
ビステッカという見覚えのない言葉が気になって立ちどまってしまった。後で調べてわかったのだが、イタリア語でステーキという意味らしい。つまり、この店はイタリア風のステーキハウスなのだった。
最近ではすっかりおしゃれで人気度抜群の街恵比寿だが、この街に30年近く通っていた大都市勤務者としては、おしゃれな街恵比寿などと言われると、ちょっとこそばゆい気分になる。
恵比寿は山手の下町などと言われていた。渋谷という大繁華街の隣町でありながら、あまりパッとしない住宅地という意味だろうか。
その恵比寿が爆発的に変化したのはバブルの終わり頃、恵比寿駅が大改造されて駅ビルになったあたりからだろう。そして、あのバブルの象徴のようなガーデンプレイスができて、一気にスター路線に乗り出したという感じだった。
その恵比寿に小体なイタリアンレストランが続々と開き始め、一時期はラーメン屋よりイタリアンレストランの方が多いくらいだった。不思議なことにフレンチレストランはほとんどなく、イタリアンばかりだったのは、やはりバブルの時に大量生産されたイタリアン・シェフが溢れていたためだろう。
そんなイタリアンな街の恵比寿でもイタリアンステーキの店はなかったと記憶している。街が変わるというのはこういうことかなどと、考え込んでしまった。イタリアンレストランが多すぎて、その中での差別化が必要となったのだろう。2000年代に流行った肉ブームはあまり関係なさそうだ。もはやパスタやピザでぼったくれれる時代ではなくなり、実質的でコスパの良い料理が求められるというご時世になったのだう。
ただ、このメニュー看板を見ていると、あまりに茶色一色であり、宣伝効果としてはいかがなものかなあ、と感じてしまったのは、昔の職業病みたいなものだ。やれやれ。

ランチ営業をしていない日だったのか、店内は暗いままだった。機会があればディナーに行ってみようか。そういえば、初めてイタリアに行った時、最初の晩飯がTボーンステーぃだったことを思い出した。そうか、あれがビステッカというものだったのか。