街を歩く

昔は好きだったのに

コロナ前のことだが外食業界の新興チェーンとしてぶいぶいいけいけな感じで急成長していたいくつかの企業の中でも、出店速度が一番だったのがこの濃厚ガツン系ラーメン店だった。ラーメン業界で豚骨・魚介のWスープが主流に躍り出た時期だった。平成の後期に勃興した大盛り文化のラーメン版でもあった。
一時期はどの店も行列ができるほどの人気ぶりだったが、コロナの時期に失速したようでだいぶ店舗数も減ってしまったようだ。コロナの時期に店舗数を維持できたチェーン店は少ないから仕方がないだろう。
ファストフードであれば洋物のハンバーガーやフライドチキンはテイクアウト特性があり逆に成長したが、和物チェーンは苦戦していた。ラーメンも同様で、麺類チェーンはコロナの3年間、試行錯誤を繰り返つつ消耗していたようだ。
そしてコロナが終息した後のインフレにより、息の根を絶たれた感がある。なんといっても、外食企業の主力商品はその特性としての固有の「値頃感」があり「天井価格」が存在する。
例えばハンバーガーは単品価格が500円越えすると明らかに買い控えが起きる。牛丼も同じで平成時代は300円-350円が限界値だった。それを超えると露骨に客数減少が起きる臨界点みたいなものだ。
ラーメン業界では1000円の壁と言われていたが、コロナ後は1000円越えが当たり前となり、当然のように客数減少に襲われるチェーンも増えた。飲食店が日常的に繰り返し使われるためには「ある価格」帯で押さえ込む必要があるのだが、コロナで体力消耗している企業群には、その耐性がなかった。

個人的には濃厚な味付けで油たっぷり、野菜たっぷりのボリューム感を好んでいたのだが、量に対するコスパの良さが、このチェーンの売り物だったはずだ。味は二の次とまではいかないが、価格帯は1000円の壁に近い限界だった。
味よりも量というコスパを押し出した戦略だったと思う。逆に量を増やすより値段を下げてコスパをよくする戦略をとったチェーンもあるが、繁華街では若者層が多いせいもあり、「量」指向が「価格指向」より強かったようだ。
さて、数年ぶりに食べたボリュームラーメンだったが、どうやらあまりよろしくない変化をしている感じだった。昼時なのにワンオペで回しているのと、客席がまばらにしか埋まっていないのが気になっていたのだが、ラーメンを食べてみて納得した。
見た目通りのボリューム感は維持しているが、価格が1000円の壁を超えているメニューが多い。しかし、価格のこと以上に問題なのは、「スープがぬるい」のだ。これはラーメンでは致命的な問題だろう。味よりも量的な指向にも限界はある。ぬるいラーメンは冷めたピザと同じくらい評価が下がる。
たまたま作り手が不慣れだったということも原因として考えられるが、ワンオペを任せられる力量が足りていないだけなのか。それとも恒常的にオペレーション力が落ちているのか。
もう一度食べて比較した方が良いかとも思ったが、次もぬるいラーメンに当たると心が折れてしまいそうなので考え中だ。

なんか人気のラーメン店って、みんな同じパターンで閉店していくのだよね。個人店でもチェーン店でも同じ具合にだ。客の期待値を見誤ると簡単に苦境に追い込まれるのが外食業なのだが、それが見えなくなるのは何故なのだろうか。不思議だな。

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