食べ物レポート

いつものご近所中華で思うこと

初めて食べたソース焼きそば

いつもの満州で昼飯を食べようと出かけたのだが、今月のおすすめメニューがなぜか「冬のラーメン」特集になっていて、どうにも食指が動かない。そこで、今まで食べたことのないメニューに挑戦しようと思い、メニューを端からずっと眺めてみた。
まじまじと何度も見返してみたが、食べたことのないメニューはたったひとつしかない。ソース焼きそばだった。
頼んでみたものの、ソース焼きそばを食堂で頼むのはいかがなものかという疑念というか不安が残る。ソース焼きそばとは、お好み焼きやで頼むもの。あるいは、縁日で頼むものという刷り込みがあるせいだ。家でも作れるソース焼きそばだけに、中華料理屋の正規メニューとしてはお手軽すぎないかという気もする。あれこれかんがえていたが、食べた結論としていうと、これは酒のつまみだな、というものだった。
やはり、食事としての麺料理というには頼りない。味付けも、好みに差が出そうだ。個人的にはソースじゃぶじゃぶかけて食べたいので、ソース瓶を一緒に出してほしい。
ただ、この横にレモンサワーでも置いてあれば、絶好のつまみになりそうな気がする。冷めても、つまみとして食べる分には十分満足できる。蕎麦屋でもりそばをちびちびつまみながら日本酒を飲むという感覚に近いかもしれない。紅しょうが別添というのも嬉しい。おまけに付いてくる中華スープが最高だ。満州のベスト商品の一つは、この定食についてくる中華スープで、できればおかわりしたい。この店のメニュー絞り込みは、もはやファストフードというべきだろうか。酢豚の導入をお願いします、と言いたい。

㐂伝ラーメンにメンマ追加

幸楽苑に何ヶ月ぶりかで行った。あれこれ、特設メニューは出ているのだが、どれもなんだか気がのらない。結局、いつものラーメンになってしまった。
この店に来ると恒例で思うことだが、ラーメンというフォーマットを横に広げるのか、縦に広げるのか、このブランドは迷走している。横に広げるとは、スープ、麺、トッピングを追加してラーメン・麺メニューを増やすことで、一時期の日高屋がやっていたことだ。ローカルで有名な麺料理を、全国チェーンが取り込むというのは戦略としてありだろう。
このブランドの地盤である東北に限っても、青森の煮干しラーメン、秋田の濃厚豚骨、山形の辛味噌ラーメンなどなど取り込める要素は多いはずなのだが。西日本に目を広げれば、関東圏には未到達な独自のラーメン文化がある。
縦に伸ばすというのは、ライスメニューの拡充や唐揚げ、餃子などサイド系肉料理を増やして「中華料理屋」化することだ。日高屋はこの路線を走って成功したが、居酒屋化しすぎてコロナで厳しい打撃を受けた。
ファミレス業界では中華コンセプトが難関ビジネスモデルになっているが、肝はチャーハンと餃子とラーメンなので、そのベースをこのブランドは持っているのだから、伸び代はあると思うのだが。課題は商品の磨き上げと省人化をどう並行して進めるかだろう。今は、省人化だけにしか目がいってないような気がする。
少なくとも、自分の好みである豚骨醤油ラーメンはもう少し磨き上げてほしいなあ。メンマとチャーシューも、行列のできるラーメン店に通って研究してほしい。せめて、追加トッピングで良いから極太メンマ導入してくれないかなあ。

といつものご近所中華、定点観測でした。

食べ物レポート

札幌シリーズ冬の札幌で食べた鮨

12月初旬の札幌はこんな感じで雪がなかった。東京に戻ってきた後にドカンと雪が降り、今や路面は完全に真っ白で凍結しているらしい。毎年、クリスマス直前には街が雪で埋もれる。ここ何年間は、空港閉鎖されるほどの大雪も何度かあったので、今年は雪が少なめだと良いのになとは思う。
寒いのは平気だが雪は嫌だ、と最近よく思うようになってきた。北海道で生まれ育った記憶が薄れてしまったせいだろう。
もっとも、東京の大雪ほど最悪なものはない。札幌の雪の100倍きらいだ。東京に大雪が降ると3-4日は外出しないことにしている。除雪のノウハウが足りないので、凍結路面を含め、実に危険な状況になるからだ。

そんな雪のない札幌で、これまた恒例の鮨を食べに行った。都心部にはあるがちょっと町はずれという場所にある。一時期は外国人観光客に占拠されてしまって、1時間まちが当たり前だったが、最近はほぼ日本人客のみで、待ち時間もすっかり短くなった。
まず最初に鮭のユッケを頼む。正しくいうと「ユッケ風」なのだろう。甘く仕立てた濃厚醤油たれに絡めた鮭に、卵の黄身をグチャグチャに混ぜ、ねっとりとした食感を味わう。これを発明した職人さんは偉い、といつも思う。
料理は創意工夫とはいえ8割はどこかに存在する旨いもののアレンジだ。コピーやアレンジはどんどんやってほしい。失敗した作品は誰も注文しなくなるから自然淘汰される。勝ち残ったものが、次の世代の模範になる。そのためにも、職人さんはあちこちで食べ歩きしてほしいものだ。

蝦夷アワビは本当に美味い

年末なのでと自分に言い訳をして、まず「アワビ」を頼む。一度でいいからアワビ10貫という注文をしてみたいものだ、と思っている。ただ、実際に目の前にアワビが10個並んだら、意外と食べきれないのかもしれないと恐れてもいて……………注文する勇気が湧いてこない。
食べ放題の鮨屋で知人がウニ20貫という注文をした時のことを思い出した。目の前に出てきたウニ20貫は、相当な迫力だったが、結局最後の6貫は知人の食べ残しを、こちらが処理することになった。ウニ6貫でも、当分ウニは食べなくて良いかなと思う量だった。なにごとも食べ過ぎは良くないようだ。ただ、アワビも4貫くらいならいけそうな気がする

最近、イカの値上がりのせいですっかり見かけなくなったゲソが二番目の注文だった。この海苔で巻いたゲソというのは、本当に何か鮨とは別物の世界にいるようだ。店によっては甘だれを塗ってくれる。今回は、醤油なしでそのまま食べた。うましだ。

最後は、マイカとしめ鯖だ。これもいつもの定番で、マイカは漁獲量が激減したため今や高いネタのレギュラー選手になってしまった。イカそうめんなどステーキ並みの値段となり、おいそれと楽しめるものでは無くなってしまったのが残念だ。
この店のしめ鯖は自家製で、締め具合が絶妙なものだ。しめ鯖は酢で締めるのではなく塩で締める。その技が徹底されているのがすごいところだ。札幌では、自家製しめ鯖を出すところが主流なので、全国チェーンの回転寿司屋に行くとその落差がよくわかるし、激しすぎる。札幌で百円回転寿司は、魚を食べに行くところではなく、肉乗せ軍艦を食べる場所だという話を聞いた。確かに、札幌の鮨屋で炙りカルビ軍艦は出てこないなあ。
などと馬鹿なことを考えながら、今年の冬のルーティンを終了した。東京で鮨を食おうという気にならないのは、このの好き勝手な鮨食い習慣があるせいだろうか。

食べ物レポート

札幌シリーズ ジビエと野菜

コープ札幌は時々びっくりするような企画をしている。コープというと真面目でおとなしいイメージがあるが、札幌と仙台の生協は何やらローカル・スーパーマーケットよりはるかに進化しているような気がすることが度々だ。戦闘力が高いというべきか。
この「ぶこつ野菜」というのも、なかなかチャレンジ精神があふれている。POPが手作り感(多分パソコンで担当者が作った)がまんまんだ。

ぶこつ野菜とは、あまり見た目にこだわらず、中身で勝負ということらしい。根菜中心に日持ちのする野菜が並んでいる。これであれば少人数家庭でも何日間に分けて使うことができるだろう。農作物は収穫の手間より、選別の手間がはるかにかかる。その手間にかかる人件費を抑えるには、大小や傷の有無、見た目などで選別しないのが一番だ。
野菜を箱買いしても思ったほど安くならないのは、箱の中身も選別されているせいだ。そうした流通業の掟をどう打破していけるか。昭和生まれの高齢者は、見た目や大きさにこだわる習慣をつけているので(つけられたので)、この「綺麗な品物大好き病」の呪縛から逃れられない。おそらく平成後半生まれの世代が消費の中心になる時期に、転換点が生まれるような気がする。この「ぶこつ野菜」が、その時代の先駆けかもしれない。ということで、ぶこつ野菜をいくつか買ってきて、料理をすることにした。

最初は「野菜中心」のすき焼きにしようと思った。北海道ですき焼きといえば、ほぼ豚肉になる。牛肉ですき焼きという家庭は、ルーツが間違いなく道外、それも西日本に近いところだろう。札幌圏であれば関東・関西からの転勤族は牛肉のすき焼き、地元民は豚肉ですき焼き。だから、すき焼きの会話になると、いきなり紛糾する。おまけに、牛肉すき焼きには流派があり、関東風と関西風の調理法の差が、揉め事を大きくする。(笑)
少なくとも、これから結婚しようとする北海道のカップルは、すき焼きと雑煮とジンギスカンのお作法を確認しておいた方が良い。料理の恨みは一生祟る可能性もある。ルーツが全国の流れ者で構成される北海道特有の問題だろう。
そもそも、人口200万人近い大都市札幌でも、牛肉のすき焼き屋を探すのは難しい。今でも、存在を確認できない。平成初期に最後のすき焼き店が無くなったような記憶がある。
牛丼屋ですら人口と比較すると明らかに少ない。日本最大の外食企業、マクドナルドですら人口比で言えば東京の半分以下の密度なので店舗網がスカスカだと感じる。北海道は、それくらい「牛肉」の人気がない地域だ。
話を戻す。すき焼きも豚肉が主流になるが、すき焼きではなく「肉鍋」と呼ぶこともある。個人的には、こちらの方がしっくりくる。調理法は「焼き」ではなく「煮る」鍋で、野菜が多めであることが正統すき焼き?とは違う。
が、今回は貰い物の鹿肉があったので、鹿肉すき焼きにしようと思った。これはちょっとレアものだ。鹿肉は、当然ながら野生なので季節によって味が違う。冬手前であれば、餌の少ない冬に備えて丸々と太っているはずで、脂が乗っているらしい。春先になると、冬越えをして痩せている、つまり肉も脂身が少なくなる。発情期の肉は匂いが強い。だから、時期によって食べ方は変えた方が良いと聞いた。もらった鹿肉を切っているうちに、意外と脂身が少ないことに気が付き、食べ方を変えることにした。これは焼き肉にすべきだ。焼き肉にすれば、なにやらワイルド感もある。
いそいそとホットプレートを出してきて焼き肉を始めたが、意外とクセのある肉だった。そこで、焼肉のタレをジンギスカンのタレに変えた。ということは、これは焼き肉というより鹿肉ジンギスカンではないか。だいぶすき焼きから遠ざかった。
羊の肉より煙が出ないのは脂身の違いらしい。ジンギスカンの焼ける匂いは独特で、羊を食べているなという気がするが、鹿肉は煙に特徴的な匂いは感じなかった。少しもっさりとした食感がするにくで、豚肉よりも鉄分の味を感じる。
これが冬の北海道名物になるとは思えないが、冬にしか食べることのできない食べ物であることに間違いない。自宅でジビエ料理とは、なんとも不思議な気分がするが。ぶこつ野菜とは相性が良いので、冬の焼き肉は鹿に限ると言いてみたいが、鹿肉はどこでも手に入るわけでもないからなあ。普通に肉屋では売っていないし………
やはり猟師を友達にするしかない、という途方もない結論でした。

街を歩く

札幌シリーズ 看板編

札幌で雪降る中を散歩した

街歩きをしながら、面白い看板を探すのはなかなか楽しい。健康的な趣味ではないかと自画自賛している。わざわざ雨の日に散歩に行くほどのもの好きではないが、寒い日であればひょいひょい出かける。例外は暑い日で、最近の自宅周りでは夏の暑さが命の危険をもたらすので、絶対にNGだけれど。
今回は看板探しの散歩、札幌編。昔住んでいた懐かしの円山界隈を歩いてみた。途中で雪が降り始めたが、そこは北国仕様のキャップで対応する。街行く人のほとんどは、キャップや毛糸の帽子で雪を凌ぐが、たまに傘をさしている人を見かけた。傘をさして歩く姿は地元民ではなく、おそらく関東圏以西からきた札幌転勤族だろう。札幌の雪は払えば落ちるサラサラ状態が多いので、雪の日に傘をさすことは稀だ。傘が役に立つのは、みぞれ混じりの雨の時くらいだろう。
そんなことを考えながら、とあるバス停脇の電信柱に張り出されていた「注意書き」が目についた。何やら今風な文章で、「喫煙者へ」という強い呼びかけから始まる。よほどバス停でタバコをポイ捨てる人が多いのだろう。路上清掃をする町内会の人たちの怒りが現れている。
そういえば、街中でタバコの吸い殻を見かけなくなった。路上喫煙禁止条例が出始めたのは、15年くらい前だったと記憶しているが、その成果がこの張り紙に表れているということだ。
すでに喫煙は社会悪に近い扱いになった。コロナの始まり時期に室内禁煙令が出されたが、それに反対する意見をねじ伏せるほど、コロナの外出禁止圧力が強かったせいだ。オリンピックで国際的に体裁を整えるはずだった室内喫煙禁止令が、「官庁」の予想以上に市民の意識が厳しくなり、禁煙が徹底された。
タバコ大好き国会議員の思惑を超えて、令和の喫煙者狩りにまで拡大した。地方自治体や地方議会では、役職者や議員の不法喫煙の実態が暴かれ、断罪される時代だ。「官」が「民」を抑えきれず、暴走的喫煙者狩りに辟易しているのがわかる。ざまあ……と言ってやりたい。
それにしても国会内の喫煙場所は減ったのだろうか。元・野党党首が法令に違反して、執務室で喫煙していた事件も象徴的だったが。それでも禁煙しないんだから、野党のお里が知れる。(今では禁煙したか?)
などなど、色々なことを思い出してしまった「喫煙者」へという警告状だった。すごいな円山の町内会。ちなみに、この辺りは高級マンションが立ち並ぶ上級市民のエリアだからかもしれない。ポイ捨ては不法行為だから、やめましょう。

この焼肉屋は、ぜひ一度行ってみたい。味付け肉で冷凍らしいが、そこに文句はない。それよりも、ほぼ五百円という値段だ。おそらく、六百円とか千円とかの高級冷凍焼き肉もあるのだろう。それを食べてみたい。北海道で肉と言えば豚と鳥、焼き肉といえばジンギスカンが代名詞だから、黒毛和牛とか◯◯地鶏などのブランド肉ではないだろう。いやいや、楽しみだ。

難読文字の発音記号のようなものは Meat と Meet の語呂合わせかなあ

壁の上に描かれた不思議な英語も、よくみて考えるとニヤリとしてしまう。中学程度の英語だから、一応は誰でも理解できるレベルだとは思うが、クイズ番組に出てきそうな文章だ。こういう文章を書けるコピーライターに会ってみたい。できれば一緒に仕事をしてみたい。

完全なオヤジギャグ 地下街とチカ買い

円山から地下鉄で街中に戻ってきて、ふと見上げたとことにあった「駄洒落看板」。これは参りました。座布団全部取ってしまえと言いたい、正調昭和オヤジギャクだな。こういうコピーライターとは、あまりご一緒に仕事したくない気がする(笑)
まあ、昭和レトロブームらしいので、ドリフターズ的ネタとか、ひょうきん族的ギャグが受けるのかもしれないが。ケーブルテレビなどで昔のギャグ番組を見て、当時はなぜこんなことがあれほど面白いと思っていたのか不思議になる。
ギャグの面白みを感じる要素は時代と共に変化するということだろうか。しかし、チャップリンのモノクロ映画は今見ても面白い。時代に消費されるギャグと不変的なギャグの差はあるものだな。

確か、これはすでに停止されているのではなかったか。デジタル大臣が何か言っているのを聞いたような気もする。コロナで起きた壮大な無駄遣いの象徴として、将来の教科書に乗るだろうか。少なくともどこかの大学で、デジタルコンテンツ経済学みたいな講座を開いて、「役に立った」「無駄遣いだった」アプリやコンテンツの評価をしてほしいものだ。このアプリを使って、オリンピック開催したかったのが見え見えだ。そしてオリンピックが終わればポイ捨てする始末だし………
少なくとも東京オリンピックの「費用対効果」を考えると、間違いなくマイナスだろう。予算は超過、インバウンドによる経済効果なし、とどめは大手広告代理店による汚職と、すでに解散してしまった組織委員会の無責任放置状態。オリンピック誘致をした総理大臣も強行した総理大臣も、その功績を讃えられることもなく退場になった。その象徴みたいなものが、このアプリだろう。
街の中に落ちている、ささやかなブラックジョークを探し出すのは、健康のために宜しいかと。

街を歩く

鳥唐揚げの競合 どっちが旨い

クリスマスなので、鳥な話題にしてみた

鳥唐揚げの会社で働いていた。ずいぶん長い間働いてしまったものだと思う。その唐揚げ屋の一年最大の稼ぎ時がクリスマスイブで、その次がクリスマスの日になる。日本全国で1000以上の店があるが、どの店の店長もこの2日間だけはハイテンションになる。そして、26日には大多数の店長が燃え尽きている。
ただ、その狂騒の日にもかかわらず、どうにも盛り上がりにかける場所もある。売り上げは低いということではなく、ぶっちぎりで強いはずの自店より人気のある店が周辺に存在することが許せない、みたいな気分だろう。
一つは九州大分県にある唐揚げシティーで、ここは一度出店したが、しばらくして撤退した。再度チャレンジして出店したが、今はどうなっているだろう。なかなか町中に広がる地元唐揚げ屋と戦争をするのは大変なようだ。
そして、全国でもダントツ、屈指の売上を誇る北海道地域でも、苦戦する?街が小樽だ。この地元人気店では普通の日でもテイクアウトで買ってかえる客が多い。いわゆる「おみやげ」需要だ。今では専用待ち合わせスペースまで設置されている。
そんな店とガチンコ勝負となると、全国チェーンであってもなかなか大変な競争地域だ。おまけに、小樽市周辺だけで言えば、店舗数で完全に負ける。唐揚げ屋チェーンでトップ売り上げを誇る北海道、それも札幌商圏にもかかわらず、地域ドミナント形成で負けているのは、全国を見渡しても小樽だけではないか。大分県中津は地元ブランドが綺羅星の如く多数存在し、それぞれが贔屓客を囲い込み対決する群雄割拠の街だ。その中の弱小勢力みたいな扱いだから、小樽とは状況がちょっと違う。

クリスマスは、スペシャルボックスというものがあるらしい。これはまさに某ブランドがテレビコマーシャルを使って宣伝しているものと、似たようなものだ。ただ、唐揚げの絶対量ではこちらの方が多い。単品販売でもガチンコ勝負であり、セットでも露骨にガチンコな組み合わせになっている。おまけに単品は当日でも予約できるので、全国ブランド唐揚げより戦闘力が高いくらいだ。クリスマスには、小樽中のお父さんがお使いに行かされるのだろうなあ。
実は24日にこの店を視察に行きたいとずっと思っていたが、一度も行っていない。毎年のように、今年こそはみにいくぞと思っていたが、すっかり気が変わってしまった。
今更、「凄さ」がわかってもなあという気分になってしまったからだ。よく考えれば、もうクリスマスに縁がない(個人的にも仕事的にも)のも確かで、やはり一人で静かに過ごすのが聖夜の正しい在り方かもしれない。
そろそろ、真面目に人生を見直してみる時期らしい。


街を歩く

札幌シリーズ 夜の光景とザンギ

クリスマスイブなので、綺麗な写真をと思い夜景にしてみた。

駅前通り 薄野方面のイルミネーションが絶好ビューポイント

札幌駅前通は冬になるとライトアップされる。札幌駅から薄野までおおよそ1km弱が鮮やかになるのだが、その距離を歩くほどの元気はない。夏なら問題なく歩いてしまうが、冬は凍える。雪が降れば滑りやすくなる危険な夜道だ。それでも、雪がなければ半分くらいは歩いても良いかなという気になる。今では、歩道の大半がロードヒーティングされ積雪があるのは横断歩道だけだ。ただ、そこが危ない。
冬にはほとんど雪が降らない地に移住してずいぶん経った。ようやく雪のない正月になれたと思ったら、すっかり雪が嫌いになってしまった。それでも雪さえなければ、冬は嫌いではない。

その札幌の冬だが、夏より暑い。最近の猛暑のせいで、流石に夏より暑いとは言い難くなってはきたが、それでも冬の室内気温は27度を超える。政府の電力使用制限などどこの国の話だと言いたくなるほど暑い。これでも、室内設定温度は従来より低めとのことなのだが。
北海道人にとって寒さとは凍死につながるデッドワードだから、冬の室内の寒さは「貧乏」を意味する。あるいは、北海道人としての常識がない「異常」さにつながる。
すっかり関東慣れした体には、この温度こそが「異常」と感じるようになってしまったが、郷に入れば郷に従えで、冬の外出には何枚も重ね着をして室温に合わせた体温調整を図る。だから、冬の居酒屋では、脱いだ服の山が座席を一つ占拠する。コートと、ジャケット、セーター、マフラーなどなどが積み上がるのだ。
だから、当然のように冬のビールは美味い。キンキンに冷えた黒ビールを飲むと、夏よりうまいような気がする。室内の温度が高くなり相対的に湿度が低いせいで、喉はカラカラになる。統計を見てもビ北海道でールの消費量が多いのは1ー2月だ。
ちなみに、7月終わりに開かれる大通公園でのビヤガーデンは、ほぼ7割の確率で低い気温に悩まされ震えながらビールを飲むことになる。夏の屋外ビールはやせ我慢大会になる可能性が高い。だが、冬のビールは、決して震えることはない。だからうまい。断言できる。
もしビールを飲むには寒すぎるような店があれば、その店は確実に潰れる。酒や肴が美味いかどうかの前に、「温かい部屋」は居酒屋を含め北海道における飲食店の絶対条件だからだ。
ビールがうまい季節はアイスクリームも売れる。北海道のアイスクリームのピークは2月と8月になる。ただし、夏に食べるかき氷系のさっぱり味は求められていない。コッテリ濃厚味が冬のアイスの定番だろう。

The ザンギ だったなあ

そして、冬のビールに合うものといえば、これしかない。ザンギだ。ザンギと鳥唐揚げは一体どこが違うのかという問いに、正確に答えられる北海道人はいないと思う。醤油味とニンニク生姜で香り付けしたカリカリ系鳥唐揚げ、というのが自分の持つザンギの定義だが、これをいうと必ずどこからか反論が飛んでくる。
いわく、ザンギ発祥の地〇〇店で食べたのは………から始まり、うちの流儀は〇〇でという我が家が本家主義だったり、俺の育った〇〇地方では………という地方モンロー主義であったりするが、反対意見が10人いれば10種類でてくる始末だ。飲んだ時の話題としては最悪に近い。宗教と政治とザンギの話は飲み屋向きではない。
特に、ザンギのルーツを含め、ザンギの定義にまつわる話は、北海道酒飲み界ではタブーだと思う。だから、百花繚乱的ザンギの正統性には降れずに、この店のザンギは旨い、と断言することにしている。もしまずいと思ったら、その店では二度と注文しないことだ。酒の肴にはザンギ以外にも色々ある。紛争のネタをわざわざ求めてはいけない。
まあ、元・唐揚げ屋としては色々と突っ込みたいこともたまにはあるが、それも黙殺する。鳥唐揚げを単純に楽しむのが、正しい冬の札幌の過ごし方だ。
この店の唐揚げはうまかった。その記憶さえあれば、また食べに行くことにする。札幌駅地下でふらりと入ったビール屋のザンギは、確かにもう一度来る気にさせる美味さだった。

旅をする

札幌シリーズ 大通り公園周辺

テレビ塔前で開催されている冬の市

12月の前半は例年雪が少ないことが多い。年によってはクリスマス直前まで路面が出ていることもある。今年もそんな冬なのかなと思った。雪が少ないと除雪の手間も省けるので、地元民にとっては快適な冬になる。去年が爆発的な降雪で腰を痛めるほど除雪に追われたようだから、今年は雪の少ない年になればいいな、と思っている札幌市民は多いようだ。
そして、コロナの間は「ネット開催」になっていた冬のイベントがようやく再開されていた。この「市」では、イヤープレートならぬイヤーマグが販売されていて、例年楽しみにしていた。再開の今年はなんと特別記念なのかデザインが二種という大盤振る舞い?だった。おまけに(残念なことだが)、マグの値段も値上がりしていた。それにしても、とにかく再開はめでたい。

寒い大通り公園を散歩した後、徒歩2分(北寄り)のビル地下にある旭川ラーメンの店に行った。これも半年ぶりくらいになるので、お店が開いているかちょっと心配だったが、予想に反して店内は大盛況。それも、観光客らしき姿もなく、地元民に愛される普通の人気ラーメン店として繁盛していた。これもまた、めでたしめでたし。一時期は外国人観光客も多く、店内はインターナショナルな風景になっていたが、いまはビジネス街の人気ラーメン店だった。

今回はちょっと浮気して、定番の塩ラーメンではなく醤油ラーメンにした。塩ラーメンだと、丼の真ん中に紅一点、小梅の赤が美しいのだが、醤油ラーメンでは小梅がない。その分、チャーシューが目立つ。この店の醤油ラーメンの売りポイントは、やはりチャーシュー(二種)だろう。わしわしと食べるガッツリ系ラーメンだが、旭川ラーメンは濃いめの味付けなので、ビールによく合う。
町中華のラーメンでビールを飲むのは、ちょっと頼りない感じがするが、ここではラーメンと冷たいビールがベストマッチだ、と考えながらビールではなく水を飲んでいた。

その後で、大通公園を挟んで南側にある古い居酒屋に行った。やはり寒さを感じる徒歩5分だったので、まずは湯豆腐という注文になった。ラーメンで腹が膨れているというのもあるが、前回食べた湯豆腐のシンプルさが冬の寒さによく合う気がした。ちなみに店内はコート、ジャケットをぬぎたくなる「冬の南国」的室温で、湯豆腐を食べているうちにうっすら汗が出る。これが、札幌的冬の贅沢だろう。
湯豆腐は典型的な一人鍋だと思うが、これはシェアして食べてはいけないと思う。昆布出汁が出た「お湯」を最後に付けつゆで割って飲むために、一人で独占したくなる。湯豆腐を食べながら次の注文をすると、食べ終わる頃にちょうどのタイミングで出てくる。その辺りの呼吸が、居酒屋飲みの楽しみでもあるかな。

メニューは居酒屋定番中心にお手ごろ価格が並ぶ。札幌でも生き残りの少なくなった戦前からの老舗だが、東京によくある高級化した料亭気取りの居酒屋のような敷居の高さは全くない。だから開店直後から、オヤジ族の一人飲みが多いのだが、最近では女性の一人飲みも増えているようだ。
それに絡みつくような変な奴もいないので、居酒屋の品格とは客筋を含めたものだろう。ちなみに隠れ名物?と思っているのは串カツ。最近、大阪系串揚げの店以外で、串カツを食べられる店が少なくなった。昔ながらの串カツは貴重品だ。
串カツは2本出てくる。ちなみに、串カツも一人で食べる独食メニューだと思っている。シェアして1本だけ食べると、2本目が欲しくなるからだ。そこを我慢するくらいなら、二人前頼むか、一人で飲んでいる方が良い。

ビールを飲みにきたはずが、普通に熱燗を頼んでしまった。ただ、一人飲みで熱燗を頼むと、銚子(ガラス瓶?)の数で飲んだ量がわかる。お銚子が酒量メーターになる優れものだ。ただ、途中で銚子を下げられてしまうと一気に迷走してしまうが。
冬の大通公園周辺で、フラフラ彷徨っていると寒と暖の繰り返しになるので、体にはあまりよくなさそうな気もするが、運動不足になりがちな冬の散歩と割り切って元気に歩くのがよろしい……………と思いますよ。

街を歩く, 食べ物レポート, 旅をする

成田で博多ラーメン

LCCを使って旅をしようとすると、成田空港に行くことになる。羽田空港に行くのと比べ、地上の移動時間は1時間ほど増える。ただ、飛行機に乗った後の移動時間は変わらないので、長距離旅行であれば経済性は良くなる。手荷物の重量制限があるので、結果的にスリムな荷物選びを迫られる。軽装な旅になるのもメリットだ。
その成田空港LCCターミナルに、しばらくぶりに行くと改装完了していた。フードコートもお店が増えていて、一時期の閑散とした雰囲気もどこにいったやら。ほぼ全席満席の盛況ぶりだった。そこで新しく開店した店の一軒をお試ししてみた。

店名は記憶にないが、とんこつラーメン推しらしい。ところが、一番おすすめは「博多らーめん」ではなく、「和風とんこつ」のようだ。それではと、和風とんこつを試すことにしたのだが。

確か博多ラーメンは、高菜、明太子、紅生姜の三将軍が脇に控えているはずだ。そう記憶している。しかし、それが全く存在しない。ひょっとして「和風」に転換するときに、置き去りにされたのかもしれない。紅一点である紅生姜の色気がないのは実に残念だ。
スープは最近周流のマイルド系とんこつ醤油らしい。麺は細麺なので、九州系ラーメンの特徴は残っている。最近は博多に行っていないので、令和の博多ラーメンはこういう展開になったのかもしれないが。

LCCでの国際線も続々再開しているので、外国人観光客向けということなのだろう。フードコート内には全国チェーンの店が並ぶ中、ちょっとユニークなヌードルショップということで人気が出るのかもしれない。
店内は明るくて、最近の気取ったラーメン屋(店内が薄暗く黒基調の内装、ゴミが落ちていてもよく見えないという利点がある)とは違い、掃除も行き届いていた。
券売機がクレジットカード対応でないあたりが、外国人向けにはどうだろうという気もするが、アフターコロナの時期に開店するという大冒険を決行したのだから、そこは優しい目で見てあげたい。
やはり、空港での人気筋は鮨ではなくラーメンなのだろうなあ。

食べ物レポート

金沢駅の回転寿司

金沢駅の駅ビルには、たくさんのレストランや居酒屋が入っている。大体が観光客目当ての店に見える。地元客の日常使いという感じはあまりしない。駅ビル飲食店の中で、ここは地元民が使っている店だと思ったのはラーメン屋くらいだ。そこは、正しい意味の行列ができている。
ただ、観光客目当ての店がダメだといっているのではない。おそらく、ランチのセットなどは地元民向けに作られている。特に、一番安いものは、間違いなく地元民向けだ。観光客の大多数は値段をケチって、地元ネタを食べないというのは考えにくい。売る方も、観光客向けには高いネタをどう仕立てるかが腕の見せ所だろう。
そんなことを考えながら、金沢駅ビルで「回らない回転寿司」の二軒目に挑戦した。

注文したのは、ランチセットの中で二番目に安いものだ。いわゆる1.5人前という代物で、数が多い。ネタは北陸限定、地元ネタという感じではなく、ごくごく一般的というか「普通」のネタ構成だ。唯一金沢っぽいのが、カニ足が乗っていたことくらいだ。ランチセットだから、いわゆるシャリ玉も大きめに設定している。10貫も食べるとお腹いっぱいになる大盛りセットだ。
今や滅亡寸前の百円均一回転寿司と比べると(というか比べてはいけないのだろうが)、明らかに鮨として完成度が高い。100均寿司はシャリ玉も小さくなり、ネタも小さくなり、今や手毬寿司程度に小型化されている。小ぶりの寿司は食の細い人にはありがたいかもしれないが、絶対的な課題を抱えている。シャリ玉とネタのバランスが悪いのだ。
コスト削減を目的とした小型化、矮小化が限界にきているから、カニや本鮪などを使った限定ネタでの高価格化を狙う。その上で定番品の値上げに踏み切るしかなかったのが、この一年の回転寿司業界の流れではなかったか。「安い」を捨てて、結果的にたどり着いたのが「高くても旨くない」という評価だったのは、迷走の極みということだろう。おまけに最後は公取の指導まで入った。
そんな業界大手のスランプを尻目に、北陸の回らない回転寿司はコスパの良さをますます磨き上げている。そんな感じがする。低価格チェーンも囮広告で捕まるようでは、外食として滅亡の道を歩んでいるとしか思えないが、オーナーであるファンドは売り逃げて仕舞えばいいだけだから、この問題の根は深い。
うまい寿司を食べながら考えることではないのだが………

鮨のついでに好物のタコ酢を注文してみた。よく考えれば、日本海沿岸でタコが有名なところはあっただろうか。北海道の水ダコくらいではないか。金沢というか能登半島界隈でタコは取れるのか。食べているうちに疑問が色々と湧き上がってきたが、普通にうまいタコだった。ひょっとするとアフリカ東海岸産のタコかもしれないが、うまいのでよろしい。
100均寿司のタコがあまりうまくないのは一体なぜだろう、という新たな疑問も浮かび上がった金沢の回らない回転寿司体験でありました。

小売外食業の理論

コロナの後の居酒屋戦線考察

具の見当たらないソース焼きそばが酒の肴には向いている

コロナの第七波などとメディアが騒いでいた夏が、おそらく外食の復活期だった。半年近く経ち振り返ってみると、ああそうだったなあとわかる。メディアも視聴率が取れないせいか、コロナ報道は下火になっていた。オリンピックが終わり一年が経ってみれば、予想通りというか当たり前というか、汚職の摘発が始まり大手広告代理店がまな板の上で処分を待っている。おまけに談合疑惑も発生し、公取が出動する事態にまで発展した。市民感覚的にはオリンピックの熱狂もすっかり冷め、一年も経てば、「悪い奴」退治のニュースをネタにオリンピックを小馬鹿にする風があっても不思議ではない。まさに、居酒屋のオヤジネタにぴったりだ。居酒屋復活を祝うが如き、オリンピック汚職ネタで大いに盛り上がったことだろう。
オヤジ族と言えば、ひっそりと昼飲みに移行していたジジイ層を含め、居酒屋が昼営業を縮小し通常モードに移行すると、当たり前のように夜活動に戻ってきた。あの周りを無視したような大声というか喚き声も復活した。やはりオヤジ族には学習能力がない。孤食だの黙食だのという言葉は記憶にさっぱり残らなかったようだ。
ただ、コロナが終わって(?)、行動変容しないオヤジたちを置き去りにして、居酒屋は様々な変化をしている。生存戦略と言っても良いのだろう。基本的に「値上げ」を行い、省力化を進めている。意外なことにオヤジ対応の低価格居酒屋である「一軒目酒場」が、その変化の先頭を走っている。そこで見つけた重要な変化を二点あげてみたい。
一点目が、「具なし焼きそば」推しにあらわれる、低単価維持を見せかけるメニュー再構築だ。値上げごまかしのフェイクメニューというと言い過ぎかもしれないが、目眩し作戦であることに間違いはない。酒類の大半が1-2割の単純値上げをしている。その値上げ感を和らげるのが、定番商品の価格維持と新商品として肉系商品(ただし少量化している)の導入だ。揚げ物を中心に、値上げはしていない定番品もある。値上げの主力は、冷製の肉料理、つまり手間要らずですぐ出せるものを、高価格帯400-500円台で提供し始めた。
そして、腹を膨らませる膨張剤としてのつまみが、焼きそばやマカロニサラダといった炭水化物系の食べ物になる。これを壁面の「メニュー札」を使って推しメニューにそている。マカロニサラダに至っては価格を上げずに増量したようだ。
濃い味付けにした炭水化物系のメニューを価格上げずに増量するというのが、値上げ感を和らげる基本戦略となっているようだ。これは他の居酒屋でも同じようだし、ファミレスの昼飲み用サイドメニューも同じような傾向がみられる。まあ、オヤジ対策に考えることは皆同じということだ。

豚のタンの冷製 なかなかうまいが、お値段はそれなり

二つ目の転換点は、メニューに「人間」が登場してきたこと。低価格居酒屋が値上げをしたくなると最初にすることが、素材の品質を訴えかけ価格価値を上げようとすることだ。要するに「高くても、美味しい」路線に変更するという宣言なのだが、大方これは失敗する。低価格居酒屋に集まる客のニーズに、高くてもうまいものはない。安くてうまいものが望ましいが、それも難しいのは客も理解している。だから、安くてそれなりな味のもので十分だと思っている。高くて、それなりのものは論外としてしまう価格圧力だ。
では、素材訴求が失敗すると何をするか。次は「人」の宣伝をする。料理長を登場させてレシピーのユニークさを語ったり、有名シェフとのコラボを自慢したりする。最近のコンビニ弁当も同じ手法をとっている。要するに、誰かの権威に寄りかかる「ちゃっかり値上げ戦略」だ。これが意外と効き目がある。特に、ヘビーユーザー、つまりその店の常連客には評判が良くなる。
金があればもっと高い店に行くのにな、とは思っていないのがヘビーユーザーだ。この店は、安くて適当にうまいと思う「俺のお気に入り」「自分の店」意識があるからだ。だから、その常連客にターゲットを絞れば、「人間商標」は意味がある。看板に使われる「ヒト」が、自分達の代表に思えてくる。著名人や有名人に同化できる。あるいは、自分たちが飲み食べしているものの「正統性」が担保される(気がする……)からだろう。
ただ、この店はオヤジたちに心情的に寄り添ったふりをしながら、注文のデジタル化を進めている。それも全席にタブレットを設置するかわりに、個人所有のスマホからQRコードでアクセスさせる。タブレットというデジタルギアを置くことで、デジタル拒否層を刺激しないようにした。オヤジの心証をよく汲み取ったものだ。
しかし、デジタル許容層にはスマホで注文させるという進化は取り入れた。店内にはデジタル感を出現させない「あざとさ」だ。スマホが使えず、デジタル注文に抵抗があるジジイ層には、従来通り従業員が注文を受ける。このあたりの匙加減が絶妙だろう。この店を安い酒場として使っている20代から40代の層にとっては、スマホ注文が主流になっている。
結果として、店内に「すいませーん」と従業員を呼ぶ声は少なくなった。残ったのはジジイとデジタル非対応オヤジの声だけになった。今や居酒屋も体感的には半分くらい静かになった。

紙製のグランドメニューもしっかりテーブル各席に置いてある。コロナ前のメニューは商品写真もなく「字面」だけしかない、素っ気のないものだった。カードケースに入っていて、裏表をひっくり返して見ればそれが全てというシンプルさだった。メニューの中身もほとんど変化なしで、日替わりメニューが別添で置かれているくらいだから、オヤジでも注文に苦労することはなかった。
それをファミリーレストランのような商品写真入りの「面倒臭いもの」に変えた代わりに、同世代のおっちゃん写真が登場している。共感を強める手法と考えれば、これはなかなか革新的な変化だ。ファミレスが変化の方向を見失いのたうち回っているのと比べると、アフターコロナの居酒屋は、なかなか強かなのだ。