
お盆も終わり、夏もピークを過ぎたかなと残念に思う時期になって、少しばかり昔のことを思い出していた。常夏の南国暮らしをしていた頃のことだ。
25歳の時、語学研修ということでハワイに1年間行った。働きながら実践的に英語を覚えるという趣旨だったはずなのだが、週5日は店舗勤務、2日休みという日本にいるよりも良い労働観だった。結果的に随分と怠惰な南国暮らしをしていたのだ。だが、憧れのハワイと言って浮かれていたのは1ヶ月だけ。すぐに飽きた。
オアフ島は東京23区くらいの島なので、2-3回休日に出かけるともう見るところもない。サーフィンでも趣味にしていれば別なのだろうけれど、ハワイで楽しめるような趣味は持ち合わせていなかった。2ヶ月もしないうちに日本語の活字恋しさが募り、ハワイ発行の日本語新聞を購読するようになった。今であればネットで同時的に日本の情報も手に入るし、ネット版で本も読める。当時を思うと夢のような話だ。
日本語の活字に飢えてあれこれ探していたら、ワイキキの観光案内所とJAL支店に併設されている観光案内コーナーで1日遅れの新聞や雑誌が読めることがわかった。
また、古本屋に行くと英語のペーパーバックと一緒に日本の文庫本もあった。どうやら日系人の放出品らしい。それでも足りずに英語のSFペーパーバックにも手を出した。
そんなこんなでハワイ暮らしになれたのは滞在3ヶ月後あたりで、すでに観光名所など全部征服しているので、休日には地元のフィッシュマーケットに行くとか、地元の博物館に行くとか、ロコ的な楽しみ方に変わっていた。食生活もすっかりアメリカ風に染まり体重は10Kg増え、日本から持って来た服は着られなくなり全て買い直した。
肝心の語学だが、これは働きながら従業員と話をするのが一番良いと思っていた。それなりに話す語彙も増えたのは良いのだが、基本的に店舗で勤務しているのは大多数が高校・大学生のアルバイトであり、いわゆる若者言葉しか話さない。英語の教科書には出現しない言葉やフレーズのオンパレードだった。日本で言えば、「チョーすげぇー」「マジ??」「やばくね」みたいなものだろうか。Fではじまる4文字言葉は最頻出現語だった。
おまけに、サモア語が多数混在している。Aloha こんにちは や Mahalo ありがとうは当たり前に使われるので英語の単語に追加してサモア語も覚えなければいけない。おまけにハワイ独特のイントネーションやアクセント、語尾にはyeahをつけるなどなど、これも英語なのかと驚いてしまう。そして、ハワイは移民文化なので、インド訛りとかフィリピン訛りが多い。まあ、おかげで自分の日本訛りも受け入れられたのだろう。結局、日本の学校教育で習ったことはほとんど役に立っていない。
一年もそんな暮らしをしていると、完全にハワイ訛りの英語を喋るようになっていた。日本でも山形弁を話すアメリカ人がテレビに出演していたが、おそらくあんな感じだったのだろう。
その後、アメリカ本土にいるアメリカ人の友人に指摘された。まあまあ、英語はしゃべっているが、訛りがあるねえ……………それに、随分と乱暴な言葉遣いだなと。
どうやらハワイ訛りの不良学生的な英語を覚えてしまったらしい。ハワイでガールフレンドはできなかったが、何店舗か勤務先が変わり、そこでは若い女性従業員たちちが日本人を面白がられてよく話しかけられていた。何人もが熱心に英語を教えてくれた。彼女たちには感謝しかない。思い返せば、まさにストリート・スマートな英語学習法だったのだと。
ハワイ訛りが取れるのには5年ほどかかった。乱暴な言葉遣いは、注意しているのだが、いまだに治っていないらしい。日本語を理解するアメリカ人によく揶揄われる。日本語で喋る時はすごく丁寧に話すのに、英語で話すときは随分と乱暴だねと。うーん、ストリートスマートの限界だろうな。ビジネス英語はやはりアカデミックに学ばないといけないらしい。