
小樽の名店で昼酒を楽しむ話の続きになる。前回来た時は雪の中の小樽だったが、今回は春にはまだ早い寒風吹き荒ぶ日だった、世間的には花見に行こうと騒がしいが、これでは5分で凍えるぞと思っていた。北国に春の訪れは遅い。夏が来るにはもっと時間がかかる。

以前から気になっていた「蕎麦もやし」のおひたしを頼んでみた。スプラウト系サラダにはたまにはいっている蕎麦の実もやしだ。蕎麦の打足がかかっているので、サラダというよりおひたしだが、蕎麦を食べたという実感はない。青臭い野菜の葉が際立つ食べ物だった。もやし感は全くない。蕎麦の実を買ってきて自分で育ててみようかと思うていどにはうまい。デパ地下の八百屋に行ったら売っていそうな気もする。もう少し大量にバリバリ食べてみたい。ごま油と酢で食べるとうまそうだ。

前回のカレー丼を注文するときにいちばん迷ったのがカレーせいろだった。地元の名品「武蔵野うどん」ではつけ汁として肉汁(豚肉の醤油味)が一般的だが、代わりつけ汁としてきのこ汁、鳥汁がある。しかし個人的にいちばん好きなのがカレーつけ汁で、そこからの連想でカレーせいろは絶対美味いはずだという思い込みがあった。
カレー丼を食べて、その思い込みは確信に変わっていたから、今回の注文はカレーせいろ一択しかない。

決して団子になって持ち上がることがない
予想通りの絶品だった。玉ねぎの甘みがカレーライスのルーを思い起こさせるが、やはり蕎麦屋のカレーは別次元の旨さだし、このカレーつけ汁はその蕎麦屋のカレーを超えている。蕎麦もうまいがつけ汁が絶品すぎる。つけ汁だけ別売りしてほしい。
おそらくこのつけ汁はカリカリに焼いたバゲットによく合う。厚切りトーストの中をくり抜いて、そこに流し込むとゴージャスなランチになりそうだ。とんかつをつけて食べるのも旨そうだし………と妄想が止まらない。
世の中にはまだまだ食べたことのない名品があるのだと、またもや思い知らされた。お腹をぺこぺこにして、大盛りのカレーせいろを頼み、申し訳ないが普通の蕎麦つゆを追加で注文する、というやり方がよさそうだ。カレーつゆと普通の梅雨を楽しみながら、締めの蕎麦にする。となると、流石に昼酒とはいかないので、夕方に準備万端整え、気合十分でそば屋での好物殲滅戦に挑む。
これしかあるまい。(武士モード)