街を歩く

濁り酒とイカメンチ

昔は甘いからと言って嫌っていた濁り酒だが、最近は妙に気に入っている。濁り酒を置いている居酒屋はあまり多くないので、メニューに濁り酒を見つけるとついつい注文してしまう。濁り酒は悪酔いすると、若い頃先輩に忠告されてそれを信じていたが、どうやら騙されていたらしい。
飲み口が甘いからついつい飲みすぎるというのが、悪酔いするという根拠ではないか。普通の日本酒と基本的に発酵の工程は同じはずで、最後の濾過工程の有無が清酒との違いだろう。だとすれば、アルコール度数が高い(清酒は水で調整する、薄める)こと以外に、おかしな成分が入っているとも考えにくい。
夏であれば「本直し」、焼酎のみりん割りを冷やして飲むのも良いが、よく冷えた濁り酒をちびちび飲む方が好みだ。プチプチする炭酸抜きで「冷たくて甘い酒」をたのしむのが、オヤジの嗜みだろう。

甘い酒のつまみは、熱々でジュワッとした揚げ物が似合うと思う。津軽地方のソウルフード、イガメンチは、実に好ましい。イカのゲソとキャベツが具になっただけの餃子みたいな食べ物だが、手作りコロッケに匹敵する揚げ物系「酒の肴」の王者だ。
鶏の唐揚げがビールとの相性抜群なように、イガメンチは日本酒に合う。(個人的な見解です)
ところが、この津軽の郷土料理を食べられるところは実に少ない。これが食べたいがために一年に一度弘前詣をするくらいの好物だが、お江戸でイガメンチを見かけたことがない。ちなみに、青函海峡文化圏である北海道南部でもこの料理はおめにかかったことがない。
ただ、それに似たものがチェーン居酒屋のつまみにあるのを発見して、最近はよくお世話になっている。おそらくこれはイガメンチではなく、そのインスパイア系アレンジなのだ。だから、名前も「いか」メンチだし。
文句を言っているわけではない。存在自体がありがたい。ぜひ定番として継続して欲しい。できればスーパーの惣菜コーナーで販売されるほど一般化して欲しい食べ物なのだ。

イカメンチを食べて、もう少しつまみをと思い頼んだのが「もつ煮込み」だったが、味はまずまず。ただ、量がね………
これはお通しですと言われると、なるほどねと納得するくらいの量だった。よく行く焼き鳥屋で出てくるもつ煮込みは、これはご飯のおかずです、もつ煮込み定食ですと言われても通じる大盛りのことが多い。一人で食べ切ると、焼き鳥が注文できないくらいの量だ。
それと比べると、都会的というかお上品というか、いや、あえて言ってしまおう。これではぼったくりだろう、と。
入れ物と比べて見るとわかる。よくトンカツ屋で出てくる、一人前のゴマをする超小型すり鉢だ。スプーンもティースプーンだから大きさの比較はしやすい。
確かにこの店はオヤジの一人飲み客が多い。だから、腹がいっぱいになる程の量でもつ煮込みが出てきても困る客が多いかもしれない。量は少ないとしても、お値段は安いのだから仕方がないのか。このあたりは個人それぞれの感じ方なので………

まあ、チャチャっと飲んでさっさと帰るには都合が良いのであります。

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