
地元駅の商店街のはずれにあったおしゃれなカフェが閉店してしまった。どうやら、跡地はパン屋(ブーランジェリー)になるらしい。たまに店の前を通ると、女性客でいっぱいでなかなか気後れして入れなかったが、いつかは入ってみたいと思っているうちに閉店してしまった。「思う」だけではいけないなあ、と後悔している。
この商店街からすぐそばにあった至極の喫茶店もいつの間にか閉店していた。コロナのせいというべきなのだろう。談笑する場がなくなるのは、夜の業態だけではないということだ。コンビニの百円コーヒーも随分と品質が良くなり、車を運転しながら飲む分には実に満足度が高い。ただ、喫茶店やカフェはコーヒーの味を楽しむだけではなく、空間と雰囲気も味わうものだ。良質の時間の過ごし方が、また一つ失われてしまった。

しょうがないので、最近流行りの「おうち時間」とやらを楽しむことになる。いや、実際には全然楽しくないのだが、それを楽しいものと錯覚させる小道具をあれこれ探す羽目になる。そんな不毛な探索の結果が、これまた自宅近くで発見した1/4カットの「ピッツァ」だ。ピザではなくピッツァなのですよ。
既にホールサイズのピザは500円が事実上の標準価格で、その上に1/4カット売りがこれまた定着してきたようだ。おまけに、ビニール袋の簡易包装になってきた。もはやピザに高級感はいらない。並のパンと同じ普及品となったというわけだ。
背景は「おうち時間」の拡大のせいだと思う。この2年で家庭内消費としてテイクアウト需要が外食を押し退けて伸びた。その増えた分が、販売数が損益の境界線スレスレで儲からない「ピザ」カテゴリーを押し上げた。ようやく販売数増加で儲かるようになったのだと思う。ピザの人気で増えたわけではなく、テイクアウト全体の増加のおこぼれで儲かるようになったと理解するべきだろう。
似たような話で言えば、カレーパンを2種類おく店が増えている。これも、カレーパンの総販売数が増えたせいで、バリエーション拡大を図れるようになったということだろう。近くのスーパーのインストアベーカリーでは「エピ」を2種類に増やしていた。バゲットをオリーブ入りと普通版の2種類販売する店も出てきている。ブーランジェリーなどのパン専門屋ですら、なかなかできない二種持ちだと思うが、それをスーパーがやり始めている。
近所を歩いているだけで、あれこれ発見し想像できるようになったのが、コロナ感染拡大の最大の恩恵のようだ。実につまらない能力を身につけたものだと、鼻で笑ってしまう。