首都圏駅前でそれなりに集中出店しているラーメンチェーン「日高屋」の本拠地は埼玉県さいたま市にある。大宮駅前には集中出店もしている。埼玉県のラーメン屋と言っているわけではないが、なんとなく親しみはある。所沢本拠地の山田うどんと同じ程度には、埼玉の外食企業として存在感がある。その日高屋がコロナの真っ最中に新しい店を所沢駅前に開けた。以前の駅前繁華街にあった店が、ビルが建て替えになって引っ越したようだ。

高層マンションの一階という立地なので、黒と白のスタイリッシュデザインで、いつもの中華食堂という感じではない。ただし店内に入れば、何やら居酒屋風の壁のメニューが目立ち、中華食堂というより焼き鳥屋とか、オヤジ向け居酒屋の気配がぷんぷんするのがちょっと可笑しい。日高屋ファンには安心できる雰囲気を作ろうという意図はわかる。

メニューはタッチパネルで、非接触型サービスを意識しているのもわかる。ただ、使ってみると画面遷移があまりよろしくない。従来型の紙のメニューが実に見やすかっただけに、客の中では文句を言う者も多いような気がする。居酒屋もタッチパネルを導入した初代バージョンは、だいたい使いにくい。二世代目、三世代目でようやく使い勝手が良くなる。日高屋も早急に世代の進化を目指すべきではと思う。
また、おそらく設計段階で検討はしたと思うが、一人用カウンタの作り込みが全然できていない感が強い。席の間隔が狭すぎるし、テーブルの上も狭すぎる。カウンター以外のテーブル席の間仕切りも、そして運用の仕方もかなり問題があるように思った。ピーク時には客を詰め込みすぎる。間仕切りが機能しない。アフターコロナでは物理的な空間の確保と、それを確実に実施して客同士の安全な距離を担保するオペレーションが欠かせない。ところが、従業員の意識がそこまで達していない。コロナ前と同じように空いている席に客を詰めこんでは行けないはずなのだが。

料理を頼むと、記憶にあるより量が減っている。これは記憶違いかもしれないが、同名同価格で量を減らすというのは最悪のメニューいじりだ。常連の客ほど、この差を判別できる。少なくとも、この時期に「負の感情」を持たせるような変化はよろしくない。値上げをしたいのであれば、はっきりストレートにやった方が良い。個人的には量が減ってくれたおかげでジャストサイズにはなったのだが、そう考える客が多いとも思えない。

油そばを頼んだ。これはスープで誤魔化しが効かないから、日高屋ではちょっとチャレンジメニューだと思う。麺の茹で具合と湯切りの加減によって、味が根底から変わってしまう難度の高いメニューで日高屋向きではないはずだ。つまり失敗作にぶち当たりやすい、デンジャラスなメニューなのだ。そして、今回は悪い予感的中で湯切りができていない、丼の底に湯がたまる残念な結果になった。湯切りさえ上手にしてくれれば、予想外にうまい油そばになるのになあ。やはり安全牌のキムチチャーハンか野菜たっぷりタンメンにすればよかったと反省。まあ、日高屋はこうした日によってブレる部分も含めて、お値段と品質がバランスしているブランドだと思えば文句もないのだけれど。また利用させてもらうのは間違いない。
アフターコロナ対応は「もう一息」のような感じで、今後の改良に期待しましょう。