食べ物レポート

新宿駅で朝飯を食す

JR新宿駅東口、改札近くにある小体なお店は朝からビールが飲める。この店の向かいは立ち食い蕎麦屋で、そこも客はひっきりなしに出入りしている繁盛店だが、混雑度合いはこの喫茶店+ビールスタンド的な店の方が圧倒的だ。朝は喫茶店で午後は軽食、夜になると飲み屋に変わる三毛作と言えば良いのだろうが、実際は朝昼晩フルメニューで営業している、何でも屋と理解した方が良さそうだ。
ビールのつまみに出てlくるハムやソーセージは本格的でレベルが高い。だからなのか、夜に入ろうとして入れたことがない。いつ行っても満席で、「ああ、今日も入れなかった」を永遠に繰り返している感じがする。一度だけ、たまたま空いている席が見つかって入ったことがあるくらいで、入店確率は10-20年に一度だなと諦めている。
この日も、朝9時に店の前を通りかかったら、なんと3席も空いていたのですかさず飛び込んで席を確保した。朝に入るのはこれが初めてだった。(いつもは満席で諦めて、向かいの立ち食いそばにする)

このトーストとハム(サラミ)とゆで卵半分がセットになっているのが、モーニングメニューの一つだ。これに飲み物がついて、500円でお釣りが来る。たいへんリーズナブルなせいなのか、客層を見ると男女半々といった感じで、いかにも都会の忙しい人たち向けの店という雰囲気がある。店内を観察していると席の回転も早い。
ただ、このモーニングメニューにつける飲み物が定番のコーヒーだけではなく、しっかりビールも選べることだ。(ただし別料金)トーストを齧りながらビールを飲むと、何やらすっかり無頼な人になれるような気がする。

いまだにこの「テーブル障壁」は使用中だが、13日以降はどうなるのか

たまたまなのか、両隣の席が空いてそこに入ってきたのが外国人観光客だった。ここ最近、新宿の街を歩くと外国人観光客を見かける頻度が急増している。大袈裟に言えば、靖国通りや新宿通りを歩くと、すれ違う5人に一人は外国人観光客だと感じる。聞き分けられる言語だけでも英語、仏語は当たり前で、それに中国語が多い。急増した感があるのが韓国語で、なぜかアウトドアショップにやたら登場している。韓国でもキャンプがブームなのかと疑ってしまうくらいだ。ただ、誰も買い物はしていない。ただ見て回るだけのようだ。
薬局で解熱剤が中国人観光客に買い占められているというニュースを見たが、アウトドアグッズはそこまでの人気はないようだ。それはありがたいことだと思う。キャンプ用シュラフやテントが爆買いの影響で品薄ですなどと言われたら、うんざりしてしまう。

この店のメニューはあまりに多過ぎで、一つ一つ確かめるのも大変だ。おまけにモーニング、ブランチ、ランチと時間帯により細かくセットが変わる。唯一変わらないのがいつでも飲めるビールだ。いつも満席で諦めているのだが、しばらくは熱心に空席探しをしてみようか。その時にはフランクフルトソーセージと黒ビールでのんびりしてみようか。
あれこれ考えつつ、10分でモーニングを平らげ店を出た。すっかり気分は都会の忙しい人モードになっていた。そんなに急ぐ用事なんて、全然なかったのだが。周りの人に煽られるというのは、たまにあるものなのだ。コロナの間はすっかり忘れていた「都会のあわただしさ」だった。

食べ物レポート

2月の満洲 で気かついたこと

自宅から歩いていけるチェーン店の本店というのは、なかなか珍しい物ではないかと思う。満州発祥の店はすでに他の店に変わっているが、そこから移転したのがこの本店のようだ。満洲チェーンの中では比較的大きな店になるのではないか。この本店の横に別館があり、パーティールーム、宴会部屋として使われている。そのパーティーメニューが満漢全席ならぬ満洲全席になっていて、一度試してみたい物だと思っているのだが、誰か満洲本店での宴会に付き合ってもらえない物だろうか。
宴会の帰りには満州餃子をはじめとするテイクアウト商品の詰め合わせセットなどご用意できるのだが。

恒例月替わりメニューを食べていなかったと気がついたのは2月もほとんど終わりになる頃で、これはいけないと、のこのこと出かけてしまった。ここ数年、冬の時期の恒例になっている「辛い麻婆豆腐」が2月の月替わりメニューだった。
満洲のメニューは町中華にはあるまじき絞り込みがなされていて、シンプルの極みだ。そもそも餃子の店が多少中華メニューを増やしたという体裁だと疑っているのだが、それにしても月替わりメニューの変化の薄さはなんとかならないものか。大ハンバーガーチェーンが必ず秋に実施する月見メニューのようにほぼ定番化された季節メニューも世の中には存在する。だが、中華料理店はもう少しあれこれ変化球にしてくれないかなと思う。
コロナ以前はそれなりに挑戦的なメニューも投入していたので、ここ最近はコロナによる経営打撃や原価高騰などからマイナーチェンジに留まっているのだろう。同じ埼玉発の中華チェーンである日高屋も最近はすっかりおとなしいメニューになっている。
満洲の場合は、餃子がうまければみんな満足ということもあるので、変化の乏しさも致し方ないかと諦めている。それでも月替わりメニューはちゃんとチェックしているのだから、まんまと作戦に嵌められているのは間違いない。
さて、2月の辛い麻婆豆腐だが、どうも昨年のものと変わり映えがしないような気がする。一口目はあまり辛くない。食べ進めるとだんだん辛さが増してきて、最後の方ではうっすらと額に汗をかく。そんな感じの味付けだ。文句はないし、普通の麻婆豆腐より辛いのでネーミングに嘘はない。ただ、年毎にもう少し変化しても良いのではと思うのは、無理なお願いだろうか。
この本店の客層を見ると半分は高齢者なので、高齢者は変化を嫌うという考えがあるのかもしれない。ただ、今の高齢者は70歳を過ぎてもジーンズで街を歩く。足元を見ればそれなりのブランドのスニーカーだったりする。(ナイキが多いのが不思議)ハンバーガーは20代の頃からバリバリ食いまくり、競争社会に適応した「団塊世代」で肉食集団だ。世間で思われるほどジジイ化していないとは思う。いや、いまだに油ぎったウルサい人たちが多いのだから、もっとギラギラした食べ物でも彼らには問題なかろうと感じるのは間違っているのか。

辛い麻婆豆腐があまりにシンプルだったので、追加で定番のホイコーロを頼んでみた。これも、味噌味はマイルドで、回鍋肉特有の油まみれ感はあまり感じない。やはり満洲は、オイルレスでヘルシーな方向にメニューをゆっくり変化させている途中なのだと改めて気がついた。しかし、オイルレスで味付けが薄めな町中華とは、なんとも不思議な存在だ。
健康志向だとかオーガニックだとか声高に叫ぶチェーンの宣伝くささ、嘘っぽさには辟易しているが、本当に健康志向な舵取りをしたい経営者は、あえて何も語らず定番メニューの変化で客を惹きつけるということだろう。次に行くときは、宿題にしていた「玄米で作った炒飯」を食べてみなければ……(満洲は米を使ったメニューで玄米か白米を選ぶことができる)

街を歩く

ひっそりと駅名変更告知

東京ビッグサイトに、また展示会を見にいく機会があった。そこで、国際展示場駅の中を探索してきた。前回の、駅名変更の謎を確認してみようと思ったので、一階にある改札口付近を中心に探し回ってみた。
しかし、改札口付近には何も見当たらない。改札口からかなり遠くにある壁面にポスターが大量に貼っている掲示板コーナーみたいなところがあり、そこに例の「謎」の証があった。
まずは校名がひっそりと書かれた、りんかい線全体の絵が一枚。渋谷から直通18分というメッセージが微妙に効きそうなのは、やはりビッグサイトを聖地と崇めるコアなファン集団の属性だろうか。
りんかい線直通の大規模駅は渋谷の他にもたくさんある。「新宿」から20分とか、「池袋」から25分でも良いではないか。いや、それをいうのであれば「赤羽」から40分?とか、「大宮」から60分でも良いはずだが、やはり渋谷以外の場所は魅力が薄いのだな、きっと。
新宿が舞台であれば「深夜食堂」、池袋が舞台であれば「池袋ウエストゲートパーク」など名作もあるが、聖地巡礼集団にはダメなのか。赤羽であれば、迷エッセイ漫画「東京都北区赤羽」もあるのだが。大宮が舞台となる作品は……………思いつかない。「翔んで埼玉」でも大宮描写はあったかなあ。

そして、これが大本命の駅名変更告知?だった。期間限定で実施されることがわかる……………のかな?
それとよく見るとりんかい線全線とのコラボらしいので、他の駅にもこのような企画が動いているのかもしれない。ただ、それを確かめる元気はない。その手の努力は、聖地巡礼を行う「使徒」に任せるべきだろう。

当然、コラボグッズのポスターもあった。これは重要な資金源なので、絶対に掲示が必要な案件なのだが、そもそもグッズはどこで買えるのだろうか。駅構内に販売所が見当たらなかったのだが。ひょっとすると改札を出たところにあるコンビニ店で、特設コーナーがあるのかもしれないと気がついたのは、家に戻ってきてからだった。
まあ、鉄道コラボの企画が動くということは、コロナが終わった証拠みたいなものだから、歓迎すべき「善き事」なのだ。全国のアニメ聖地巡礼も復活しているようだし、世は全てこともなしな平和が戻ってきた。

食べ物レポート

ハイスペックディナー@新橋

高知の友人からご招待されて、新橋にある高級イタリアンレストランでお食事会に参加してきた。高知の地元産物を使ったフルコースで、ワインも飲み放題という久しぶりの「ディナー」だった。

テーブルの上にあるナプキンではない「マスク入れ」から今の日本が垣間見える。ただ、ここ数年間はこうした集まり自体が自粛というか禁止というか、令和の魔女狩りというべき「狂乱」の時代だったことを思えば、随分とマシになった。この3年間のさまざまな統計数値を見て、後世の歴史家はどう書き記すことになるのだろうか。最近、あまりニュースでも見かけなくなった例の医療関係者提言集団の「提言」を読めば、数値に基づいていない煽りがあきらかなのだが。医療関係者のボス達は理系集団ではなく、何やら怪しい呪文を唱える数字無視のカルトなグループだったらしい。「怖い怖い教」の教団幹部だったということか。

スペシャルディナーの最初に出てきた前菜は、一口サイズでぱくり。お米を使った「イタリアンなおかき」が食感・味共々斬新だった。併せて出てきた、柚子を使ったカクテルとの相性も良い。

カツオは、おやまあ、これがカツオですかという大変身をしていた。高知スタイルでのカツオのスタンダードな食べ方、つまりポン酢とニンニクとは大幅に違う。野菜としっかり併せて、口の中でのミックスを楽しむ料理になっていた。
無類のカツオ付きとしては、目から鱗が落ちた気分だったが、確かに「鉄分」の多い青魚であるカツオは、強めのソースと合わせると上手くなるし、野菜と合わせる方が食感も楽しめる。なるほどね、これこそプロの腕ということかと、ただただ感心していた。

パスタは白いソースと赤いソースで、かっちりとしたイタリアンスタイルの二種提供だ。この辺りがちょっと嬉しい。

メインアントレは、ジビエ(鹿肉)のローストだった。残念ながら高知さんの鹿は手に入らずということで、今回は滋賀県のもの。ジビエも普通に食べられるようになったのは、どうやらSDGsを売り物にした地域生産物として、全国各地で出回るようになったせいらしい。
確かに鹿は全国ほとんどの場所で捕獲すると懸賞金がもらえる害獣扱いだから、それを有効に利用するというのは良い考えだ。ただ、食材として使うには法整備が不十分なので地域であれこれと対処しなければならないことが多い。
想像以上に柔らかい鹿肉だったが、これはやはりシェフの腕前というものだろう。濃い味の肉に濃いめの甘いソースがよくあっていた。

デザートとコーヒーで締めくくった「ディナー」が終わってみるとおおよそ3時間が経っていた。久しぶりののんびりとした美味しい時間だった。同じテーブルについたゲストの方々もお話上手ばかりで、あっという間の3時間だった。
どうも地方政治家に偏見があり、脂ぎった自慢話ばかり聴かせる人たちだと思い込んでいたが、やはり物事には例外というものがある。お若い時代の海外放浪記や、地元の町につくった健康施設での活動ぶり、あるいは女性利用者からの評判などを面白おかしくお聞かせいただき、すっかり楽しませていただいた「町長」、お話ありがとうございました。

美味しいものを食べ、洒落た会話を楽しむ。面白い話を聞く。普通の楽しみが戻ってきて良かった良かった。

書評・映像評

本棚から一掴み その2

これも棚からひとつかみ取り出してきた本で、居酒屋ガイドブックだ。発行は2015年だから、情報価値はほとんどないだろう。永久保存版と銘打ってはいるが、立ち食い蕎麦屋と同じで居酒屋もコロナに対する抵抗力が弱かった。名店であっても、店主が高齢の場合は閉店してしまった店が多いようだ。
また、この本が発行された平成末期は低価格が良しとされていた時代でもあり、掲載されている店はどちらかというと低価格志向の店が多い。
角打ちなる言葉に誘われて、あちこちの立ち飲みの店に遠征した記憶もあるが、その頃はまだ一人飲みは少なかった。角打ちに行くにしても少人数でサクッと飲むような感じだった。今では、すっかり一人飲みが多くなったので、改めて令和版の一人飲みガイドブックが発行されないものかと期待してみるのだが。
すでに若年層のアルコール離れが言われて久しいので、購読層が限定される。一人飲みはオヤジやジジイの専業的楽しみだからデジタルではなく、紙での出版が望ましい。この時点で厳しい気がしてきた。ライターは誰がとか、ムックにするか新書判にするかなど、あれこれ考えるととても出版は無理だという気がしてきた。幻の一冊になること決定だ。

太田さんの本は随分と買い込んでいた。紹介された店もあちこち行ってみた。出張の時には、全国にあるいくつかの店をありがたく使わせていただいた。最近ではテレビで居酒屋探訪番組を欠かさずに拝見している。
これも改めて思うことだが、居酒屋巡りのリストとして「本」は活用しやすい。ただ、今では住所や電話番号などの店舗情報はスマホでチャチャっと検索できてしまう。それどころか、人気メニューや価格までもグルメサイトで探し出せる。サイトの中の情報は、この居酒屋ガイドにある体験記録、特に情緒性などの要素は吹き飛んでしまった「生の情報」なのだが、それでも良い時代になったということだ。(ちなみにグルメサイトの感想文はどこまでが本物で、どこまでがやらせかという問題が解決していないので、ほぼ読まないことにしている)
確かに飲食店の情報を入手するのが難しい時代は、食通とか言われる人の感想や意見に頼るしかなかった。今の時代は、道具立ても含めて、その他大勢扱いされていたモブ・群衆の大量意見を計量化してみることができる。
一人の食通が言う意見よりもみんながつぶやく平均的な意見の方が役立つと感じる時代になった。こうなると食通の意見は権威もなく、影響力も無くなるのかと思うのだが、それはそれで食の民主主義という理解をすれば良いのかもしれない。アルファブロガーと呼ばれる声の大きな発信者も存在するが、やはり大衆の発する声の集合量にはかなわない気がする。
だからこそ、カリスマの意見に従うのではなく、ファンとして好みの店を慕っていく。そんな楽しみ方が時代に合っている感じだろうか。その読者代表が書いた体験記録で一つの店の話を読んで、ああ、この店に行ってみたいなあと思う。これはグルメサイトで感じない「知的遊戯」ではないか。それでも、とりあえず次に行きたい店を選んだら、グルメサイトで営業しているかどうか確かめなければな……………

食べ物レポート

ツインストアの片割れ

以前に書いた一つの建物に2軒のラーメン屋が入居している場所の2軒目に行ってきた。前回のラーメン屋はこの右側にある。ただし、入り口は一緒だ。中にはいる入り口のドアが左右に2枚並んでいる。左のドアに入ればまぜそばの店だ。
この店は埼玉県のあちこちにあるローカルチェーン店で、お店のサイトを調べてみたら、なんと隣の店が本家で、このまぜそばの店が分家というか子会社のような位置にある。なぜ埼玉特化型なのかはよくわからないが、埼玉の風土にあった麺料理を出している………ということでもないらしい。
ただ、店の中に入ると埼玉ラブな感じが、あることはある。

この店の注文の仕方はちょっと変わっている。まず食券販売機で注文するものを決める。従業員に食券を渡すときにトッピングや味付けの指定をする。このあたりが「二郎系」呪文を唱えるのと同じだろう。当然、増量も可能で、例の「ニンニクマシマシ」みたいな呪文になる。
今回は初回なので、全部入れにしようかと思ったが、①③④⑥にしてみた。増量はなしだ。エビマヨは食べたことがないので最初に決めた。ベビースターは食感パリパリに重要だし、追加調味料としてニンニクと辛味は外せない。次回は、ヤサイマシマシにしてみようと思ったが、初回は普通盛りにしておいた。

待つこと10分程度、太麺は茹でるのに時間がかかるので多少待ち時間が長めになる。後から入ってきた客は、連続して長めの呪文を唱えていた。それがどうにも気になって、隣の客の注文が出てきたときに横を見て確認してしまった。それはものすごいものだった。なぜか丼の上にどんぶりが逆さまになって盛り上げっているような印象がある。山盛りではなく富士山盛りという言葉が思い浮かんだ。
それを食べるのかと、ついつい隣の客を尊敬してしまう。やはりこの店のスタンダードな注文は、麺もトッピングも全てをマシマシにした、超巨大ガツン系まぜそばにあるらしい。どうりで自分の注文の時に「普通で良いのですね」と何度もダメ押しされたはずだ。

出てきた麺普通盛り、トッピング四種だけ増しなしのライト級まぜそばを、ぐしゃぐしゃと混ぜる。広島の汁なし担々麺は5回混ぜると言われたが、これもしっかり混ぜるためには、それなりの回数、時間が必要だった。混ぜているうちにニンニクの匂いがぐわっと立ち昇ってくる。混ぜるたびに見た目は悪くなっていくのだが、その分だけ味は良くなるはずだ。
そして、混ぜ作業を完了し実食すると、まずはニンニクが強烈にくる。その後、濃いタレと混じった歯応えのある太麺が、麺料理とは思えないハードさを味あわせてくれる。顎の筋肉強化には絶好だろう。噛み締める。飲み込む。次の一口を口の中に入れて、噛み切る。噛み締める。飲み込む。これを延々と繰り返す。その途中では一度も「麺をすする」という行為はない。ツルツルではなくモグモグだ。いや、モグモグというよりガシガシかもしれない。
ものをしっかり噛むと空腹感が収まるらしいが、この一杯を食べ終わった時には、満腹感しかない。ニンニクのせいか、顔にはうっすらと汗が浮かんでいた。達成感がある食事になった。

カウンター上にある間仕切りは埼玉ネタ、埼玉アルアルが描かれていた。カウンターに並んでいる間仕切りの全部を確かめてみたくなった。都道府県別人気ランキングで、いつも最下位近辺をうろちょろしている埼玉だが、自虐ネタが大好きなのは某ヒット映画で明らかになった。
千葉県オンリーとか神奈川県オンリーというローカルラーメンチェーンはいくつか知っているが、ここまで地元愛(自虐愛)に溢れたところは知らない。良くも悪くも埼玉らしいというべきか。
次回は、マシマシのまぜそばにするか、それともまぜそばを超えるヘビー級と言われるオリジナルな「ラーメン」にするか、ちょっと悩ましい。

小売外食業の理論

回転寿司の対応を見に行ってきた

すしテロとか、ぺろぺろ事件とか言われている、SNSで発信された危ない映像の対応を確認してみようかと、被害にあった大手回転寿司に行ってみた。ニュースでは事件の後、売り上げが低下したと報道されていたが、店内はほぼ満員だった。気にする人は来ないし、気にしない人には関係ないということだろう。どうやら高齢者を中心に回転寿司忌避は起きているようだが、確かに周りの席に座っているのは高校生から30代くらいまでだった。昔よく見かけた高齢者カップルは1組だけだった。
郊外型の店であれば、もう少し年齢層の偏りがあり影響も大きそうだが。
具体的な店舗での対応を見ると、非常に簡単だった。寿司は回っていない。注文したものだけが上段の高速レーンで運ばれてくる。つまり完全なバイ・オーダー、注文が入ってから作る方式になっていた。ぐるぐる回る寿司の前提は、商品(皿)にイタズラされないという客と店の性善説関係によっているので、その信頼がなくなった以上、回る寿司はありえない選択ということだ。
他のファストフードでも類似事件が起きている、卓上の無料調味料やガリ、紅生姜、漬物などをどう対応するかが重要改善ポイントの一つだが、この店では「客の選択」に委ねることにしたようだ。
封印された小袋で、わさびなどが置かれている。昔は容器に入ってベルトの上を回っていたがテーブルごとの設置に変わったようだ。そして、ガリも小袋化されていた。
お茶も上部の小さい穴から粉茶を取り出す方式になった。容器に入ってる粉茶を小さじで取り出す方式はやめたようだ。

ただし、ガリ容器も残っていて、これは大量にガリを食べる客向けの対応だろう。たまに見かける、皿にガリを山盛りにしている客は(特に外国人観光客らしき人たちは)、小袋を大量に開けるのが面倒くさいと思うだろうということなのか。少なくともコスト面からの考えではないと推測する。

もう一つ気がついたのだが、全ての容器が綺麗に並べられている。割れたガラス理論ではないが、テーブルの上に乱雑に置かれていると、適当なことをしてもあまり気にならないという客側の心理を考えているのだろうか。このブランドは素早く対応している。良いお手本だ。
もはや性善説の維持は難しい。となると、客との心理戦にどう有利な位置を取るか、そこが具体的な対応策になるはずだ。ファミレスのドリンクバーの運営や、調味料のセルフサービス、食べ放題の料理陳列システムなど外食企業で類似の改良が必要な設備は多い。業界内で色々な試行錯誤が続く上で、最上な解答が生み出されると思う。
ただ、やはり今回の一連の事件は、運営側の怠慢でしかないと厳しく反省するべきだと思う。こんなことをする客はいないだろう」という思い込みで、「改善すべき仕組み」に金をかけてこなかったツケなのだ。被害者である回転寿司ブランドに同情的な意見もあるようだが、自分は全くそれには与しない。
失敗の原因は自分たちにある。それにどう早く対応できるかが企業力だ。自分たちの怠慢、無知を他人のせいにするようでは、飲食業、サービス業が存続する意味がない。迷惑行為をした者を法的に制裁するというのは、その次の作業だろう。
客の中の一定数は悪意を持っているという前提で、システムやオペレーションを組み立てる努力をせず、自分たちの怠慢を法的制裁で牽制するとしか見えないのだ。

自分がそういう悪意ある客ではないことを証明するため、写真を撮りにきただけではなく、寿司もちゃんと食べるのだということで、好みの寿司6皿をしっかりいただいて帰りました。茶碗蒸しとメンチも追加で頼んだことを付け加えておきます。

書評・映像評

本棚から一掴み 滅びゆくもの 

日曜午後のFMラジオ番組で、「今日は棚から一掴み」といってオールディーズをかける時がある。これがなかなか多様な音楽が入り混じるので楽しみにしているのだが、それにならって自分の本棚に眠っている本を「棚から一掴み」で取り出し、パラパラと見直す(読み直すではない)ことがある。
若い頃から買い集めていた本はほぼほぼ断捨離したので、本棚に残っている本はまだ読んでいない本が半分、どうしてもこの本は捨てられないという本が半分になる。
その捨てられない本の中に、グルメガイドみたいな本が何冊か残っている。発行年は2015年前後だから、すでに閉店した店も多いはずで、情報価値は著しく低い。似たような本の最新版がないかと、試しにAmazonで検索してみたが、蕎麦屋のガイドブック(のようなもの)は最近ほとんど発行されていない。ムックでも見当たらない。かろうじて存在しているのはWEB専用のデジタル出版だった。
扱い品が蕎麦のせいなのかと疑ってみた。ただ、蕎麦愛好家が高齢者に偏っているのだとするとデジタル本というのはちょっと理屈に合わないので、若い蕎麦好きの人口が減っているという意味だろう。書店で買ってくれるほどの蕎麦好きが減っただけなのだろうか。ただ、これがデザートであったり、パスタや軽量イタリアン、エスニック系料理であれば、まだ紙媒体でもガイドブック的なものが発行されていそうだとは思うのだ。ラーメンであれば、ガイドブック、人気店ランキング本も簡単に見つかるから、やはり蕎麦のせいなのだろう。

おまけにコロナによって立ち食い蕎麦屋は相当な数の店が消滅したようだ。日本的ファストフードの王者も、時代の流れというよりパンデミックによる環境変化に太刀打ちできなかったということだ。我が身を振り返ってみても、早朝に電車移動で改札を出たら強い出汁の匂いがしてきて空腹感に襲われる、みたいな状況はここ数年ほとんどない。この数年、わざわざ食べに行った時を除けば、ファストフード的に立ち食いそばを食べたことはほとんどない。
都内のあちこちにある立ち食い蕎麦屋を記憶していた、脳内立ち食い蕎麦マップももはやほとんど役に立たないだろう。それでも、わずかに生き残った立ち食い蕎麦屋、駅そばをぶらりと訪れてみたいとも思う。とりあえず来週には新宿駅東口の馴染みの店(先月まだ生存しているのを確認した)に行って、山菜天ぷら蕎麦でも食べてくることにしようか。
滅びたものへのノスタルジーと笑われても仕方がないが、想像上の蕎麦店巡りをするには、この2冊が十分お役に立つ本だった。

旅をする

もうひとつの埼玉名物 秩父編

もう一つの埼玉名物としてあげたいのが、地ウイスキーの先駆けとなった秩父山奥で醸造・蒸留されているモルト・ウイスキーだ。これも供給量と需要のバランスが取れていないので、地元に行っても売り切れていることが多い。埼玉県内の酒店では置いてあるところもあるが、スーパーなどでは売っていない。「わざわざ」秩父に買いに行っても手に入るかどうかは、確率的に5分5分といったところだ。ネットで買おうとすると転売が横行しているし、ネット酒店の価格は定価ではない。自宅近くの酒店には時々在庫があるので、事前に電話で在庫を確認してから買いに行く。

地ウイスキーといえば思い出すのだが、サントリーの山梨にある白州蒸溜所まで、「白州」を買い込みに行っていたが、最近はシングルモルト人気のせいでなかなか手に入らないらしい。個人的には、「白州」とニッカ「余市」が好みの銘柄だが、秩父のウイスキーはそれより頭一つ上の上位ランクになる。(竹鶴はブレンドが変わった後はあまり好みではなくなった、残念)

独特の風味がある銘品 これがスタンダードなもの

秩父名産としての酒として付け加えると、やはり秩父錦だろうか。世間的には純米大吟醸のような高級酒を推す方が多いようだが、個人的には本醸造を好んで飲む。吟醸酒の吟醸香は冷酒で飲むには素晴らしいものが多い。特に、脂の乗った食べ物と合わせるとより美味さが引き立つ。ただ、普通に食事とあわせて楽しむのであれば、辛めの本醸造酒で十分だと思う。
今では戦中、戦後の粗製濫造された三増酒のような、乱暴極まりない日本酒はすっかり姿を消しているので、本醸造でも何種類か試して自分の好みに合うものを選べは良い時代だ。ただ、テレビCMを流すような大手酒造メーカーの製品は、慎重に検討した方が良い。日本酒メジャー企業の酒は、主たる購買層が高齢者層であり、彼らが若い時に親しんだ味、いわゆるベタ甘系の酒が多いからだ。
地酒については、吟醸酒と比べて本醸造の方がクセがあるし、独特の風味がある。吟醸酒になると微妙な差異があるが、だいたいどこの酒蔵の酒も、淡麗で芳香かぐわしいサラサラした酒に仕上がっている。だから吟醸酒の味わいはどこか似ている。大吟醸、それも高級品になればなるほど見分けるのも難しい、とても美味い酒に仕上がってくる。そんなこともあり、最近は我流な日本酒の楽しみ方として、本醸造酒を燗酒にすることが多い。
という個人的観点でおすすめするのがこちら、秩父錦の純米酒になる。これも、普通の酒屋では見かけたことがない。秩父では当たり前に手に入るようだ。

武蔵国に併合されるまでは、秩父国として独立していた秩父地方だが、今ではすっかり埼玉県の一部で「山の民」の国という感じはない。それでも、現地に行けば山々に囲まれた盆地であることが実感できる。プチ旅で行くと、そこはかとした異郷っぽさをほどよく感じられる。都内からの日帰り観光にはかなりおすすめな場所なのだが………お得な「観光切符」は三月十日までであります。
 

面白コンテンツ, 書評・映像評

時短レシピーの進化系

この本には大変お世話になった。特に、題名にある美味しい煮卵の作り方は、まさに天啓だった。何度もレシピー通りに煮卵を作り堪能した。冷蔵庫の中で1週間くらい熟成して食べてみたりもした。レシピー本に乗っているメニューを作ろうとすると、調味料を追加で買ってこなければいけないであるとか、ちょっとだけしか使わない食材が必要になったりすることが多い。結果的に、眺めて楽しむだけ、いつかきっと作ってみたいと思うだけの「幻メニュー」になる。
ところが、この本の中にあるものは、そうした初期抵抗値が少ない、あるいは全くないので、幻化する前に実現化する。冷蔵庫の中身で似たようなものがあれば、それで作ってしまっても良いというお気楽さがある。
一年に何度か本棚から取り出して、あれこれ見繕って作ってみようと思うレシピーが多い。料理本は古くなると使いにくくなるものだ。時代の好みみたいなものがあり、味付けも変わっていくから、古い教本的な料理本は買い替えたほうが良いと思っている。具体的に言えば昭和中期から平成中期までのの料理本は実用的ではなく、もはや史料的価値しかない。(個人的見解です)
ただ、この本は捨てる気にならない実用本で、おまけに休日前の夜寝る前にあれこれ眺めるにはちょうど良い。
今ではスーパーの食品売り場に行って、並んでいる安売り特価品を選択し、それを使ったレシピーを検索するのが当たり前な時代らしいので、レシピー本など廃れていくばかりだとは思う。ただ、この本のように「時短」というテーマで一括りにして、作り方や材料の選び方が並べてあれば、応用可能な実用本としての価値は高い。
一度麺つゆを使った煮卵を作れば、冷蔵庫内の調味料を使いカレー味とかマヨ・タルタル味とかケチャップ・トマト味とか変形は自由自在だ。色々な時短メニューの閲覧性を考えると、レシピーアプリをあれこれ検索するよりも便利さでは上だろう。
実用本として生き残るには、この本のような「本ではない使い方をされる本」みたいな発想が必要なのだと思うのであります。

註)ちなみにこの本の元ネタであるブログを見てきましたが、2020年が最終更新でしたので、現在はお休み中なのかお引越ししたのかもしれません。