旅をする

窓の外の景色

飛行機に乗るときは通路側の席と決めたのが20代のことだった。単純にトイレに行く時に出やすいというだけの理由だった。当時は畿内テロ事件も頻発していたから、通路側の席は危険度が高いので隠れやすい窓側の席を選ぶようにと業務指示が出ていたが、ほとんど守っていないかった。
あえて窓側の席を取ったのは、モスクワ経由でイタリアに行く便に乗った時で、そのときはシベリアの大地を見てみたいと思ったからだ。実際にシベリア上空に到達して延々と広がる緑の平野だったかジャングルだったかに感動していたのはものの5分程度で、すぐに飽きてしまった。
だから、今回はたまたま翼の前の窓側席に座り外を眺めてみたら、意外と楽しいものだった。新鮮というか眼下に広がる都会のごちゃごちゃが見飽きなかった。

目的地に近づくと、ごちゃごちゃした民家や自動車がさっぱり見当たらない。なんだかじベリアみたいなだ、というのが千歳空港上空での感想だった。確かに、太平洋から千歳へ向かう地域は原生林というか道路すらも少ない場所だからなあ。

その原生林からJR移動40分で、このビルの街にたどりつく。不思議な感覚だが、それももはや当たり前というか。現代人の移動感覚や距離感はすっかり人本来の持つものとは変わっているのだろう。

札幌のシンボルと言える大通公園のテレビ塔も、たまに雲ひとつない空にくっきりと見える時がある。普段は雲の多い札幌の空だが、夏であれば月に何度かは快晴になる。こういう日には、展望台に上がって西日に赤く染まっている街並みを見るのがおすすめなのだと思うのだが、夕日の街を見て感動するのは地元民なのかもしれない。今や、すっかり夜景の名所になった札幌だが、夕焼けも綺麗なのだとこっそりつぶやいておこう。

旅をする

JR 特急と熊よけ

男前のフォルムでいいのか? 列車は女性ではないと思うのだが。

北海道内を走るJR特急は、電化されていない区間もあるためいわゆる気動車がほとんどだ。その中でも、帯広ー札幌を走る「とかち」はサンサムなフェイスをしている。いろいろ経営問題を抱えるJR北海道だが、新幹線開通を含め30年代にはなんとか元気になって欲しいものだ。
北海道の鉄道で、事故が起きるのは人ではなく野生動物がほとんどだ。首都圏の鉄道が人身事故で止まる率よりははるかに低いと思うのだが、それでも事故に遭う熊や鹿にとっては迷惑極まりない話だろう。今の技術で、鉄道脇にモーションセンサーをつけて野生動物が近寄ったら威嚇して事故を防ぐような仕組みを考えられないものだろうか。

シャンシャンという感じの音がする

ちなみに、新幹線札幌乗り入れ工事のため、札幌駅周辺の改修、改装工事が始まり、これまでお世話になっていたいくつかの店が閉店してしまった。特にダイソーとツタヤがなくなったのは痛い。

そのダイソーで、アウトドア用品売り場にあったのが「熊よけの鈴」。もちろん税込110円だった。小ぶりだが、鈴の音はそれなりに大きい。腰にぶら下げたり、リュックにぶら下げたりして、鈴の音で熊が近寄ってこないようにする。山菜取りに行くときなどにも使われるので、それなりに一般的な商品ということなのだろう。しかし、キャンプに行く時にこの鈴をつけていくかというと、ナンダカ微妙な気がする。そもそも、熊よけの鈴をつけなければ危ないところに近寄ってはいけない、というのが本筋ではないだろうか。
まあ、札幌市内の住宅地ですら熊が出現する時代なので、クマとの共存というか、遭遇を避ける用意を人がしなければいけないのは確かだ。熊に人里に出てくるなと文句を言ってもしょうがない。
なんというか、北海道の人はおおらかというか細かいことには気にしないと言うか。この熊よけの鈴がお江戸のダイソーで売っているからちょっと確かめてみたい。

食べ物レポート, 旅をする

札幌の名食事 あれこれ

札幌駅前地区、北海道庁の隣に北海道議会のビルがある。議場と議員室があり、全道から陳情やら要求やら密談やらをしに、「悪い」人たちが集まってくる場所と思い込んでいた。議会ビルが建て変わり、ビル内に「喫煙所」を作るように超党派で喫煙議員が運動して、例の受動喫煙防止法で定められた公共施設の敷地内の禁煙措置に対し、議会は行政とは違う組織だから法の適用外という珍理論を展開した。その悪評で一度見に行ってみなければと記憶に残った曰く付きの建物だ。
その議会ビルの一階という好立地に議会食堂がある。議会関係者以外も自由に入れるので、陳情に来たおっちゃん、おばちゃん、議会見学に来た小学生の団体なども、みんなで中特ご飯を食べている。
そこの蕎麦は盛りが良くて安いと評判らしいので、何度か蕎麦を食べに行った。個人的にはだんだん質が落ちているのではと懸念している。その「議会食堂」の日替りメニューが、イカ天おろしそばだった。味はそこそこ、蕎麦の盛りはたっぷりめ、そこまでは良い。値段がなんともりそばの二百円ましというのには参りましたよ。日替り定食が高額メニューというのは、なんだか反則気味な気がする。
まあ、白を黒というのが商売の北海道議会にある食堂なので、とても高い日替り定食があっても嘘ではないから許される・・・。お暇な方は、道議会食堂おすすめです。人間観察にも向いています。

どうもやら東北、津軽あたりがルールであるらしいニシンの切り込みは、北海道の居酒屋では普通に置いてある。イカの塩辛みたいなものだから自家製にこだわる店はほとんどない。ただ、メーカーは乱立気味なので、店のこだわりで色々と味違いを選んでいるようだ。
お気に入りの居酒屋では、ちょっと甘めの切り込みが出てくる。カットされたニシンも大ぶりなのでか見応えがある。日本酒を熱燗で飲むには最適な一品だと思う。よく、こうした小鉢料理をシェアしたがる人がいるのだが、実はそれが圧倒的に苦手だ。小鉢を頼みたいというのであれば一人一皿にしてほしい。好きなものを好きなだけ原則からすれば、チビチビ食べたい小鉢をシェアすると、チビ・・・で終わってしまう。
今回の同行者はそれがわかっていて、自分の分を追加で注文していた。飲みにいくならこういう人がいいな。

さっっポロで居酒屋に行くと、ノータイムで頼むマイ定番が「ラーメンサラダ」だ。これも冷静に考えると、マヨネーズ系ソースで和えた冷やし中華という定義が正しいような気がする。サラダの一族というには麺麺しすぎている。
これもお店によるアレンジがすごいので、もはや元々のラーメンサラダの定義は何?と言いたくなるくらい並行進化が続いている。この店は日本酒倉本の直営店なので、魚系料理が中心だが、ラーメンサラダは肉系料理に変身した上でボリュームタップリ2人前という形になっていた。もはや、これは締めの麺に近い。胡麻味は嬉しいが、2人前の麺を食べると飽きてくる。
ただ、こういうバリエーションをあれこれ文句を言いながら食べるのが、ラーメンサラダを食す場合のお作法のような気もする。札幌に観光に行った時には、ラーメンもいいけれどラーメンサラダを何店か挑戦して欲しいものだな。

街を歩く

土産物を買いに行って考えた

札幌駅の改札を出たすぐの場所に、大きな北海道産物販売所がある。全道の各地から特産品、名産品、土産物が所狭しと並べられている。そのラインナップが、千歳空港の土産物とはずいぶん違っているので、たまに覗きにいく。
ローカル色が強すぎて、北海道人にしか理解できない食べ物が多いというのが逆に見物するには楽しい。
旭川の菓子屋が作っている、りんご一個がまるまるはいったパイのようなものを買いたいと思っていたのだが、テレビ放送されて売り切れが続いているらしく見当たらなかった。その旭川の新名物らしい洋風濡れクッキーとても言えば良いのだろうか、柔らかいサブレーが人気だそうだ。四個入りという少人数向けの入れ目で販売されていたが、今風のマーケティングだろう。大きい箱に入った義理土産はすっかり人気がない。このお菓子も、箱入りの横に一枚単位で販売されていた。お試し用というか、自分へのご褒美的な自分向け土産という新しいジャンルではないかと勘繰っている。同じ売り場で、菓子のバラ売り、一個売りが目立つので、観光客向けではない売り方の模索のような気がする。

北海道人はだいたい理解できるローカル菓子「べこもち」も今ではバリエーションが増えてようで、くるみ入りは初めて見た。大きさも昔と比べて小さくなっているような気もするが、べこもち好きであればついつい二種とも買いたくなるような仕掛けなのだろうか。
実はこの店の支店が東京有楽町にあり、東京のアンテナショップの中では屈指の高売り上げ店なのだそうだが、品揃えを見ると札幌の店の方が(本店だからなのか)、やたらマニアックというかこだわりの一品が多い。北海道人であっても、お土産に貰ったものを前にして首をかしげる程度にはレア系・不思議系なものも多い。帰る前日に、少し時間を掛けて色々と物色するのが正しいお店の使い方という気がする。

旅をする

大通公園でビヤガーデン

今年は夏のビヤガーデンが再開された大通公園で、5年ぶりの屋外ビールを飲んできた。去年はコロナというよりオリンピックに妨害されたこともあり、今年こそはといき込んでの乗り込んだ待望のビール祭りだ。
大手ビールメーカー各社が出店しているが、ここは地元サッポロビールに敬意を表し。

感染対策のため飲み物食べ物は全てセルフサービスという、あまり飲みすぎるなよというメッセージが厳しい。注文待ちの行列を捌くためのスタッフも多い。

雨に備えた大型テントで、アクリル板に仕切られた客席を風が抜けていく。換気対策は問題なしだが、やはりアクリル板越しの会話はついつい大声になるようで、隣の会話は筒抜けだ。
観光客はまばらで、ほとんど地元民らしい。まあ、観光客目当ての行事ではないし、そもそも屋外ビーやガーデン最大の敵は気温だ。それも暑さではなく、ビールを飲むには涼しすぎるという夜間の気温低下が、例年の問題だった。ところが、ここ数年は東京よりも暑い札幌という酷暑続きなので、「寒さ」に震えることは無くなったようだ。

じわりと値上げしているのは、このご時世だから仕方がないとして、札幌名物的な料理は姿を消している。これも地元民優先になっているからだろうと思う。まあ、大通公園でジンギスカンを熱望する市民というのも想像しにくい。

入り口でビールやつまみの食券を買う時に入場許可時間を書いた紙を渡された。色々と対策がとられている。誰の入れ知恵なのかは知らないが、窮屈な世界になっているのだけは確かだ。

街を歩く

夏のガストをおためし

店頭訴求物が多すぎて何が言いたいかわからない 「痛い」店

ガストがパワハラで揉めているというネット記事を読んで、おやおやという気分になった。ファミレス業界最大手で、まさかの黒判定。パワハラ疑惑ではなく、運営トップを降格処分という真っ黒事案だった。まだまだ外食企業の闇は深いのだなとすっかり滅入ってしまった。

普通にファミリーレストラン?がご当地麺を売る時代

そこで、気を取り直してガストは夏キャンペーンに何をやっているかと、見学に行くことにした。結果はあれまあびっくり的な、何と「ご当地麺」というファミレスとは思えない商品群が・・・。
オペレーションの負荷は厳しいだろうなあ、などとついキッチンスタッフを同情したくなる。ジェットオーブンを通さない、トッピングの多いメニューは管理が難しいだろうと簡単に予測できるからだ。ブラック環境の土壌と言えそうな気がする。

居酒屋的なおつまみ

結局、推し麺を注文するのはやめた。麺好きなので、仕上がりレベルには厳しい評価をしてしまいそうだし、コスパを考えると「誠に残念」系メニューと判定する可能性も高いし。熟慮の末(笑)、すっぱり諦めた。今年のガスト夏キャンは、全く自分の人生とは無縁ということにしよう。
かわりに最近すっかり定着した昼のハッピーアワー向けメニュー、つまり居酒屋のつまみをいくつか頼んでみた。
一品目、冷やし鳥の味噌和えみたいなものは、ほとんど居酒屋のお通しだった。値段は横に置いておくとして、こういうものがファミリーレストランで堂々と出てくるのが時代の変化ということだろう。

居酒屋的おつまみだが 完成度がねえ

スパゲッティーナポリタンにチーズをかけて焼いたものは、つまみとして「あり」かなと思う。その量も軽食というよりもっと軽いのでつまみ級だ。居酒屋の洋風つまみとしては「可能性」が感じられる。
ただ、麺の熱さが足りない気がした。それ以上に、味が薄いのが気になる。これはベースのナポリタンの味が足りていないのか、追加で加えるソースを忘れた調理ミスなのかはわからない。食事として食べるにしても味が薄すぎるようだ。サイゼリヤ「煉獄の卵」の完成度には遠く及ばない。

看板商品だった、山盛りポテトのハーフサイズ ちょっと不思議な感覚がする

ガストといえば、ハンバーグ¥380と山盛りポテトが「売りもの」だったと思うのだが、今やハンバーグはすっかり値上がりしてしまったので基本メニューとは言い難い。昔の看板メニューはもはやコスパが悪い凡庸なメニューになっていて、競合であるサイゼリヤと比べれば優劣は明らかだ。
もう一つの看板メニューであった山盛りポテトはまだ健在だが、どうも今では「山盛り」があまり歓迎されていないようで、ハーフサイズの「山盛りではない」ポテトが売られていた。個人的には、これくらいでちょうど良い量だと思っているが、コスパは明らかに悪くなっている。
外食企業で可変コストと言えば、人件費と原材料費になる。そのどちらも虐めなければならないほどガストは苦境なのだということがわかる。
ただ原材料の行き過ぎた低減は「詐欺的商品」「コスパの悪さ」で客離れにつながる。それはそれで困った問題だが、パワハラはもはや犯罪でコスト削減にはならない。経営者の自覚というか企業人として矜持の問題だと思うのだが。経営の問題が直轄的に店舗現場に現れるという、外食特有の事情ではあるのだが、このブランドは大丈夫だろうかと思ってしまう午後だった。

食べ物レポート

湯島でイタリアン だったはず

高知の知人に連れられて湯島のイタリアンに行くことになった。久しぶりなきちんとしたレストランだと思って喜んでいたが、店の前に行って初めて気がついた。ビストロなんですね。いや、ビストロに文句をつけるつもりはない。ただ、ビストロはイタリアンとはちょっと違うはずで・・・と気になっただけ。料理の仕立てがちょっと変わるのかなと思った程度だ。

高知からの食材にこだわった店だということなので、当然ながら美味しいカツオが登場してくる。香菜をたっぷり盛ったたたき風の仕上げは、実に料理感がある。カツオの身が持つ独特の臭みを香草でマスク・アレンジするのは「あり」だなあと、素直に楽しんだ。高知で食べる焼きたてたたきもうまいが、お江戸のお仕事がなされた鰹もうまい。

店内は落ち着いたムードで居酒屋的に使うのは申し訳ないが、メニューを見るとまさにビストロ、洋風居酒屋なのでこれは二度三度と使いたいお店だった。どのメニューも高知テイストがさりげなくばら撒かれているので、高知県人には人気が高いそうだが、高知県人でなくてもたっぷり楽しめる。ただ、メニューアレンジがワインよりも日本酒と合わせてみたいと思う不思議な魅力があり、そこがなかなか悩ましい。

鰹以外にも、土佐の豚や鳥を使った料理が思っていた以上にうまい。素材の良さもあるのだろうが、やはり料理としてのお仕事が、素材の魅力を引き出している。料理とはかくあるべしというお手本みたいなものだ。
特に、自家製ベーコンは、こっそり独り占めしたくなる。今回はみんなでシェアしながらの試食みたいな感じで色々と注文したので、次回は一人で好きなものを好きなだけ注文作戦を実行するとしよう。

最後におすすめとして出てきた「豆腐」のアレンジ品が絶妙だった。豆腐のジャーキー風干物は、そのまま単品で齧る。沖縄の豆腐窯のような味噌漬けは小さく切り分けクラッカーに載せるとこれが実に絶品だった。
世の中、まだまだすごい食べ物があるのだなと感動してしまう。ちなみに、この手の珍味は店長自ら仕入れてくるそうで、店頭でも販売しているから帰り際に自分へのご褒美として気に入ったものを買って帰ることができる。誠にいたせりつくせりのお店だった。
しかし、湯島で高知以上に高知を楽しむ。良い時代だなあ。

食べ物レポート

夏の流行り物?

仕事の待ち合わせ時間の調整で、久しぶりに喫茶店に入ってみようと思った。平日の午後にも関わらず席待ちになる混雑ぶりだったが、何故この店がそんなに人気があるのかよくわからない。一つだけはっきりしているのは、ファストフード以外で軽食が食べられる場所が世の中ずいぶんと減ったことが原因だと思う。あとは、セルフサービスが嫌いな人が意外と多いということかもしれない。
とりあえずコーヒー推しではない喫茶店なので、コーヒー以外を頼もうと思って入った。

一人だというとカウンターに案内された。たまたま仕事で入力作業をしたいと思っていたから、カウンターで問題はない。ただ、ずらっと並んだカウンター席を見ると、いささかげんなりする。喫茶店というのが憩いの場所ではなく、作業スペースに代わっていることがはっきりするからだ。
あまりに機能的なカウンター席に感動すら覚える。省スペースの極みだ。にも関わらず、注文はタブレットではなく口頭で直接従業員に行う。何だか、それも不思議な体験だ。

コーヒーゼリーは入ったアイスコーヒーにクリームがたっぷり乗ったものを頼んだ。昔で言えばコーヒーフロートの変形盤だろう。今ではすっかり〇〇ラテや〇〇フラペチーノに置き換わってしまった、昭和の遺物みたいな飲み物だ。ただ、現代的アレンジもあり、中身のアイスコーヒーが加糖か無糖を選択できる。無糖を選択するとシロップ添加するかも聞かれる。ご自分で甘さ調整をどうぞ、ということなのだろうが、クリーム山盛りで無糖というのは、なかなか奇妙な注文という気がしたので、あえて、無糖、シロップ付きで頼んでみた。
自分でやる甘さ調整はあまり上手にできないことがわかった。クリームが溶け出したら、どっと甘い飲み物になってしまうからだ。
元祖版を注文ししたので、店頭のポスターに書いてあるような「ティラミスもどき」になるのかはわからないが、夏の飲み物としては好みだなと思った。いや、冬でもうまいかもしれない。意外と、昔懐かしの喫茶店メニューはありがたいものだと再確認した。

街を歩く

街の話題を二つほど

どうも時事ネタがなくなったせいか、メディアが一斉にコロナをネタに騒いでいる。相変わらずの高齢者に対する煽り、アジテーションでしかない。このメディアの悪癖は何とかなららにものかとしみじみ思う。ヨーロッパの地で続く戦争も、政治家の暗殺事件も全て消費し尽くして、ニュースをエンタメ化する。相変わらずの無能を曝け出す。自分で自分の首を絞めているだけだと思うのだが。
などと他人様のことをとやかく言っているだけでは、これまた同じ類型の人間になってしまうので、少し街歩きをして気がついたことを書いてみる。
抗原検査キットが千円を切る価格でワゴンセールというのは、これまたすごい光景だ。2年半近くになる対コロナ戦線で、これが1番の成果ではないか。行政も医療機関も信じられないという、世の人々のニーズ、これに極まるだ。2年前であれば行列ができて、おひとり様二個までみたいな制限販売だったろう。今では、一山いくらの商品で隔世の感がある。無料PCR検査にできる行列を見た時の感覚とはちょっと違うタイプの驚きだった。

この夏一番の外食企業ダメダメ事件といえば、スシローのおとり販売事件で、明らかに法的にアウトと認定された後も、続々と事件が続く異常体質があからさまになった。それをアザワラウかのように見える競合チェーンの広告を見つけてしまった。このポスターは翌日から始まる夏まつりの事前告知だ。何もこの時期にお騒がせしなくてもと最初は思ったが、よくよく見ていると面白みが込み上げてくる。次回予告と真ん中に一枚貼るだけで、かなり強烈な競合批判になっている。
あんたらはおバカさんだから、この一枚の紙を貼る知恵もなかったのね、と言っているようだ。まさに、店長の知恵ではなく本社の誰かが、ニヤリと悪い顔をしながら考え出したボディーブローだろう。競合の足を救うというより、倒れた上から足蹴にする強烈な一打で、こんなこと考え出す知恵ものはもっと競合いじめの悪いことを考えてほしい。応援したくなる。
街歩きをすると見えてくる世相というか、人の知恵というか、それが実に楽しい。メディアの探索力、洞察力はこういう部分を見つけ出すことに使われるはずなのだが。ネット検索で記事ネタを探すだけでは、無理なお仕事だろう。

小売外食業の理論

ワークマンとユニクロ SPAの考察 #1 臨界点

山口県の地方都市から出発した衣料品店のユニクロが、ある程度知名度を持ったあとも出店速度は地味なものだった。郊外に倉庫型の店舗を立てるというのは地方マーケットでの店舗展開としては、定石というか唯一の選択肢だっただろう。
しかし、首都圏のような人口密度の高く交通網が発達した場所では、ロードサイドの倉庫型店舗は当たり外れが大きすぎた。だから、今でも見た目ではっきりわかる元・ユニクロという店舗や建物があちこちにある。
ユニクロ閉店後の新・住人は、郊外展開で浸透力のあるチェーンが多い。元ユニクロの店舗というのはそれなりに大きな建物なので、後釜に入るには強い販売力が必要だ。が、元ユニクロ店舗の共通項目として駐車場と建坪のバランスが悪いことがある。だから外食には向いていない。後釜企業には中古衣料やリサイクル店など陳列スペースが必要な小売業が多いようだ。

高機能低価格路線のワークマンTシャツ

そのユニクロが爆発的な成長を開始したのには二つの起爆剤があった。一つ目は単品大量製造で培ったSPA ーspecialty store retailer of private label apparelーの基礎技術にある。衣料品をデザインだけではなく原材料の調達にまで手を広げて生まれた「高機能」かつ「低価格」なベーシック衣料がユニクロの強みだった。
契約製造工場も含め自社開発することで中間マージンと過大な廃棄ロスを避けるのがSPAの儲けの原理だが、それを実現し規模の経済に結び付けたのがユニクロだった。GMSで食料品より衣料品が儲かることを証明していたヨーカドーやダイエー、イオンといったグループも似たようなことをおこなっていたのだろうが、ユニクロの規模には遠く及ばない。
第二の拡大起爆剤は新規出店立地を郊外からターミナル駅の商業ビルに変更したことだ。そこそこに知名度が上がった以降は、家賃が高くても圧倒的集客力のある商業施設内の方が衣料品を売るには適していた。郊外型店舗の成功率の低さもあるが、山口の地方都市出身ではなかなか理解できなかった首都圏などの大都市商圏の威力、購買力を遅まきながら悟ったあたりから急速に全国に出店拡大して良いった。
それに伴い、デザインに重点を置いたファッション性の高い商品を開発したり、高機能繊維を使った機能性インナーなどの新カテゴリーも開発した。
ただ、やはりユニクロの戦闘力最大の特徴といえば、「誰も真似のできない高機能と低価格」の調和だった。当然中間マージンも少ないので、低価格でも粗利は大きい。1500円で売ったフリースの原価を聞いたら、腰が抜けそうになる程驚いた。ユニクロの利益率の高さに納得するしかない。
出店数がある規模になり(だいたい全国で300店程度か)、ブランド認知が定着したあたりで、おそらく生産規模も理想的な段階に辿り着く。一つ一つの工場が稼働率の限界に近づ気、輸送のロットも効率化される。成長爆発の臨界点が、原料、生産、輸送、販売拠点、消費者需要の順に達成されていった。
残る経営資源は「人」だけなのだが、ここはどうやら失敗したらしい。天才的なカリスマ経営者の下では、後継者が優秀な経営者であったとしても、二流扱い、ゴミ扱いされてしまうようだ。この辺りは、世界企業であるアップルやマイクロソフトの創業者とその後継のようなバトンタッチがうまく入っていない。それでも、日本を代表する高収益企業が続いていることに間違いはなく、まだ当面は高収益企業として成長を続けるだろう。
繰り返すが、ユニクロに代表されるSPAの特質とは「高機能」と「低価格」の実現にある。ところが、この高機能を維持するのが難しい。結局、ユニクロも高機能製品の開発が止まり、ブランドに寄りかかった値上げがほぼ唯一の成長戦略になってしまった。
その先は「国内市場飽和」を海外進出による再成長に求めるという、これはこれでグローバルな戦略を選ぶことになる。米国発SPAが通った道と同じだ。ただ、ユニクロのユニークさは「安さ」ではなく「原料繊維の優位性」を持っていたことで、これが米国SPAとの差別化要因となるはずだった。アベノミクスの円安基調も海外展開には優位だったはずだ。
しかし、その間に「第二のユニクロ」が国内マーケットでじわりと広がっていた。高機能だけど安いというユニクロに対して、安いけど高機能という微妙な変化をしたアプローチを取ったのがワークマン、作業服の専門店だった。

色違いもあるが、色使いについてはもう少しお勉強が必要らしい

ワークマンの出身は北関東、群馬になる。首都圏に近接しながら、限りなく地方都市の集合体である北関東車社会の覇者、ベイシアグループのメンバー企業だ。山口と群馬の距離の差、衣料品専門店と低価格志向流通業というルーツの差、などユニクロとワークマンのビジネスを同列に見るのは難しいかもしれない。しかし、SPAという勝ち組のルールを、どちらの企業も理解しているだけに、後発のワークマンがカジュアル衣料でユニクロを凌駕する可能性があるのではと思うのだ。
少なくともイオンやIYといった同系統の流通業グループでは、ベイシア・ワークマンには敵わないというか対抗できないと認識している。
イオン・IYの問題点については別の機会に論じるが、簡単にいうとイオンはユニクロの低価格コピーでしかなくユニクロの後を追い続けるしかない。IYは絶対性能差がないにも関わらず何故か高価格に振りたがるという特異な企業DNAが抜けないからだ。どちらもベイシア・ワークマングループをマネする「力量」や「知的資産」が足りないと判断している。