街を歩く

日本橋三越

ずいぶん昔になるが、オーストラリアから客人が来た時に、東京都内の案内役をすることになった。お江戸界隈に住んで数年経った頃で、ようやく路線図があれば都内のあちこちに行けるようになった頃だ。当然だが、銀座などほとんど行ったことがない。もちろん日本橋も浅草も未体験であり、せいぜい渋谷と新宿が地図なしで歩ける程度の土地勘しかない。原宿は竹下通りに一回だけ行ったくらいで表参道など歩いたこともない。そんなウブというか無知な頃だ。
観光案内などできるはずもないが、仕方なしにお江戸のガイドブックを数冊買って来て、受験勉強並みに集中読破した。名所とその場所を大まかに地図で確認して。
当時は、当然ながらネットなど存在もせず、すべての情報は紙と口コミがすべて、なんとおおらかな時代だったことか。

そのオーストラリアからの客人が、なんと盆栽が見たいという。調べてみると大宮の盆栽村が有名らしいが、そもそも大宮にも行ったことがない。幸いに会社の方で運転手付きの車を用意してくれることになり(自分が都内の運転はできないと直訴した)、盆栽は日本橋三越の屋上に立派なうりばがると言割れた。
また、日本情緒あふれる土産を買いたいという要望もあり、それは原宿表参道にある「外人向け土産物店」を教えてもらった。その日のコースは原宿経由日本橋と決まった。

現地案内人兼通訳みたいな役割だったのだが、情けないことにほとんど役に立てなかった。原宿では日本史の知識がないと、並んでいる土産物の説明が難しい。特に陶磁器や書画については、歴史的知識が必須だ。反省した。日本人でありながらあまりに歴史を知らない。高校時代に日本史の時間は寝てばかりいたことを深く深く後悔した。

盆栽に関しても同様だが、こちらは売り場の担当者が専門的な知識を持っていたので、なんとかこなせたと思う。専門用語は全部そのまま翻訳せず(出来ずに)説明したが、それで結構満足してもらえたようだ。盆栽の英語での発音は「ボン・サーィ」という感じなのだと初めて知った・

さて、そのボンサーィこーないに行く前に、かの有名な天女を初めて見た。おお、これが日本橋三越のシンボルか、と感動したのだが、これまた説明できなかった。天女を説明するにはかなり深い仏教知識が必要だ。最低でも真言宗に代表される曼荼羅世界と天界・極楽のヒエラルキー制度を理解していなければ無理だ。苦し紛れに仏教における天使のようなものという、全く珍説を披露してしまった。

以降、猛烈に反省し、お江戸の名所・宮跡に関しては相当お勉強をして嘘をつかない程度の知識は手に入れたが、受験勉強以降であんなに勉強した記憶はない。若気の至りなどと忘れることはできない苦い思い出だ。

来週は久しぶりに日本橋にでも遊びに行くとしよう。

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