コロナ騒動の中、キッチンカーの話が「攻める営業」みたいな言い方で報道されるをの見るたびに、なんだかなあという違和感を覚える。キッチンカーで商売をするのは意外と大変なので、普通に考えれば移動販売より固定店舗で営業した方がよほどマシなのだが。

移動販売で売れるのはイベントなど大量に人手がある時で、通常のオフィス街でのランチ、弁当販売では相当苦労があるだろう。作りたてを提供するとして、1分間に一人のお客に対応でき、お昼のピークを30分から1時間程度で想定すると、売れる弁当?の数は30から最大100個くらいだろう。そうすると、弁当一個を高飛車な値段 1000円としても、昼の売り上げは3万円から10万円くらい。千円の弁当を100個も売れればなかなか良い商売にはなるが、実際にはいいところで5万円程度ではないか。となると、ひと月の稼働日数が平日だけとして100万円程度の売り上げになる。週末を休まずに他のイベント会場などに行けば、月間合計売り上げ200万円くらいだろう。(自営なのでブラック労働・営業などという考えはないとして)それで手元に残るのはどれくらいなることか。
通常食材原価は3割台だが、千円弁当を大量に売るためにはお得感が感じられるように原価は高めにするはずだ。後は、キッチンカーの償却と(ローンで借りていればその返済)、アルバイトの人件費などが大まかなコストになる。場所によって地代というか借地料を払う必要もある。夜の営業は考えにくいので、ランチ一本にするとしても、仕込みをする場所は必要だし(車内では水回りの問題があり難しい)、ランチに間に合わせるには朝の5時くらいから仕込み作業が必要だろう。ざっくり考えても1日12時間労働になる。
などと詳細を詰めていけばいくほど、キッチンカーは面倒臭い仕掛けになる。おまけに、保健所への申請は必要だし、勝手にどこかに止めて路上営業すればすぐ警察に捕まる。
三菱自動車のキッチンカーの偽物(壁に貼り付けてある)を見ながら、飲みに行く前に真面目に考え込んでしまった。コロナで店に客が来ないからキッチンカーで売り込みに行くなどというのは、あまりに実態を知らないマスメディアの幻想、思い込み、そして嘘ではないのかなあなどと思ってしまう。ちなみにこの手のキッチンカーは車体が300万円程度、改造費が設備にもよるが2−3百万円はかかるはずだ。大型のトラックの改造だと一軒の店が開けられるほどの、2000万円近くかかる。キッチンカービジネスは低額投資で開業など実際にはありえない。キャンピングカーで日本一周の方がよほど実現性がありそうだと思うが。