食べ物レポート

カレーパン探索日誌 ドンク

バターチキンカレー・パン 見た目が上品だ

ドンクといえば、自分の中では高級パンの代名詞だった時期がある。個人経営のおいしいパン屋があることを知る前は、デパートの中にあるインストアベーカリーこそ高級パン屋だと思っていた。フランスパンを売っているというのが、高級店の意味だった頃だ。今ではすっかり当たり前でスーパーでもメーカー品のフランスパンが買える時代だから、当時のフランスパンの高級振りが理解できる人はもはや高齢者しかいなくなっただろう。
パン屋で焼きたてのフランスパンを買い、無造作に放り込まれた紙袋を抱えて歩くとプチプチと音がする。そんな映画のシーンを見た後、プチプチ音を聴きたくて、並んで焼きたてのバゲットを買ったことがある。バゲットという名すら知らなかった、昔々のお話だ。
そのドンクで(自分の中では神格化されているパン屋で)、まさかのカレーパンを発見した。その驚きと落胆みたいな複雑な心境は、ちょっと説明するのが難しい。なぜにカレーパンなどという庶民的な世界に突入してしまったのだというガッカリ感と、老舗ブランドの名にかけてどれだけすごいカレーパンを作ってくれたのだろうという期待感と。

カレーの味が濃いめなので量は少ないが生地に負けない

形は扁平小判型、フィリングはバターチキンという、カレーの中では高級優秀種と見なされるものを使っている。カレーの中身をあれこれいじくり回すのは、カレーパン高級化の基本的戦略で、「和牛」「三元豚」などうまい肉型で勝負するか、「海軍カレー」「欧風カレー」などカレーの作り方などで差別化するか。
そこをちょっと横にそれて、バターチキンカレーというのが「ドンクらしさ」かもしれない。揚げパンではなく焼きパンなのもチープ感、庶民感を避ける狙いがあるのかもしれない。などなど勝手にドンク擁護の理屈をつけてみた。
カット断面を見るとわかるが、やはりカレーの上に狭い空洞ができている。個人的な評価基準では、この空洞が大きいカレーパンは残念認定となる。揚げタイプでは、空洞が断面の半分以上になるものもある。
空洞が大きいと食べた時に「スカ」感がある。かぶりつき噛み締めると、空洞の分が一気に潰れてしまうので、歯ごたえがないからだ。だからこの程度の空洞は、ギリギリだけど許容範囲としておこうと思う。
ただ、よろしくないのは底面の生地が薄いところと厚いところの差があることだ。これは、噛んで身見るとわかるが、厚い生地のところはカレーの味が少なくなる。逆に生地の薄い部分はカレーが濃厚になる。この違いを楽しむか? というと、それはない。
バターチキンは、ソースとして優秀だった。マイルドなカレーという感じがするが、味はしっかりと強い。安いカレーパンでよくある「インチキっぽい」味はかけらもない。安いカレーパンは特売安売りのレトルトカレーみたいな味がする。要するに深みが足りない。このバターチキンはレベルの高さが感じられる。
でも、ドンクでカレーパンを買いたいか、と言われるとちょっと微妙な気がする。全くの個人的な思い込みなのだが、ドンクだしなあ、やめてくれないかなあ、的な気分が強い。メゾンカイザーではカレーパンが売っていない。(見たことがないだけかもしれないが)やはり、バゲットの横にカレーパンは似合わないと思うのだけれど。

旅をする

グランピング場を初めて見て感動した件

パン屋を目指して行き着いたところがキャンプ場だったという、なんとも不思議な経験をした。要するに、キャンプ場のセンターハウスというか食堂で、パン屋の営業を始めたらしい。確かに、キャンプ場は営業が週末、長期休暇型なので、平日や閑散期の商売安定のために、パン屋を始めるというのは良いアイデアだと思う。特に埼玉県北西部の山沿いにあるこのキャンプ場は、周りが住宅地でもあり平日需要はそれなりに期待できそうだ。
ネットで調べてみると、このキャンプ場は元公営の施設だったようだが、今は温泉ホテル経営の会社によって運営されているらしい。最近キャンプ場は全く利用していないので、ひょっとすると今の流行りはこの手のハイレベルな施設なのかもしれない。しかし、ピザ釜が借りられるというのは、単純にすごいなと思う。昔々、コールマン社の組み立て式のオーブンでピザやパンを焼いて楽しんだこともあるが、あれはやはりおもちゃの類だった。石窯とはねえ・・・と感心するしかない。

そしてこのキャンプ場は川沿いにある「グランピング」施設が主体のようだ。離れたところにテントサイトもあるのだが、この超高級グランピング・テントを見てしまうと、心が半分くらい持っていかれてしまうだろう。何も知らずにテントをサイトを予約してきたら、楽しいキャンプ気分をぶち壊してくれる「凶器的存在」だ。でも、ここで泊まってみたいというワクワク感が湧き上がる。困ったやつだ。

また、この季節ならではの光景だが、桜並木沿いにグランピング施設が並んでいる。いわゆる「映え」のする光景だ。春休み中ということもあるのか平日にも関わらず利用者が多い。朝のキャンプ場といえば子供の声で騒がしいというのが相場だが(まあ、それを楽しむのもキャンプらしさではあると思う)、ここは意外と静かだった。大人のグランピング場ということと、朝食はセンターハウスで楽しめるらしい。

サイト脇では川のせせらぎの音を聞きながらハンモックでまどろむという、なんとも贅沢な時間が楽しめるらしい。なんだか、昔に貧乏キャンプをやっていた頃のことを思い出してしまった。テントを貼るのが面倒くさくなり、車中泊のできる車に買い替え、全国あちこちにキャンプに出掛けていた。それでも外で焚き火をしたくて、ホテル泊まりはほとんどしなかったのだが、今では焚き火のできる「グランピング」があるのだな。であれば、車中泊などもする必要がない。良い時代になったものだなあ。

食べ物レポート

自分史上最強サイゼリヤ

またまたサイゼリヤの卵の話なのだが、この煉獄の卵というメニューを再現しようとあれこれ試してみた。結論は、家庭で調理するのはかなり面倒くさい。おまけに後始末も普通のフライパン料理より格段に多い。そして、卵料理のクセに(馬鹿にしているわけではないが)必要な素材、調味料が多すぎる。オリーブオイルとニンニク、赤唐辛子くらいは我慢しよう。トマトソースはトマト缶(カット)で作るとして、一缶使い切るにはこの皿のサイズで3−4回はかかる。トマトソースはみじん切りにした玉ねぎを炒め、トマト缶を開け、同量程度のコンソメの素を水溶きしたものと合わせて煮込む。乾燥バジルとオレガノ(ごく少量)で香りを調整する。隠し味を仕込みたければ、クミンも良い。塩味をアンチョビーでつけるか、ベーコン細切れにするかも重要なポイントだ。それをオーブンに入れて加熱し、ソースに火が通ったくらいで卵2個を割り入れ。半熟になるまで再加熱する。その間にバゲット薄切りをトーストして・・・・。
なんだ、この面倒は。たかが卵2個食べるだけなのにと真剣に悩むレベルだ。どう考えてもサイゼリヤで300円払って食べる方が簡単だ。自家製煉獄の卵作成、実証実験はしていないが、手順を書き出して検証しただけで十分すぎるくらい面倒だ。
そもそも、この手のオーブン料理は庫内にソースが飛び跳ね焦げ付くという、後始末が致命的に面倒臭いものだ。究極の家政婦さんでもいない限り、素人が手を出してはいけない。(・・・と思いますよ)

最近のサイゼリヤで一番コスパが高いのがこの目玉焼きハンバーグとチョリソのセットではないかと思っている。個人的な嗜好であるが、サイゼリヤのガルムソースがとても好きで、ホットソースやドレッシングと同じように、別売りにしてほしい。煉獄の卵を楽しみながら、追加でこのハンバーグ&チョリソーで我がランチは大変充実したものになる。五百円ランチも良いけれど、ちょっと贅沢に好きなものを好きなだけ主義者には、この組み合わせがお薦めであります。1000円札一枚でお釣りが来ます。

街を歩く, 食べ物レポート

究極のカレーパン あります

ちょっといけてるポスターですねえ

最近カレーパンに凝っている。自宅近くの駅は東口と西口に分かれていて、そのどちらにもベーカリーというか手作りパン屋がある。どちらもなかなか凝った商品が多く、あれこれと変わったパンを楽しんでいる。
同じ駅の構内にもパン屋があるが、そこは工場からパンが配送されている。これはどうも食指が動かない。また、西口にある商業ビルには大手ベーカリーチェーン店が、店内焼きたてパンを売っている。ここはたまにお世話になる。
それ以外にも駅から徒歩3分程度の住宅地に、40年近く営業している老舗ベーカリーもあるので、パン屋の大激戦区だ。おいしいパンを手に入れるには恵まれた環境に住んでいる。
その激戦区で新興勢力「ブーランジェリー」を名乗る店が、店頭に「究極のカレーパン」なる挑戦的な看板を上げているのに気がついた。確かに、この店のカレーパンは美味いと思う。好みでもあるし文句をつける気はない。ただ、周りのパン屋はどう思っているのだろう。と多少は気になり、ついでにカレーパン探しをしてみることにた。

2019年の優秀賞

ここの店のパンはどれもおいしい。そして、周りのパン屋と比べて2割ほど高い。高級パン屋というより、最近はやりのブーランジェリーというやつだろう。店内は照明も落とし気味でおしゃれだ。メロンパンが山積みにされていたりしない。小ぶりのパンが少量ずつ、ちまちまと並べられている。フードデザイナーとでも呼ぶべきかもしれない。その中でカレーパンだけが包装紙に包まれている。

袋の中身は丸型の揚げパンで、ちょっと濃いめの色になっていた。揚げたてを売っていたので、少し時間を置いて冷ましてから食べることにした。熱々はおいしいが、味が熱でよくわからなくなるのを見越してだ。

断面を見るとほとんど空洞がない。生地の底部が少し厚くなっているが上面は明らかに薄い。生地といいうより皮に近い薄さだ。カレーの味は濃厚で、具沢山だから、カレーを楽しむ食べ物というべきだろう。
肉まんと小籠包の差みたいなもので、中身の具を楽しむには、パン生地が薄い方が良い。特に、揚げパンにする場合は、揚げ油の吸収量が味に大きく影響するので、薄めの皮を早く揚げるというのが望ましい。おそらくこの辺りが「究極」の要因だと思う。
間違いなく高いレベルのカレーパンの一つだと理解はするのだが、「究極」とはなんなのだという疑問も残る。包装紙に書かれている「カリ、トロ、モチ」の3点セットのことだとしたら、確かに達成できているなあ。ただ、カレーパンの評価定義みたいなものに、この3点セットが当てはまっているのかはよくわからない。
庶民としては高くてうまい芸術的カレーパンを楽しむだけで良いのかもしれない。とりあえず、この究極のカレーパンを標準として、あちこちのカレーパン食べ比べをしてみようと思った次第。

食べ物レポート

低温調理という技術

コース料理が肉づくしだと、少量ずつ出されても、途中でかなりの満腹感になる。コースの最初から最後までの重量を足しあげても、普通のステーキには届かないような気もするが、やはり「肉」に圧倒される年齢になったというのもあるのだろう。
中盤ですでに満腹中枢が危険信号を発していた。それでもタンとフィレの2点盛りは魅力的で・・・。肉自体はシンプルな仕上げで、ハーブとソースでさっぱりと食べる。真ん中にあるのは玉ねぎの付け合わせだが、これもトロッとシャキの中間点にあり、歯触りと甘味を楽しむ良いアクセントだった。
ただ、サーロインの後だけに、「肉」のパンチ力がある。というか、ありすぎる。これが、コースの中で一番「ニクニクしい」一皿だった。
和食ではあまり使われることのないハーブだが、肉料理にはハーブがよく合う。このあたりの「肉肉」しさと味付けのバランスは、やはりプロの技なのだ。感服するしかない。

次の品が、牛肉の部位違いを塩や醤油麹で食べ比べしましょうというご提案だが、実はこの皿を最初の方で出してほしかったなあというのが正直な感想だ。この時点で、お肉はもう十分でございますという弱気モードになっていた。
シンプルな調味料で肉を楽しむのは、舌も腹も元気なコースの最初でお願いしたい。逆に後半であれば濃い味付けの方が、平らげやすいかなあ、などとちょっと個人的な不満だ。
ただ、舌は正直で、この肉はうまいぞ! と伝えてくる。ハムやチャーシューの硬さは全くない。ナイフはいらない柔らかさだが、噛みきれないわけでもない。肉の味がそのまんま出てくると言う感じがする。塩で食べたのが一番好みだったが、ソースとしては醤油麹も良いバランスだった。

締めに出てきたのが、肉もりもりのTKG。肉ビビンパだとのことだが、これはやはり卵かけご飯だよ。それも暴力的な肉パンチが効いたご飯だ。肉にはご飯が一番合うと思い知らされたが、この時点で一膳のご飯を完食するのが危ういほど満腹になっていた。低温調理の肉はジューシーで柔らかく、丼飯にはよく合うのだと再確認した。しかし、これが最後に出るというのは、ほとんど反則技だろう。

最後に、デザートとして、季節柄なのか桜のアイスクリームとほうじ茶が出てきた。もう立ち上がるのも嫌なくらい満腹なはずなのに、冷たいアイスクリームだと入ってしまう。
計算が尽くされた肉コースだった。肉食女子にはピッタリ、肉食男子にはちょっと物足りないかもしれない。ただガツン系肉食男子は焼いて食う焼肉屋に行けば良いのだ。一番ダメなのは非・肉食系高齢男子なのだなと、ちょっと悲しくなった。一皿ずつは少量なので減らしようがない。となると皿数を削ってもらうしかないのだが、それだとバラエティが・・・みたいな困った客になってしまう。もう少し若いときにきたかったなあ、という「おいしい」のに「おしい」お店でありました。

食べ物レポート

焼かない焼肉屋というお店

知人に連れられて西新宿の外れにある会員制レストランに行った。ネットで行き方を調べながら向かったのだが、店が見つからない。看板も出ていない上に、お店が2階にあったせいだが、だから会員制なのかと妙に納得した。
スポーツバーのような大型モニターがあったのが不思議だったが、コース料理の説明というかプレゼンテーションを、これを使ってやっていた。ふーん、時代は変わるもんだなと、これも微妙な気分になった。
この店の売りは、「低温料理の肉料理」だ。ちなみに低温調理はすでに家庭にも入り込んでいて、家庭用調理機器も家電販売店で買える。低温調理とは、基本的にプラスチックバッグに入れて脱気した食材を、低温(60−80度)程度で湯煎する料理法で、真空調理とも呼ばれている。業務用ではスチームコンベクションオーブンを使い、庫内温度を60−80度、湿度100%で食材の水分蒸発を防ぎながら長時間加熱する。狙いは、高温による素材の変性(タンパク質が固まる、脱水して硬くなる)を防ぐことにある。
柔らかく、そして肉汁が残った仕上がりの肉になるのが最大のポイントだろう。

最初に出てきたのは、コンソメスープで中に入っている肉が柔らかい。確かに、コンソメスープは見た目とは全く異なり、作るのにとても手間がかかる。一見、インスタントラーメンのスープのように見えるが、シェフの腕前と時間的コストがかかるので、どこのレストランでもそれなりの高額商品となっている。低温調理の肉を具材にしたコンソメを作るのは、確かに理論的だ。お味は、とてもうまいというしかない。これは自分で試してみたいものだ。

低温調理した内臓肉などを合わせたサラダ。ドレッシングがさっぱり系だったせいか、思いのほか軽めに仕上がっている。良質のハムよりも塩分が少ないから、サラダ向けの肉だと感じる。温玉を混ぜてとろみを増すというのも良いアイデアだ。和風で行くのであれば、ごま油とポン酢、イタリアン的に行くのであればチーズ控えめのバジルソースが合いそうだ。肉は塊で料理して小分けにすれば良いので、好きな肉を選んでアレンジできそうだ。豚ならフィレ、牛ならランプなど脂身少なめの部位が良さそうだ。

中盤の「華」として出てきたのが、和牛のサーロインを使った代物で、野菜と蕗味噌を、この肉で巻き込んで一口で食べろと言われた。言われた通り肉を巻いてみると、小ぶりのいなり寿司くらいになり、一口では難しいのではと思いつつ、無理やり口に放り込んだ。
当然ながら、噛むのすら難しい量なので、窒息しないように注意しながら少しずつ噛み砕くというか噛みちぎっていく。確かに、味噌の味が口の中で肉と絡むのでうまい。肉には火が通っているというより、脂身がとろけている程度なので(低温調理だから当たり前だが)、牛脂がじわっと口いっぱいに広がる感じだった。
レアのステーキのように、「今、俺は肉を食っている」感はしない。あえて言えば、肉肉しい味のクリームが溶けていくとでもいう不思議な感覚だった。
ただ、低温調理をしても、タンパク質の熱変性温度以下で加熱殺菌するのは難しいはずだから、この料理を家庭で再現するのは危険かもしれないなあ、などと妙なプロ意識で考え込んでしまった。やはり、安全安心にはプロの腕前が必要だ。

低温調理の肉尽しは、あまりに美味しいので次回に続く。

街を歩く

アフターコロナ 新宿靖国通りの風景

最近の個人的新宿ランドマークは歌舞伎町・靖国通り沿いにあるこのビルだ。空いている階にどんな店が入るか楽しみで、新宿に行くたびにのぞいている。依然として1−3階は空き家のままで、アフターコロナの元気な店が入るのだろうと期待している。ただ、食べ物屋ではないような気がする。

一見当たり前に見える居酒屋の営業時間表示だが、ちょっと前までここにはランチ営業の案内が貼られていた。夜の商売である居酒屋が、ランチやってるよとい悲痛な叫びをあげていたのだから、実はこの営業時間のお知らせは、俺たちまともな商売に戻りまっせ宣言という意味がある。めでたい宣言だ。
近いうちに応援に行かなければなあ、などとこの看板の前で立ち止まってしまった。それでも休日営業をするのだから、まだまだ商売は苦しいのだろう。

紀伊國屋本店の裏側にあるビルで、テナントがいなくなっていたと思ったビルに新規業態が入った。アフターコロナの仕切り直しということのようだ。ここも一度は覗きにいってみなければと思う。それも昼ではなく夕方に行くべきだろう。色々な料理がスタンド形式で食べられるようだ。同じフロアー内で簡単に梯子もできそうだ。確かに横丁っぽいし、自分的に期待が高い。

ちなみに、2月には右側のように何もなくなっていた看板枠も、今では左側のようにきっちり埋まっております。めでたしめでたし。

食べ物レポート

カレーパン探索日誌 木村屋

普通のカレーパン 普通に美味しい

銀座に行った時にあんぱんを買おうと木村屋に入った。日本一高そうな場所で売っているあんぱんだが、うまさは土地の値段ではなく老舗の技術なのだよ、などと呟きながら行列に並んだのだが。
そこで初めて、アンパン以外にカレーパンも売っていることを知った。ちょっとした衝撃だった。アンパンのバリエーションが多いことは知っていたが、カレーパンまで手を広げているとは・・・。その日はアンパンを買いすぎたので諦めたが、ようやくカレーパンチャレンジを達成した。ただし、銀座の本店ではなく新宿の百貨店に入っているお店での調達だ。
本店では有名シェフコラボ・カレーパンが売っていたが、どうやら本店限定の企画らしく、新宿では売っていない。それは仕方がないとして、まずは「普通の」カレーパンを買い込んだ。食べてみれば、普通に美味しい。カレーパンとしては値段がお高めのような気もするが、そこは「木村屋ブランド」という物だろう。
カレーは甘くもなく辛すぎでもなく、中庸な辛さだった。その辺りも、妙に味が尖っていない老舗ブランドの安心感のような物だろうか。形も小判型でパンの中に大きな空洞もなし。パン生地がやたら厚いということもなし。生地とカレーのバランスが良い。うましだった。

そして、なぜかカレーパンと別のケースに陳列してあった「かつカレーパン」は、まい泉とのコラボだ。パンの中にはカレーと共にカツ(らしき物)が入っていた。
口に入れた食感からすると、確かにトンカツが入っているのはわかる。ただ、カレーとトンカツとパンのバランスが微妙な感じだった。
メンチカツやコロッケを挟んだコッペパンはなかなかうまい物だから、それがカツカレーに変わったと思えば良いのだろうが、おそらくカレーの量が足りないのだと思う。
カツにカレー味のソースをかけたコッペパンであればバランスは取れそうだが、カレーパンとして考えると、具材(カツ)の量とカレーのバランスがカツ寄りになってしまっている。そのせいで、カレーパンではなく、カツパンみたいな感じがしてしまう。
たっぷりとカツを入れるとこのアンバランスになってしまうのだろう。かと言って、カレーに合わせてカツを小さくすれば、カツカレーパンとは言いににくい。美味しいものを作るのは難しい物なのだと、改めて実感した。
サンドイッチ専門店でもカレー味はなかなか見かけない。カレー味は、味が当たり前すぎて調整が難しいのと、カレー味・スパイスの風味が飛びやすく劣化しやすいせいだと思う。だから、老舗パン屋の新カレーパン挑戦は素晴らしいことなのだが、それでも「名品」に至るには、なかなか時間がかかるようだ。

街を歩く

歌舞伎座と弁当屋

いつも歌舞伎座の前を通りかかると、死ぬ前に一度くらいは歌舞伎を見てみたいぞと思っている。が、行動につながったことはない。いまだに切符の手配の仕方すら知らない。ましてや、歌舞伎を見るときのお作法みたいなものなど全く存じ上げない。
何かの拍子で見たテレビ番組で知ったことだが、歌舞伎の台詞回しがよくわからない人向けに「録音された現代語版の同時解説」機械を貸し出してくれるサービスがあるそうだ。明治初期まで歌舞伎は、普通の町民が楽しんでいた「現代芸能」で、古典ではなかったはずだ。つまり明治の後の百年余りで、日本語が劇的に変わってしまったということらしい。
落語の世界でも、古典落語を理解するには、往時の町人暮らしなどの社会背景がわからないと、笑うこともできない。それと似ているなと思う。
あとは幕間の休憩時間に弁当を食べたり、食堂で食事をとるらしい。映画のように一幕終わったら全員入れ替えというシステムではないようだ。(これも行ったことがないのでよくわからない)
歌舞伎を見たこともないくせに歴史的な歌舞伎のあれこれについては、ちょっとお勉強したことがある。歌舞伎の全盛期である江戸時代は、芝居小屋の中が薄暗くて照明も届かないから、あの白粉をベタッと塗ったくまどり化粧をするのだと聞いている。現代の照明がある小屋では、すでに様式美としての白粉・隈取りのようだ。(無駄な知識だ)しかし、浮世絵にもなった有名な役者の名前などは全く知らない。
歴史的な知識だけでいえば、能も歌舞伎も当時の流行演芸であり、今で言えばEXILEとかAKBみたいな物らしい。だから、あと100年も経てば、秋葉原のAKB劇場が古典芸能を保護する場所となっていて、EXILEは3代目どころか、8代目宗家とか裏EXILE流五代目みたいな感じになっているのだろうか。

だから歌舞伎座の向かいに弁当屋を発見した時、ちょっと嬉しくなった。歌舞伎見ながらお弁当を食べるひともいるんだなと。プロ野球を見る時に見かける、ビールタンクを担いだビール売りの若い衆が声を上げながらスタンドを練り歩いている姿を思い出した。江戸時代の歌舞伎小屋の中でも、幕間に弁当売りが歩いていたのではないかと想像してみた。色々な弁当屋の売子がたくさんいて競争して売っている感じだろうか。歌舞伎とプロ野球、どちらもその時代の現代演芸と言って良いから、客席では同じ光景が見られたかもしれないと思った。その当時の弁当売りの若い衆が、弁当屋の主人に成り上がったみたいな、アメリカンドリームならぬ、お江戸ドリームがあったりして。などと空想を巡らせてしまった。
大相撲でも枡席であれば、飲み物と食事がセットされている。日本的な興行では「見る」と「食べる・飲む」がセットされているのが必然なのかもしれない。


とすると、伝統的な歌舞伎を楽しむ小道具として、江戸から続く古典弁当でも売っているのだろうか、などと思って店先を覗いてみた。
なんと想像通りの豪華三段重弁当が売っていて嬉しくなった。お花見にも似合いそうだが、やはりこれは歌舞伎観覧者御用達なのではとも思う。しかし、このコロナな世界で、そもそも歌舞伎座の中でお弁当を食べる場所はあるのだろうか。江戸時代は桟敷の中で食べていたようだが、現代ではどうなのだろう。舞台近くで弁当の匂いがすると、役者もあれこれと考えてしまいそうだ。

一人前の弁当も色々とある。お値段はちょっとお高めのような気もするが、おかずも含め手の込んだ弁当であることは写真からもわかる。その中でも「東京弁当」というものが、値段も名前も含め他の弁当と別格で、どうもこれは日常使い用のような気がする。歌舞伎座周辺のオフィスビルで働いている人のお昼ご飯という感じだ。
歌舞伎を見にきた人だけでは、経営的に安定しないのかなどと勘ぐってみた。それでも、この東京弁当は一度食べてみたい気がする。
今や伝統芸能に成り果てた(?)歌舞伎を、現代演芸として楽しんでいたお江戸の人々に思いを馳せつつ、隅田川沿いのどこかで、満開にさきほこる桜の下で食べるのが令和の風情としては良さそうだ。

街を歩く, 食べ物レポート

立食いそばの老舗と名店 #1

立ち食いそばというのは、日本的ファストフードであり、B級グルメどころかC級グルメだよなと思いつつ、サラリーマン時代は実にあちこちでお世話になった。お気に入りの店の蕎麦であっても、決してうまいとは言えないのだが、何度も何度も行ってしまう妙な魅力がある物だった。
ここ2年ほど、コロナによる社会変動で立ち食い蕎麦はずいぶん閉店してしまったようだ。外出が減ったこともあり、どこかに行ったついでに立ち食い蕎麦を食べるという機会もなくなってしまった。
これでは日本から立ち食い蕎麦屋が消えてしまうという、個人的な危機感もあり、最近は外出先で立ち食い蕎麦屋を見つけると、応援と称して蕎麦を食べることにしている。おやつ代わりに蕎麦を食うというのは、ちょっと健康面を考えると「いけない」行為のような気もするが・・・。

かめやの天ぷらそば 中庸だが好みの味だ

西新宿のJR山手線沿いに広がる「思い出横丁」は、焼き鳥や中華料理や居酒屋が密集している怪しい地帯だが、その中に座る「立ち食い蕎麦」がある。どうやら立ち食い蕎麦愛好家には有名な店らしい。カウンターだけの店だがスタンド式の椅子席なので、立ち食いではない。ただし、カウンターは屋外に露出しているので、背中は風にさらされている。冬は寒いし、夏は暑い。個人的には、夏にこの店を使う気にはならない。裏路地にありジトっとした熱気がこもる場所だ。熱い蕎麦を食べるなど、なんの罰ゲームだと言いたくなる。気温が下がった秋から春にかけての限定利用だ。
蕎麦は結構まめに茹でているので、ほぼ茹でたてに近い。つゆは甘すぎず、辛すぎず「普通」レベルだ。かき揚げも店内調理のようで、ぼてっと厚みがあるタイプだ。カリカリ感はない。ちょっとふやけている感じがするが、立ち食い蕎麦のかき揚げはサクサクさを楽しむというより、蕎麦つゆに漬け込みつゆを吸ってふやけてきたものを楽しむ物だと思っている。だから、ふわふわかき揚げには何の問題mのない。
ああ、これが立ち食い蕎麦の楽しみだな、などと思いながらずるずと蕎麦を啜っていたら、隣に来たお兄ちゃんが「天そば、ネギマシ」なる注文をしていた。
「ネギマシ?」と疑問に思い、横目で隣の注文を見ていたら「ネギが山盛り」になって出てきた。つまり、ラーメン屋のネギラーメンみたいな物で、今のご時世ではネギも追加トッピングになるらしい。
自分の中の立ち食いそば世界では、ネギはカウンターの容器に山盛り入っていて、勝手に好きな量を自分で乗せていくイメージだった。丸亀製麺などもネギとりはセルフスタイルだが、西新宿では追加のネギが有料になると思い知らされた。
まあ、立ち食いそばのスタイルに標準なんかあるはずもないし、どの店も自分のやり方でやっていることに文句はない。ただ、追加トッピングに「ねぎ 〇〇円」と書くことだけはお願いしたい。ちなみに、追加かき揚げは100円で、ネギ増しは30円みたいだった。(未確認)
次はネギ増し増しで頼んでみようかな。