
すすきのという北日本一番の盛り場、夜の繁華街は南北が南4条から南8条までの400m、東西は西1丁目から西6丁目までの600mの範囲に飲食店、風俗店、その他諸々の怪しい店が広がる。おおむね10階建てくらいの雑居ビルが立ち並び、その中に広がるディープな空間だが、今でも昭和中期に建てられたであろう木造モルタル二階建ての飲み屋長屋みたいなものも残っている。この手の古い建物は地上げでもめるたびに火事で消失するという不思議な現象が起きるが、最近は薄野の火事ニュースはきかなくなった気がする。(ガールズバーの放火事件はあったか)
その大繁華街すすきのの周辺、特に北側に小ぶりな飲食店がたくさんある。南3条通り沿いはとても多い。自分ではこのあたりをオフ・すすきのと呼んでいるのだがすすきの野の真ん中で飲むよりもオフ・すすきので飲むことがずっと多い。学生時代から変わらない個人的な伝統であり習性だ。
最近、またオフ・すすきのに変わった店が増えているので、ちょくちょく夜の散歩に出掛けては次に行く店を物色している。
その第一候補がこちらだ。札幌では時々ずば抜けた不可思議な店名をつける天才がいる。札幌のライブハウス「神経質なニワトリ」という伝説的な店があった。この店名は実にユニークだと思ったが、札幌のサブカルチャーを支える店は、みんなそんな感じの店名だった。
ここからメジャーデビューした著名なバンドもあるが、地元限定のバンドにとってはまさに聖地だった。略称で呼ばれることもなく、誰もが店名をしっかりと言っていたのも、崇敬の念の表れだろうか。
すすきの界隈にはカタカナの小洒落た名前の店が多い、英語圏の名称が多いが、フランスやドイツ系のものもある。共闘ある方が店名を考えているのだろう。が、たまにこういうドキッとする店も出現する。
九州であれば恐れ多くて店名にできないような著名人のもじりだが、最南端の町のヒーローでありけして冷やかすようなものではないのだろう。ただ、北の住人にとっては。単純に九州を思い起こさせる力が、この人似なるから……………という程度の理由しかいなかった、至極単純な思いつきに思える。薩摩人からすると噴飯物だろう。薩摩人がほとんどいない北の街だから成立するとも思える。
ただ、いざこの看板を眺めてみると、なかなか飲んだくれの店にはピッタリとくる気もするが、新宿あたりでこの店名があると、ちょっと揉めそうな気もする。
おまけに、北海道であれば九州料理と言ってもなんとなく通用するが、実際には九州料理などというものは存在していないと思われる。博多名物とか熊本の伝統料理とか、宮崎の地鶏炭火焼きとか、各地の美味いもの総称として「九州料理」は存在しない。対外的にはオーール九州として対抗意識を燃やす九州の人々もが、九州域内ではそれぞれ独立文化を主張する。弥生時代より続く日本最古の郷土文化を誇る土地柄だ。
一度この店に入って、九州料理とはどんなものか試してみたいと思うのだが、宮崎地鶏と博多水炊きが混在している怪しい気配がする。熊本の馬刺しと大分のとり天がセットで出てきそうだし、長崎のちゃんぽんが締めの麺扱いにされていたら興醒めだなあ。
ビルの中に入ると分かりにくいが、路面店であればこその面白看板探索だ。オフ・すすきの散歩は本当に面白い。