
年に何回か所用で朝早くに渋谷に行く。商業都市渋谷は朝の目覚めが遅いのか、8時前では歩く人も少ない。渋谷駅の看板を写真に撮るには絶好の時間だ。日本で屈指の歩行者数の多い場所だけに、駅ビルや駅舎に貼られている巨大広告はその時期特有の「世のあり方」を映しているような気がする。一年前の広告物はオリンピックのカウントダウンだった。時代を映し出す醜い鑑と思うこともある。
配信型動画サービスが拡大し続けているのは、現在のテレビが機能不全に陥っているからで、有料動画配信サービスはその機能不全のテレビのエンタメ機能が置き換わったものだ。オリンピック前はコロナ批判を繰り返し社会に恐怖を煽り、オリンピックが始まれば手のひら返しで全局あげてのオリンピック礼賛に呆れ果てた。
だったらエンタメだけやっていて報道など偉そうな物言いはやめれば良いのだ。そもそも親会社の新聞社がオールドメディアで、機能不全どころか中立的な報道機能が崩壊しつつある。政府支持か反政府かに分かれたファンクラブの会報みたいなものでしかないだろう。だから、オールドメディアの子会社であるテレビ放送局は劣化バージョンの扇動しかできない。偉そうに人様に意見を垂れるより、視聴率稼ぎの芸能スポーツに特化して、沈黙すれば良いのだと思う。
出来の悪いエンタメ番組を垂れ流すテレビより、有料配信の質の良いエンタメに流れていく人が多いのは当然だ。ラジオがテレビに負けたように、テレビはネット配信に負ける。勝てるはずがない。要はまたもやメディアの世代交代の時期が訪れたということだろう。
在京局ではテレ朝やフジテレビがいくら頑張っても、所詮は日本ローカルだ。ディズニーという世界資本のエンタメ企業には勝てるはずもない。世界企業に対抗できるのは、国民から強制的に課金徴収している某公営放送だけだ。その某公営放送がある渋谷駅の広告がこれなのだから笑ってしまう。

渋谷のランドマーク、ハチ公が立つ駅前広場に面した東急百貨店も、ついに取り壊しが始まった。何年かすれば、高層ビルに置き換わるのだろう。渋谷は谷底の街で、その1番の底がJR渋谷駅だが、駅の周りの東西南北全方位で高層ビルが取り囲むようになる。だったら高層ビルの屋上を使って屋根でもかけて、渋谷の街全部を全天候型都市に変えて仕舞えば良いのに。空が見えない街は、渋谷ににあっているような気がする。

渋谷駅から北側に5分ほど歩き東急百貨店本店を超えたあたりが、渋谷という街の外れになるのだろう。その先は某公営放送の本局があるので、渋谷というより代々木になる。この渋谷の北側の端っこが、どうやら「奥渋」というらしい。街頭に奥渋と書かれた旗というか不思議な垂れ幕がたくさん下がっている。渋谷中心部はすでにほとんどビル化されているが、奥渋は低層階のビルが立ち並ぶ程度で、中には二階建ての住居も残っている。渋谷の辺境とでもいうべきだろうか。

そんなおとなしい雰囲気の町にかわるあたりにレストランビルができていた。各階ごとに特徴あるレストランが入っている。なんだかバブルの頃を思い出す、レストラン専門ビルだった。想像するに、これもビルが出来上がった頃にコロナの影響で用途が変わったというか、テナントが集まらなかった、みたいないわく因縁がありそうな感じだった。
壁面いっぱいを使った看板は、なんだか沖縄風で異国感がある。渋谷の街中のゴミゴミした感じとは、ちょっと色合いというかテイストが違う。センスあるというべきなのか。早朝だからイメージが湧かないが、夕方の薄暗くなったあたりに来ると、なんだか全然違う印象になるだろう。奥渋は朝しか訪れたことがないので、今度は夜にぶらぶら歩きしてみるのもよいかな。

最後に、とてつもなく気になった看板というか店舗がこの「ガガナラーメン」で、あたまのなかで???が爆発してしまった。ガガナとはなんなのか。そもそも日本語なのか。看板を見るとGaGana Ramen 極 とあるからには、どこかに普通のがガナラーメンを売っている店があり、そこと比べて極上品質だから、極ということなのだよね、それでどこが極みな訳?と聞きたくなる。謎だ。謎が謎を読んでいる。そして、奥渋にはこんな謎の店がゴチャマンとある。街自体が謎な存在だとも言えるか。やはり夜の奥渋ぶらり散歩は決行しなければいけないなあ。
渋谷は南側の桜ヶ丘あたりも謎が多いので、2回ほど夜遊びに来ることにしようか。