのスプライトなど売っているのか。そもそも最近、スプライトを自販機で売っているのだろうか。ペットボトルのスプライトは見た記憶もないから、買ったこともない。
一度、スーパーかコンビニで確かめてみないと、気になって仕方がない。三ツ矢サイダーはちょっと前に買ったから、スプライトもありそうな気がする。ファンタは去年の夏に飲んだ記憶があるが、昔懐かしのオレンジだったかグレープだったかも覚えていない。
昔はあれほど呑みまくっていた炭酸飲料をほとんど飲まなくなったのは、やはり歳をとったせいなのか。それとも日本が豊かになったせいなのか。若くて貧乏だった頃は、合衆国発の炭酸飲料が贅沢品だった。
ヨーロッパから輸入した水を当たり前のように飲む時代が来るとは思いもしなかった。人工甘味料ではなく砂糖入り飲料が高級品だった時代だ。今では、アスパルテームなどの甘味料使用の方がダイエット飲料、健康志向品として、よほど高級品扱いされる。
スプライトの看板を見ながらそんなことを考えていた。カツカレーとスプライト、今では不健康とまでは言わないが、健康に気を使わないチープ・デイの食べ物として捉えられそうだ。確かに昭和は遠くなった実感がする。

旅をする

プチ鉄道旅 秩父編

秩父駅ホームで停車中を撮影したので飯能行き

昔懐かしの西武鉄道カラーでいまだに走っている西武鉄道秩父線の電車だが、池袋始発の直行ではなく、西武池袋線飯能駅で乗り換える。池袋から飯能駅まで急行で1時間程度。降りたホームの反対側に待っているのが、このライオンズカラー列車だ。

車内に入れば、あら懐かしい、対面式の4座シートで、気分はすっかりローカル路線旅になる。やはり、こんな時には乗り鉄ではなく呑み鉄モードになってしまうなあ。最新鋭特急のラヴューに乗れば間違いなく旅気分になるが、このローカル旅モードの方が県内プチ旅行感は強い。

秩父駅に降りるとお出迎えされるのが駅内設置の温泉だ。たびたび秩父にきているが、まだこの温泉に入ったことがない。一度試してみなければと、毎回思いながら素通りで帰ってしまう。反省して次回こそ温泉に入ろう。
右側にかかっているのが、限定運行の食堂車による秩父旅。これもコロナの間は中止されていたが、再開したようだ。この特急は予約制なので、乗ってみたいと思っていても抽選の倍率が高くてなかなか難しい。今年こそ応募してみようとは思う。
ただ、ソロ旅には向かない。同行者が必要だが、それもかなり高額の乗車(食事付きだから)になるので誰でも誘いにのっかてくれるわけではないだろうし。同じ金額を払えば都内でそれなりのレストランのディナーが楽しめる。鉄分が多いヒト以外は魅力を感じない気がする。

改札口を出ると、お土産物が並ぶショッピングエリアがあり、その先にフードコートがある。旅行者には優しい駅なのだが、ショッピングエリアとフードコートの中間に、なんと立ち飲みコーナーがあり、そこが改装されて広くなっていた。
これは、帰りの電車に乗る前にぜひ一杯やってねという強いメッセージだ。温泉に入った後、きゅっと冷酒を……………西武鉄道、素晴らしいぞと褒めてあげたい。

この店は次回に挑戦

西武秩父駅前にある食堂がとても気になっている。今回は別の店に行くつもりで秩父に来たので、次回に行く予定なのだが、とりあえず店の前まで下見に行ってみた。店頭の黒板は実に味がある。メニューもうまそうだ。山菜天ぷら食べてみたい。そして、マスターの実物にもお目にかかりたい。
秩父に車でくることが多いので、酒を楽しむことはできないのだが、電車でくれば問題なし。1月中には、なんとしてもこの店でおいしい秩父めしを食べなければなあ。と、次の旅の目的を決めてきました。

食べ物レポート

渋谷で二軒目 老舗中華を楽しむ

渋谷道玄坂の裏通りにある中華料理屋で、二次会をして餃子を食べる

この店に来たらちゃんぽんだよなあ、などと思いながら飲み屋の2軒目なので注文するのを躊躇ってしまった。餃子とビールで軽く一杯という気分でもあり、いまさら締めの麺を頼む歳でもないかと、自省の念もあり、友人が注文したのは餃子と野菜炒めだったので安心した。

味付き餃子は紅虎も美味いが、こちらもおすすめ

餃子はビジュアル系というか羽付餃子で見た目通りだった。味がついているのでそのまま食べるようにとのおすすめにしたがい、酢も醤油もかけずに食べた。口の中でハフハフしながら食べる熱々の餃子は本当に美味い。店によって、中身の野菜と肉のバランスが千差万別だから、餃子は中華料理店における店のシンボル(大げさだな)みたいなものだ。餃子と醤油ラーメンを食べれば、その店の味の半分はわかる。そこに野菜炒め、あるいはレバニラ炒めを加えれば、ほぼパーフェクトにその店の味が理解できる。(と、思っております)

酢をかけて味変してみたい

この日はレバニラではなく、海鮮系の野菜炒めだったが、もやしのシャキシャキ感が残る絶妙な火通りだった。うましだなあ。家庭で野菜炒めを作ると、どうしてもベタッとした水っぽいものになる。火力が弱く一気に加熱調理できないせいだが、腕前の差というより機材の差というべきだろう。とはいえ、家では野菜炒めがうまくできないことに変わりはない。
野菜炒めと炒飯こそ、プロの腕前が発揮される料理で、家庭料理と一線を隠す。だから、中華料理店で野菜炒めを頼んで、野菜の水煮みたいなベチャッとしたものが出てきたら、その店には二度と行かない方が良い。
個人的には野菜炒めにキクラゲが入っていると、ワンランク評価を上げることにしている。キクラゲは黒いから見た目の良さにはあまり貢献しないが、歯触りと食感が絶妙に変化する。中華料理では燻し銀の名バイプレイヤーだと思う。
日本料理で言えば、筍や生麩などが食感変化系食材で、キクラゲと同じ名バイプレイヤーだ。味を構成するものは五味だけではない。

餡がたっぷりで麺が見えない 皿うどん強化型?

あれこれつまみを食べ紹興酒を楽しんだ挙句、多少の罪悪感を感じながら皿うどんを頼んだ。皿うどんとカタ焼きそばの違いがいまだによくわからないのだが、麺の細さだろうか。おまけにこの店には、やわらかい麺の皿うどんもあるらしい。ちゃんぽん麺を軽く焼いて堅焼きにしたもののようだが、神保町みかさの焼きそばみたいなものだろうか。そうであれば、柔らかい皿うどんを別の機会に食べてみたいなと思う。
みかさの焼きそばといえば、どちらが本家になるのかわからないけれど、大分県にある日田焼きそばを思い出す。日田焼きそばを食べると、焼きそばという存在の認識が変わると思っていた。が、渋谷の片隅で皿うどんを食べると、また違う種類の焼きそば(?)が世の中にあることがわかる。
今度は、焼きそばとカツカレーの研究をしてみようかななどと、ぼやっと考えていた。

食べ物レポート

小樽を楽しむ究極の技

冬の小樽は、なかなか風情があるところだが、海風が冷たい

札幌でも雪が降っていたが、路面はまだ出ていた。小樽に来てみたら、路面はすっかり白くなっていた。移動距離30km程度で随分と街の様子が変わるものだ。冬靴(裏が滑り止めソール)を履いてきてよかった。この日の目的地は老舗の蕎麦屋で、開店5分前に辿り着いた。一番乗りだった。昼時には行列ができる人気店なので、そこは予定を立てて行動しなければならない。(えへん)

席に着くと、まずは日本酒を熱燗で注文する。当然のように蕎麦味噌がついてくる。これが嬉しい。蕎麦屋で酒を飲む時、一番の楽しみはこの蕎麦味噌だと思うのだが、たまに柿ピーが出てきたりすると、かなりガッカリする。熱燗は、銚子の首のところの温度が低めだった。つまりレンジアップではないということだ。昔ながらの燗付け機だろうか。

酒のつまみになるものは、これも本日の本命であるタチカマを迷わずに注文した。北海道ではマダラの白子をタチという。その白子を使ったかまぼこをタチカマというのだが、これはタラがとれる冬だけ限定の食べ物で、おまけに生産する方が少ない。いわゆるレアものだ。
食感は弾力が強いハンペンのような感じで、かまぼこと比べるとふわふわしている。味はかなり濃厚で、若干の生臭さがある。これをワサビ醤油で食べるのだが、元々塩味が強いのでワサビだけで食べるのがおすすめと店員さんに教えられた。
醤油ありなしで食べ比べてみた。確かに、ワサビだけの方が味が引き立つ気もする。しかし、醤油も捨てがたい。どちらも日本酒には抜群に合う。これと似た感じの肴といえば、バクライだろうか。食感は全然違うが、味の系統が似ている気がする。

日本酒はたくさんの銘柄を揃えているが、蕎麦屋の親父、板長、女将のおすすめという酒を順番に試してみるのが良さそうだ。ただ、熱燗にするのであれば、相性を考えることも重要だ。大吟醸を燗酒にするのはなかなか勇気がいる。

前回来た時注文したのはかしわぬきだったので、今回はもう一つのぬきである「てんぬき」を選んだ。これは、なんと言えば良いのか、汁物の酒の肴というべきなのだろう。半分食べた?ところで、衣がつゆを吸ってフニャとなった海老天を味わう。いや、これを考えた人は天才だ、と言いたいくらいのうまさだ。
他の蕎麦屋では大海老の代わりに小エビで5本の天ぷらを入れてくるところがあるらしい。そうなると、順番に食感の変化が楽しめるから、それもまた楽しそうだ。普通の蕎麦屋でも「天抜き」を注文したいのだが、メニューに載っていないとなかなか躊躇ってしまう。妙に蕎麦通ぶっているとみられるのも嫌だしなあ、などとお店に忖度してしまう。天ぷらと蕎麦を別に頼むという手もあるかとは思うのだが。それでは「抜き」にならないし。
この店の天抜きはつゆの加減が絶妙だ。そばを抜いて完成するという不思議な料理だが、うまいものはうまい。

そして、これも前回食べられなかった宿題メニューのカレー丼を頼んだ。そばを頼むか随分と迷ったが、カレー丼にしてよかった。この料理もよく考えれば、カレー南蛮のあたまをそばではなく米に乗せたと言えばそれまでだが。蕎麦つゆで仕上げたカレーは本当に美味い。蕎麦より米に合う。肉の味がカレーと合わさると最強になる。
しかし、一度これを食べてみれば、メニューに書いてある通り、やみつきになるのは間違いない。ただ、そこが問題なのだ。次にそばを食べに来て、あれこれ迷いつつ結局はそばを頼まずカレー丼を食すという悪習慣ができそうだ。いかんいかん。

食べ物レポート

ラーメン道場 最後のいっぱい

今年の冬は北国に長居してしまった。色々と用事はあったのだが、それを全部片づけ埼玉にある自宅に戻る日が来た。滞在中は大雪にも当たらず、まずまず幸運だった。今回は、ラーメンよりも蕎麦を食べた回数が多かったような気がする。それだけに、最後はラーメンにしようと千歳空港のラーメン道場に向かった。

半年前までは、いつも客席がガラガラだったらラーメン道場だが、ついに客が戻ってきたようで、ほぞ全店満席。一部の人気店は行列ができている。ただ、その行列に対して対応がぞんざいな店もあり、何だかなあと思ってしまった。
コロナによる観光客の減少で、接客レベルが圧倒的に落ちたなという感がある。千歳空港はアルバイトが長続きしないのだそうだ。慢性的な人手不足で、高い時給での求人が続いているから、簡単にやめて次の店に移ってしまうらしい。
おそらく、コロナのダメージで人員補充をサボってしまったのだろうなあ、と同情する余地はあるが、客の全てが一過性の観光客ではないことには気がついているだろうか。ビジネスで旅をしている客も多いので、スーツ姿の客は来月また来るかもしれないという想定はできているか。
トッピングを山盛りにして客単価を上げるより、一過性の観光客ではなくリピートする層を囲い込むという発送は持てないのだろうか。
混雑する店を見ながら、そんなことを考えていた。行列に並ぶほど、こだわる店があるわけでもないので、久しぶりに味噌ラーメンの店を選んだ。

蕎麦屋であれば鴨南蛮的なものが、普通のラーメンかな やはり味噌ラーメンはうまい

普通の味噌ラーメンを頼んだ。普通においしいので満足なのだが、観光客向けの何でも乗ってますラーメンは注文しないようにしている。チャーシューとメンマという基本構成だけで、海苔が乗っているのがちょっと贅沢な感じがする。
隣に座っていた観光客風の若い男性は、全部乗せを頼んでいた。そのビジュアルは、ラーメンというより、何か別の丼のようにも見える。なるほど、一生に一回の「北海道ラーメン」であれば、この全部食べてみよう、乗せてみようというのはありななのか、と今更ながら気がついた。
単価を上げたいという店の思惑と、もう二度と北海道には来ないのでせっかくだから名物全部色々食べてみたいという客の思惑が、マッチしているのだなとは思う。(美味しい料理という観点では全くすれ違ったままだろうが)
そうであれば、やはり、客の思惑に合わせて、カニ、いくら、鮭、バター、コーン、アスパラ、じゃがいもくらいは乗せてやらないといけないぞ。麺料理としての完成度は二の次になるが、オール北海道食材お試しセットにするべきだろう。などと、皮肉なことを考えてしまった。
そんな面倒臭い客は、店からするとやはり対象外ということだろうと自己分析して、ちょっと反省しました。次回はトッピングもりもりは頼まないけれど、せめてチャーシューメンにします。

食べ物レポート

ひとり酒がお気楽なわけ

 大通公園の冬の景色は、気が滅入る 空が曇りがちなせいもあるだろう

大通公園周辺は、北側がビジネス街、南側が商業地区と言った大雑把な括りになる。そのため、南北どちらの方向に行っても居酒屋やレストランが点在する。コロナが収束しつつある中、居酒屋も通常営業に戻り昼酒飲めます的な緊急避難はおしまいになったようだ。それでも、昔からずっと昼酒営業をしていた老舗では、午後になると酒飲みが集まってくる。
昼酒営業を謳う店は少ないので、どうしても固定客化するようだ。昼酒よりも珍しいのは朝酒だろう。東京でも繁華街には、夜の営業が終わった後、その従業員が飲みにいく店があちこちにある。深夜営業から早朝営業の飲み屋だ。新宿や渋谷などの繁華街でも、朝の通勤客に混じって、しこたま飲んだ酔客が歩いていたりするのは、夜営業を終えたあと深夜営業で楽しんだ方たちだろう。
札幌でもそんな光景があるのだろうか。随分昔に徹夜明けで朝から飲みに行った店は、もう閉店してしまったようだが。

串カツは最強のつまみだ 串揚げでは無いことが重要

その昼飲みの店で串カツを頼むことが多い。居酒屋メニューとしては絶滅危惧種だろう。トンカツ屋でも串カツがメニューにない店の方が多いような気がする。串カツの中身は、油身の多い豚肉と玉ねぎが定番だと思うのだが、あまり肉が大きいのは好みではない。肉2に対して玉ねぎ3くらいのチープ系串カツが好みで、大学時代の学生食堂で食べていた名残というか、刷り込みされた「擬似うまいもの体験」であると自己分析している。
同じような刷り込み体験をあげると、カツカレーのカツの厚さにもこだわりがある。自分流のカツカレーに乗っているカツの楽しみ方だが、中身の肉が薄い程よいと思っている。カツカレーとは、衣をカレーで食べるもので、中に入っている肉はおまけ程度の薄さで良いと思うのだ。肉厚のヒレなどがカツの中に入っていると、カレーとカツのどちらが本命かわからなくなる。それは、ちょっと困るというのが本音だ。
学食で味の薄いカレールーにソースをかけ味変させて、ペラペラのカツをそのカレールーで楽しむというのは、貧乏学生時代におけるたまの贅沢だった。その学食での刷り込みが今でも抜けない。トラウマというより正しい食の記憶だと思っている。
そんなあれこれを考えながら、一人で酒を飲む。好きなものを好きなだけ食べる。職業柄と言っても良いのだろうけれど、居酒屋に行ってあれこれ注文して「お勉強」するのが常だった。そんな時は複数人で行って、少しずつ料理を試すという飲み方をしていた。当然ながら、嫌いな食べ物も中には混じってくる。勉強だと言い聞かせて無理やり食べる。食の楽しみとはちょっと距離がある行動だった。どうも真面目に仕事をしすぎていた気もする。
その反動だろうが、最近は好きなものしか食べないことにしている。そうなると、誰かと同行していても、相手の注文する品物は基本的に別ものと考える。たまたま、同じものを注文したい時は、おとなしくご相伴に預かるが、それ以外は手を出さない。
これは、なかなか難しいことだ。自分の食べたいものを食べる。相手の注文したものは食べない。となるとテーブルの上に皿が溢れる。相手に呆れられるのは間違いない。協調性にかけると言われると返す言葉もない。
だから、一人で飲みにいく方が気楽なのだと、ようやく気がついた。コロナのせいで、そこに気がついた。自分の胃袋のキャパを考えると、たくさんは注文できないので、注文するには熟慮がいる。注文したいものが多くて一度に食べきれないのであれば、もう一回その店を訪れることにする。なんだか、不思議な「新しい行動様式」を身につけたということだろう。

もう一つ変化したことだが、最近は「まずはビール」を頼まない。「まずは……………」と注文するのが日本酒の熱燗になった。銘柄などにはこだわらない。おおよその居酒屋で熱燗に使われる日本酒は、その店で一番普通で一番安いことが多い。それで十分なのだ。熱燗と合わせて水を頼む。熱めの日本酒を飲み、チェイサーで口をゆすぐ。この繰り返しが、一番ダメージの少ない飲み方だと気がついた。熱と冷の繰り返しが大事なようだ。
よく冷やした日本酒は口あたりが良いから、早く飲みすぎる。ハイボールなどの炭酸系も、ぐびぐび飲んでしまい、いつの間にか飲んだ杯数を忘れてしまう。これがいけない。日本酒を熱燗で頼むと、銚子の数で飲んだ量がわかる。目の前に3本の調子が並んだら、本日の終了サインと思えば良い。
ところが、熱燗を複数人で飲むと、銚子の数と飲んだ量が一致しなくなる。差しつ差されつの飲み方は、ここが最大の課題だ。酒量を図るという意味で、一人酒はまことに簡単で健全だ。
コロナが流行っている間は、酒を飲んでのコミュニケーションがなくなると嘆くオヤジ族が多かったようだ。コロナが終われば、飲み会が復活すると期待していたオヤジたちだが、結果は正反対になってしまったようだ。
飲み会のようなパワハラ・セクハラ満載のコミュニケーションはいらないとはっきりいう若い世代が増えて、渋々とオヤジ同士で傷跡をなめるような飲み会しか無くなったらしい。おそらくコロナの落とし子としては、これが最良の社会変化だろうと思う。
一人飲みでは、コミュニケーションなど不要で、悩むこともない。現代日本に最適化した、理想の飲み方だと思うのは自分だけだろうか。いや、自己弁護であります。

街を歩く, 食べ物レポート

おそらく一人では決して来ない店

渋谷で飲むことになり、お目当ての店が満員だったので、友人のおすすめする居酒屋に連れてこられた。ビルの奥まった場所にあり、自分一人では入ろうと考えもしないような場所だが、中に入ってみるとこれまた「驚き」がたくさんのお店だった。今風の若者向け居酒屋というのは、こんな感じになっているのだねという、おじさんのびっくり体験だった。

入り口前の暖簾は、典型的な居酒屋風だが、店名を見るとニヤッとしてしまう。この店のある場所は渋谷道玄坂下にある。道玄坂の南側と言えば良いのだろうか。通りの向かい、坂道の北側にはヤングカジュアルなファッションビルがある。なるほどな、と思わせる店名だ。

小皿料理はワンサイズ?

料理は小鉢を色々取り揃えている感じで、お値段はどれも低めだった。小皿料理というよりお手軽なつまみがたくさんという感じだ。居酒屋の定番というメニューも多くあるが、ちょっと変わった気になる「アイデア・メニュー」もある。今回気になった変わりメニューは枝豆の燻製で、スモーキーな香りがついた枝豆というのは、Good Jobと言いたくなる。
老舗居酒屋の定番メニューは意外と進化しない。老舗だから伝統を守るという感覚があるのか、あるいは老舗にあぐらをかいてメニュー改良をサボっているのか。少なくともコロナの激動を乗り越えるには、店のあれこれを変化や進化させる必要があると思うのだが。最近開いた新しい店は、当然ながらコロナの暴風に対応して時代の変化にあわせてきているのだし。
この店も7時を回る頃には若い客で満席になっていた。若者の酒飲み離れという言葉はどこの世界のことだと言いたいくらいの賑わいだった。が、大声で騒ぐものは少ない。

揚げたて天ぷら うまし

この店の「推し」は天ぷらだった。出てきた天ぷらに、ちょっと驚いた。この見せ方というか、盛り付けというか、出てきた感じがどうにもすごい。カウンターに座り、揚げたての天ぷらを目の前のアルミトレイに置いていくスタイルの大人気な天ぷら屋がある。その博多にある人気店を、それなりの外食企業が真似をして、それも完全コピーして出店している。が、コピー店はなかなか成功しない。なにか重要な部分がコピーしきれていないからだろう。
そのあげたて天ぷら提供スタイルが、この店でもそのまま使われている感じだが、それにしてもこのバラッとてんぷら置きました感は斬新だ。勘ぐってしまえば、あまり見かけは気にしないということだろうか。見栄えより味で勝負ということかもしれない。
天ぷらは熱々なので、当然ながら美味い。衣は薄めだが、揚げたて天ぷらにはその方が向いている。天ぷらのうまいさと見た目の凄さのギャップが、この違和感の原因だ。だが、そこはオヤジが目を瞑るしかないなということだ。今風の天ぷらや唐揚げは、揚げたて重視と割り切ろう。
おいしい天ぷらが高級料理で無くなるのは、ある意味正しい世の中のありようだ。天ぷらというカテゴリーが、お座敷天ぷらみたいな高級店しか残らないのであれば、食文化としては継続して成立はしない。
お安い天ぷらは全面的に賛成だ。

その安い揚げたて天ぷらを楽しんだ後に、全く別の意味で楽しんだのが、大根の唐揚げだった。おそらくおでんの大根のように、出汁で一度煮込んだものを、衣をつけカリッと揚げたのだと思う。これはこれで、とてもおいしい。素晴らしい料理アイデアだが、それ以上に楽しんだのはこの袋で、とてもとても楽しく笑わせてもらった。
ご丁寧に袋にも、I’m laughin’ it と書いてあるので、これは笑って楽しむのが正しい。パロディーとしてニコニコするのが大人の嗜みだ。
この店をプロデュースした方、なかなかのジョーク好きらしい。あと一つ二つ、この手の楽しい店を作ってもらいたいものだ。