街を歩く

一人飲み 日本蔵元酒直営店

うまい酒の飲み方には二通りあると思う。一つ目は良き友人とうまいものを食べながらあれこれ話をしていく中で飲む酒だ。歓談、お話が中心で酒がその脇役という格好になる。もう一つは、一人で好きな酒を好きなだけ好き勝手に飲むという「一人酒」で、これは酒が主役になる。どうも歳をとってくると、周りの意見を聞きながらの歓談が億劫になってきて(要はわがままになり、俺の話を聞け、嫌なら帰れみたいな、昔は大嫌いだったジジイ特性が自分の中にも出てきたらしい)、うまい酒が飲めれば会話などいらない気分になることが多い。この一人沈黙モードが楽しめるようになると、もはや立派に人生の黄昏ステージと言える。

千歳鶴の樽酒

札幌の千歳鶴ブランドは酒を始めて飲んだ時からずっとお世話になっている。元は札幌酒造、それが日本製酒という会社になり、東日本の日本酒シェアの大半を占めていた時期もある。今は札幌で日本酒を頼むと、全国の地酒が選べる良き時代だが、やはり千歳鶴が一番気分的によろしい。一号升に盛り塩で飲むというストロングスタイルでまず一杯。

ニシン漬け

酒の肴には、この時期限定の自家製ニシン漬け。ザクッと切った大振りの大根がうまい。身欠にしんから出た魚くささがうまさの源泉だ。千歳鶴を飲む時は、季節の魚の刺身とかエゾシカ肉の炙り焼きとか、そんなごちそうはいらない気がする。すけそうだらの鱈子を甘辛く煮たものとか、ニシン漬けとか、そんな素朴の料理が似合う。焼き鳥だったら、もも肉タレで焼いて唐辛子たっぷりみたいな感じだ。北海道的には豚精串みたいな、野蛮な食い物が良いとも思う。だから、直営店に置いてある千歳鶴の高級大吟醸シスターズには、どうにも注文する気が起きない。(千歳鶴大吟醸は間違いなくうまいのですよ)

酒と魚を堪能できる造り酒屋直営

杉玉がぶら下がる入り口の暖簾をくぐる時、今日は何を飲もうかといつも考えるのだが、結局注文するのは樽酒か熱燗、それも普通酒になる。酒の等級でもなく、味の良さでもなく、同行者への気兼ねもなく。自分の好みだけで選べるのが「一人酒」の良いところだと・・・。そういえば、この店では外国人客に会ったことがない。

多分日本酒のラインナップが難しすぎるのだろうな。

食べ物レポート

福鳥本店 焼き鳥屋ってこうなんですよ

焼き鳥という業態は一体何時ごろからあるのだろう。
とりあえず知っている焼き鳥屋で一番古いのはこの店だろう。狸小路とススキノに挟まれた南三条通(札幌)は、昔から小体な店が開いては消えする不思議ストリートだ。消滅する店も多いが、アップグレードして引っ越して大店になることもある。そんな三条通の老舗焼き鳥屋福鳥の横は、札幌最強の焼き鳥チェーン「串鳥」が並んで営業中。若い人は串鳥派が多いようで、高齢者は福鳥へ。客層の棲み分けと言えば聞こえは良いが・・・。

昭和21年創業か、闇市があった時代

福鳥の焼き鳥は一皿の量が多い。一人で行って二皿注文したら持て余す量だ。もつ焼きやであれば「タン」を頼むのも良いが、札幌ではもつ焼きと焼き鳥の区別は明確ではないので、福鳥のタンはあくまでも焼き鳥屋のメニューということだろう。もつ焼きやのタンといえば、厚さ5mmくらいに薄切りにしたタンが横から串が刺さっているというイメージがある。(要はペラペラな焼肉状だ)福鳥のタンは、串焼きという形状ではない。なんというか、一番近いのはバーベキューの串?だろうか。厚みのある肉をもぐもぐと食うのは良いのだが、どうも調子が狂う。

豚のタンを金串で

この時期にうまいのはニシン漬けで、キャベツとにんじんと大根と麹の漬物だが、アクセントというか味付けで身欠ニシンが入っている。昔はどこの家庭でも冬になる前には漬物をつけらていたものだが、今や絶滅危惧種で、ジジイたちが懐かしがって食べる滅びゆく郷土食だ。昔は金持ちのうちでは野菜と同じくらいたっぷりと身欠ニシンが入っていた。貧乏人のうちでは身欠きニシンは探しても見つからないくらい少量しか入っていない、階級差の目立つ食べ物だった。漬物としては生臭く、かつ、麹のせいで発酵が進み急激に酸味が増していく。最後は漬物樽の表面があぶくでブクブクしていた。

懐かしのニシン漬け ニシン少なめモード

そんな野蛮な食べ物はスッカリ消滅して、今や工場製で安全管理のしっかりしたニシン漬けしか売っていない。自家製だと酸味が増す過程が楽しみなんだがなあ。北海道の秋の風物詩、漬物漬けももはや見ることができないから、せねて焼き鳥屋で食べることになる。

工場製のニシン漬けを賞味期限無視で冷蔵庫内で保存しておくと、実は酸っぱいニシン漬けの再現が可能なのだよ。ただし、発酵と腐敗は紙一重、自己責任でね。