食べ物レポート

渋谷で日本酒を

お通しは味噌汁 汁物で酒を飲むのはとても好ましい

渋谷で友人と飲んだ2軒目が、奥渋というか松濤方向にあるこぢんまりとした店だった。居酒屋というより小料理屋という雰囲気だが、おそらく日本酒バーと考えた方が良いのではと思う。
酒の種類は多い。お江戸の日本酒バーにありがちな東日本偏重ではなく、西日本の酒もそれなりに用意されている。関西では灘、伏見の酒メーカーが巨大化して全国ブランドになっているが、実はそこそこの数の地酒・蔵元がある。大阪の居酒屋では当たり前に存在する「呉春」という酒が、お江戸ではほとんど見かけない。関西系の日本酒はもう少しお江戸に入ってきて良いのではと思うが。
かといって大阪でも、福井から松江にかけてにつながる日本海側の酒を見かけるかというと、それもまた稀なことだ。良い日本酒バー、日本酒専門の店では店主のこだわりが酒の銘柄に現れるが、そこにも店主の出身地などを含めた地域差があるような気もする。
この店は、九州の酒も置いてあるという懐の広さだから、これまで飲んだことのない酒を目当てにまた訪れてみようという気になった。

おまかせの5点盛り トマトが気に入った

料理のメニューも豊富だった。あれこれ試してみたいと思ったが、二件目なので抑え気味に店主のおすすめツマミ五種盛りにしてみた。器も変化に富んだ身に優しい食べ物だった。この手の目によく映る仕掛け作りが、固定な店ではなかなかできていない。うまさ最優先みたいな店が多いのだが、そこは客が店を鍛えるべきなのだろう。見栄えで金を取るようになれば、店の力がついた証拠だと思う。

暑くなってきた時期だが、入り口の戸が開け放されているのは、おそらくコロナの後遺症だ。この店は開店直後を見計らって、もう一度行ってみたい。常連客が来る前にさっと入ってさっと飲んで退散するという使い方がよさそうだ。
若者の街渋谷で、ちょっと渋めの店があるのは嬉しいものだなあ。

食べ物レポート

近くの担々麺屋で見つけたこと

この界隈では老舗の風格だ

開店してから20年以上は経っていると思うのだが、バイパス沿いにある担々麺の専門店に年に何回か訪れる。担々麺は時々無性に食べたくなる不思議な食べ物だ。普通に中華料理屋に入った時には、メニューにあっっても食べる気にならない。なぜか、坦々麺は専門店限定で食べたくなる。
最近では本場に近い形で、痺れが強い味付けの担々麺屋が増えているが、この店は昔ながらの?あまり痺れないものと、ビリビリに痺れるものの両方を出してくれる。

外見は中華ファミレス風の食堂だが、中に入れば普通のラーメン屋と変わらない。多分、店主は代替わりしているようだ。一時期は餃子とかチャーハンとかメニューがやたら増えたが、また担々麺専門に戻っているからだ。この店の裏手にはファミレスがあったのだが、そちらはすでに2度ほど店名が変わっている。バイパスである交通量の多い街道沿いにある。ただ、ファミレスが多いわけでもないので、過当競争になる立地ということでもなさそうだが、ちょうど流速が上がる場所なのが飲食店には良くないのかもしれない。
コロナの間は、この人気店もガラ空きだったから、よく閉めないでいてくれたものだと感謝している。

基本的にトッピング違いの担々麺がメインで、それに味違い麺メニューがある。個人的には担々麺にトッピングを乗せてもねえ、という感じがあるので、注文するのはいつでもプレーンな担々麺だ。胡麻の味と辛さと濃いめのスープが好物だ。おまけに細めの麺がスープによく絡む。
ヒーハー言いながら辛い麺を食べ、箸休めにもやしを食べる。天国、天国と言いたくなる。四川料理は辛いというより痺れる料理だから、痺れという点で言えばこの店の坦々麺はマイルドだ。多分、その他の担々麺バラエティーの中には「痺れ強め」なメニューがあるはずだが、面倒くさがっているので試してはいない。

見た目は実に正統派な坦々麺に見える 味は、まさに正統派の日本風坦々麺でうましだ

麺を食べ終わった後にスープの底に沈む挽肉炒めを掬って食べる。この時は、麺料理からスープ料理に変わっているので、一度食べる間に二つの楽しみ方がある。これが正しい担々麺だろうと勝手に思い込んでいる。坦々麺と言いながら挽肉炒めが少ない店もあり、そういう店では2度と担々麺を頼まないことにしている。(担々麺以外でも美味い麺料理はあるからそれで良いのだ)

今回の発見になるが、通常の店で追加で入れるラー油とお酢は小瓶に入っていることが多い。手抜きの店だと市販にラー油をそのまま置いてある。ところが、この店では自家製ラー油をスポイトで吸い取って入れるのだ。これはこれまでみたことのない提供スタイルだった。
スポイトを使うと量の調整もしやすい。よくあるラー油の小瓶だと垂れた油で瓶本体がベトベトしているのが嫌いなのだが、これだと手が汚れる心配もない。スポイトの掃除はどうするのかとか余計なことを考えてはしまうが、このアイデアは素晴らしい。レストランビジネスはこうした小さな積み重ねで進化するのだよな、などと感心してしまった。考え出した人、偉い。

街を歩く, 食べ物レポート

渋谷で立ち飲み そこは聖地だ

渋谷といってもJR渋谷駅から国道246を渡った南側の一帯は、ちょっと雰囲気の違う区画で、渋谷特有の猥雑さみたいなものとはいささか異なる風情がある。春には桜が満開になる坂道を登ったところに、目立たない看板がある。
よく見ないとそこが居酒屋だとはわからない。ビルの脇にある駐車場的なスペースにも立ち飲み用のテーブルが置いてある。これからの時期は暑さが大変だという気もするが、コロナ対策の名残りなのか外で飲みたがる客が多いのだろう。まあ、それはそれで客の好みだからな。自分としてはエアコンの効いた店内で飲みたい。

テーブルの上にはQRコードが入ったスタンドがあり、これをスマホでかざすと注文ができる。周りを見ていると、ある程度の年代層(若目のグループ)には、スマホで注文してくださいね的な一言がある。ただ、年配者対応なのか紙に書いたメニューもしっかりおいてあるし、スタッフに声をかければ口頭でも注文ができる。
まだ、完全に非接触型への移行は完了していないようだ。まあ、あと5年もしないうちにキャッシュレス・スマホ注文は定番になるだろうが、その頃には団塊世代も後期高齢者で在宅生活になるだろうから、大きな問題も起きないに違いない。

切っただけではない お仕事がされている 「刺し盛り」

立ち飲み居酒屋といえば、焼き鳥屋おでんと言った簡便食が中心だと思っていたが、なんと本格的な刺身の盛り合わせがあった。これはレベルが高い一品だった。そこらの「座れる居酒屋」でも、このレベルでの刺し盛りはなかなかお目にかかれない。チェーン居酒屋のなんちゃって刺身盛りあわせとは雲泥の差だった。
最近ではイカとかタコが高級品化しているし、刺身といえばサーモンみたいな時代なので、この組み合わせは実に珍しいと思う。
そもそもこの立ち飲み屋は、由緒正しい昭和の立ち飲み屋だったものだが、地域の再開発に伴い閉店していた。昨年、場所を変えて再開したのだが、昔懐かしのメニューは残しつつ、新しい時代感覚のつまみもあれこれ増えている。

何か珍しいものがあればと友人が注文したのが、いちじくの白胡麻和えで、見た目だけでは何が出てきたのかわからない。鳥もも肉のマヨネーズ焼きも似たようなルックスになる気がする。
ただ、これは見た目からは想像できない名品だった。おろし胡麻に絡んだいちじくのほんのりした甘さは、辛口の酒に合いそうだ。最近、果物をソースに使ったり具材に使った料理に関心があり、メニューにあれば注文してみるのだが、ハズレの品に当たったことがない。やはり果物料理は調理人が相当な力を入れて開発するせいだろうか。干し柿とカブとへしこ(塩サバ)の和え物は実に記憶に残る美味さだった。りんごの入ったポテトサラダもうまいと思う。メロンの生ハムかけは有名だ。
最近では居酒屋巡りの楽しみが変わってきた。「酒」よりも「果実料理」の方が気になるというのは、何か重大な体の変化の兆しらしい。つまり、歳をとったということですねえ。

食べ物レポート

カツカレー 1000円時代

独特のスパイス使いで、あえてバランスを少し崩している気がするが、そこがプロ仕様なのだろう

どうにも昭和と平成の時代感覚を尻にぶら下げているせいか、飯代の常識が30年値上がりしなかった平成に固定化されてしまっている。それを一言で言えば、ラーメンとカツカレーが1000円を超えると、その途端に買う気がなくなる、食べる気も失せる。閾値(しきいち)とはある点を超えると途端に反応が始まる境目のような意味だが、食べ物に関してはある価格を超えると購買意欲が激減する「飲食閾値」のようなものがあると思う。この見極めが飲食店での値付けであり、売りたい相手・客層を選ぶ第一歩だ。
街中にあるカレー専門店ではカツカレーの値段がとうの昔に1000円越えしていたようだが、カレーのチェーン店ではまだ1000円越えをしないで頑張っている。街の洋食屋でもかなりの店がギリギリ1000円を超えないように踏ん張っている気がする。税込950円とか、税別880円見たいな値付けだ。同じ価格帯にはナポリタンとか、エビピラフが並ぶ。そんな店でも、オムライスになると1000円を超えるから、洋食店でのオムライス、ナポリタン、カツカレーのヒエラルキーというか階層順位がよくわかる。カツカレーはメニューランキングでだいぶ下の扱いだ。それがちょっと悲しい。

お手軽なカツカレーが食べられるといえば、カレー専門店よりも牛丼御三家の方が使いやすいと思う。牛丼店は店舗数も多く、入りやすい場所にある。牛丼最大手のカツカレーは食べた記憶がないが、他の2社ではなかなか個性的なカレーがありバリエーションも豊富だ。おまけに価格が限りなくワンコインに近い。1000円越えあのカレーが出現しそうにない安心感がある。
その「お宝」カレー売る牛丼チェーンの一つが、カレー専門店を展開している。このカレーが牛丼屋のカレーよりもこれまた個性的ですごいものだ。ルーに加えているであろうスパイスの匂いが独特で家庭的なカレーとは一線を画す。好みは分かれるところだが、カレー道入門者にはちょっとレベルが高いかもしれない。ちなみに、某カレールーメーカーが展開するチェーンカレー専門店は、実に素直な味で万人受けするが、凄みはないのと対照的だ。
そして、一番すごい(と思うのだが)のが、その低価格だ。カレーのトッピングにより値段が変わるシステムなのだが、カツを乗せたものが一番低価格に設定されている。
カツはちょっと小さめだが、カレーの量とのバランスはこれくらいが正しい。たまに、ルーが少なくカツが大きすぎる店にぶち当たることもあり、この時はカレーではなくカツライスを食べている気がするので、カツの量が多すぎるのはいささか問題があると思っている。
このカツカレーのビジュアルを見ると、カツはおまけ、ルーが主役というのがよくわかる。最近ではレトルトカレーの品質(と値段)が向上しているため、昔ながらの自宅のカレーの味ではなく、ブランドと商品による好みが定着しているかもしれない。自分の好きなのは、〇〇カレーの中辛だ、という感じだろう。ただ、トッピングを含めたバリエーションも楽しもうとすると、カレーは家庭で食べるものではなく、カレー専門店で食べるものになっていくのかもしれない。インスタントラーメンとラーメン屋のラーメンのような棲み分けの時代が到来したということで、うちのカレーはね………という会話が昭和・平成と共に消え去るのだなあ。いと哀れ、なのであります。

食べ物レポート

自分への土産物

北の大地に旅をすると、いくつか買い込んでくるものがある。お土産というより自分向けのストック商品が多い。昔はジンギスカンのタレを大量に買い込んでいたが、最近は首都圏のスーパーでも手に入るようになったので買い物リストからは除外した。今でも買い出ししているのは、ジンギスカンのタレ風の「しゃぶしゃぶのタレ」で、これは有楽町のアンテナショップでもたまに買えるが、個人的にはほぼ万能調味料扱いなので、最低限3本はストックしておきたい。なので、定期的に現地調達している。
セイコーマートのPB商品である「ミルクコーヒー飴」も買ってくることが多い。セコマは埼玉県にも支店があるので、乾物飲料系であれば手に入るのだが、残念ながら最寄りの店舗まで車で1時間近くかかる。だから軽めのものは現地調達することが多い。さきイカにチーズがコーティングされた、チータラのイカ版は土産に渡すと喜ばれる。セコマ最強PBはメロン味のソフトクリームだが、これは持って帰るのが難しい。首都圏のウェルマートで業務提携しているらしく、セコマPBが手に入ることもあるのでたまに利用する。

土産に頼まれるものは大体が甘いものになる。カニやイクラなどの生ま物(?)は頼まれても宅配便で送ってしまうことにしている。荷物の軽量化は大事な旅の掟だ。
お土産に希望されるような名物は空港で買えるものがほとんどだが、時にはローカルな街の名物を調達しなければいけないこともある。十勝であれば、スイートポテト(それも重量で値段が決まる量り売り)が現地でしか買えない名品の最たるものだ。これを買うために何度か寄り道をしたぐらいだ。ただ、自分への割り当ては極めて少ない。あくまで贈呈用の一品だ。
北の軍都であれば、リンゴが丸ごと一つ入ったパイがおすすめだが、これも現地でなければ手に入らない。最近はテレビで報道されたせいで通販でも品切れが続いているようだ。とてつもなくうまいプリンもあるが、こちらは通販で買えるようになった。プリンは冷蔵品だし、なかなか重たい荷物になるので、土産扱いにはしていない。1-2個を自分が食べるために買うくらいだ。ラーメンでも有名な街だが、個性的な銘菓が多い。動物園を見に行ったついでに、あれこれ買い集めるのが良いかもしれない。
たまたま軍都の名物焼き菓子を土産に注文されたので、どこにいけば買えるかとネットで調べてみたら、なんとJR駅前の物産館で売っていた。空港の中で探すのはなかなか大変だが、駅の物産館はコンパクトでわかりやすい。すぐに見つけたが、なんと味がわりで3種類ある。どれを買えば良いか問い合わせをすれば良いのだろうが、面倒なので全種類買ってしまった。

食感で売るという、かなり斬新なコンセプトだが名品に違いない うまいぞ

その注文された焼き菓子を手渡してから、ふと自分でも食べてみたくなった。すでに土産として渡したものを、一つでいいから自分にもくれないかと頼めるはずもなく、その時は諦めた。次に行った時に自分の分を調達しようと決めた。それが、この焼き菓子だった。サイド買いに行って気がついたのだが、一枚ずつばら売りしていた。最近の土産物屋はこのバラ売りシステムを採用しているところが増えたが、実に客目線で宜しいサービスだ。
さてどんな味だろうと一枚食べてみると、柔らかいクッキーというのが最初の感じだが、商品にはクッキーではなくサブレーと書いてある。サブレーの定義はよくわからないが、なんとなく硬めの焼き菓子というイメージがあるので、このふにゃっとした食感は意外だった。生地の甘さは控えめだが、その中に柔らかいチョコレートが練り込まれている。
チョコチップの入ったクッキーがとても柔らかくなったというか、ぐずぐずに湿気った食感というのか。甘さのバランスも良いが、最大のセールスポイントはこの一風変わった食感だろう。ホワイトチョコ味は食べなくても想像がついてしまう。サイトを見てみたら季節限定品も売っているようだ。次回は季節限定品を試してみよう。

この焼き菓子をもぐもぐと食べていたら、東京大好きな元・上司が銀座以外の菓子屋なんて…………という大差別発言をしていたのを思い出した。全国各地の菓子職人たちが銀座には売っていない(おそらく発想もできないから作ることもできない)、ユニークな名品を生み出しているのだが知らないのか、と反発していた。
たまたま出張の土産にフランスで有名なお菓子を買っていたときも、この店は東京にもあるのに………と馬鹿にされた。東京にあるのだから珍しくもないと言いたいようだった。
フランスの店と東京の店で売っているものが同じ商品だと思う神経がよくわからない。原材料を全てフランスから輸入したとしても、調理機器を全て輸入品にしたとしても、水が気温が湿度が違う以上、同じものになるはずがないだろう。おまけにフランスの小麦は一般的な輸入品ではない。味をよくしようとカナダ産小麦などの北米もの小麦に変えていたとしたら、東京製はフランス製と根底から変わってしまう。同じミルクやバターをフランスから安定的に輸入できるかというともっと疑問だ。日本にある「商品」は名前は同じであっても、限りなく現地のものに似せているが、あくまで似せているだけの「偽物」でしかない。(ただ、偽物であっても上手いのは間違いないと思う)東京で売っているものは、ブランドラベルだけ本物、中身は別物という認識ができないのだろうか。業界人としての見識を疑ってしまう。などと、心の中でぶつぶつと呟いていた。(こっそりとぶうたれていたが、あくまで心の中だけですよ、だって、上司ですからね)

こういうローカルな名品に出会うたびに、その時のことを思い出す。熱烈な東京崇拝主義は、それに反発する過激な地元礼賛主義を生み出すものだ。地方と中央という対立構造は案外と食い物の恨みから生まれているのかもしれない。個人的には、お江戸も巨大なローカル都市だと思っていますから、ありがたみなど感じていませんけどね。

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連休の昼飯

見た目重視の冷奴ということか

毎月恒例で出かける満洲の月替わり商品探索だが、ここ数ヶ月は好みのものが出現せず、自分としては不作感があった。それでも5月はよだれ鶏と豆腐(冷奴)というサイドメニューが登場して、これはどんなものかなと食べにいったのだが、ちょっと味のインパクトは薄めだった。
おまけにゴールデンウィークを舐めていたので、昼の1時過ぎに行ったにもかかわらず店内はほぼ満席で、おまけに注文を取る暇がないほど忙しいらしく、豆腐だけ食べて出てきた。
この3年間で一番混雑している日に行ってしまったようだ。やはり、満洲は平日の午後に行くのがよろしいと反省した。

一番簡素なつけ麺標準タイプ 麺を小にしておけばジャストサイズだった

店を出た後、流石に豆腐だけの昼飯はダイエット強化中でなければしんどいので、近くのつけ麺屋に行くことにした。こちらは、昼の一時をすぎると程よい混み具合になっていて、さほど待つことなく定番つけ麺が出てきた。
何も考えずに券売機でつけ麺を選んだのだが、あとから気がついたのが「麺の量」の選択間違いだった。つけ麺屋は大多数の店で麺量が多い。普通のラーメンで言えば5割増から倍量くらいに麺が増量されている。この店も、いわゆる普通盛りが麺量5割増だった。目の前に出てきてから、あちゃーという気分になったが、これは完食するしかない。
まあ、想定通りだったが、半分食べたあたりで厳しさを感じ始める。まだいけるはずだが、満腹中枢が危険信号を発している。おまけに、だいたいこの時点でスープの温度が下がっている。不味いとは言わないが、熱々のスープとは味の感じが違ってくる。冷めたスープでは麺がもたれる感じになる。
こうなると、時間をかけず一気に口の中に放り込むしかない。しかし、それが「食」を楽しむではなく、「生存のための給餌」的な感覚になってしまうのがどうにも悲しい。
つけ麺を頼むときは、麺量注意なのだが、ここしばらくつけ麺屋に行ってなかったせいもあり、不用意な選択(選択を忘れた?)をしてしまった。それでも無事完食したが、腹が膨らみすぎてすぐ動く気にもなれず、しばらく食休みをしていた。
先ほどいた店であれば、あの混雑ぶりの中で食休みなどできなかったなとホッとしていたが、よく考えれば、食休みが必要なほど大量に食べることもなかったはずだ。混み合っている店では注文ができず、空いている店では食べ過ぎで苦しむ羽目になる。どっちが良かったのか。
人生、あれこれ起きるものだ。

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冷やし中華の季節が来た

今年は幸楽苑の冷やし中華でスタート

5月になると気温が上がる日が増える。飲食店でも初夏向け商品が並び始める。温かいラーメンのルックスは、基本的に平面だし色味にも欠けることが多い。めんまとチャーシューは同系色で、味噌ラーメンともなれば全面的に茶色になる。色味を加えるにはゆで卵の輪切りで黄色と白などが簡単な変化になるが、味と食感で言えばなんだかなあという感じだ。
ところが、冷やし中華となるとその貧しい見栄え事情が一変する。まず平皿に盛り上がった麺の立体感が魅力的だ。その上に、色とりどりのトッピングが乗る。赤、白、黄、緑と色の変化がこれまたゴージャス感を盛り上げる。実に素晴らしい。おまけに味付けが自分好みの酸っぱい系つゆなのだから文句をつける部分がない。
毎年、その年初めての冷やし中華を食べると、今年の夏は何回冷やし中華を食べるだろうと思うのだが、数えてみたことはない。ただ、自作して食べる冷やし中華を加えると50回くらいは食べている気がする。特に気温が上がる時期には、冷やし中華とそうめんの超ヘビーローテションになる。家人にはよく飽きないねと言われるが、麺類は好物中の好物だし、気温と麺の関係で言えば暑い時期の冷やし中華こそ「麺類の王」とまで言いたい。
とくに、醤油系のシンプルな味付けと胡麻味のつゆバリエーションがそそる。そして追いがけして使う柑橘系果汁との組み合わせは、レモン・酢橘・カボス・ゆず・シークワーサーと最強ラインナップが揃う。つゆと果汁とトッピングの組み合わせはほぼ無限だ。
薬味に至っては絶対定番の紅生姜を筆頭に、山椒の実やミョウガの細切り、大葉やなどの香味野菜、それに加えて変わり種でバジルの葉なども楽しみだ。また、辛味としては定番の和芥子の代わりにタバスコソースなどの酸っぱい辛い系洋風ソースも捨てがたいし、最近の好みで言えば山ワサビ(ホースラディッシュ)もワイルド系スパイスではおすすめ筆頭株だ。

幸楽苑の餃子はmちょっと変わったような気がするのだが……気のせいか

普段はラーメンの付け合わせとしてあまり注文しない餃子だが、冷やし中華となればついつい注文してしまう。「熱」「冷」のコンビがこれまた嬉しい。餃子は冷やし中華との食べ合わせを考え、浜松式の「酢+こしょう」で食べることにした。ただし、最後の一個だけは醤油+ラー油にする。
冷やし中華発祥の地と言われる仙台で、それも元祖の店で冷やし中華を食べたことがあるが、流石に元祖だけあり「お手軽系麺類」ではなく、冷たい中華料理としてしっかりしたものだった。ちょっとかしこまって食べたが、冷やし中華は夏の大衆食筆頭格だから、あまり気取らずにガシガシと食べるのが良い。仙台の違う中華料理屋で食べた細切りチャーシュー山盛りの冷やし中華は、まさに大衆のご馳走だった。
気温がもっと上がってきたら、食べる前に生ビールでプハーっというスタイルもありだし。食で季節の到来を知るというのはありですねえ。

食べ物レポート

老舗で食べるチープ

この店の創設者、おっちゃんの訃報を聞いたのは去年のことだっただろうか。たまに無性に食べたくなる「お好み焼き」だが、北海道にお好み焼き文化をもたらした功労者は、間違いなくこの店のおっちゃんだったと思う。店名に書かれている「北海道のお好み焼き 風月」が全てを語っている。この店のお好み焼きは東京のお好み焼きとも大阪のお好み焼きとも微妙に異なっている。
昔聞いた話では、創設者のおっちゃんが確か関西のどこかから北海道に流れてきて、ふと思いついて始めたのがお好み焼き屋だったそうだ。関西でお好み焼き屋をやっていたわけでもなく、記憶にあるお好み焼きを見よう見まねで売り始めたというような話だった。当時は小体な店で安いお好み焼きを目当てに高校生が集まる濃い店だった。焼きそばも売っていたが、そちらはあまり美味いものだったという記憶がない。ただただ量が多く、腹ペコの時はありがたかった。
お好み焼きもセルフサービスな自分で焼いてねスタイルだったから、上手く焼けていない(生焼け)のお好み焼きもたまに食べてしまった。初めて関西の「鶴橋風月」でお好み焼きを食べた時に、これは別物だと思った。それくらい「北海道独自な」お好み焼きだったのだろう。
そもそも「風月」という店名も相当に……………なものだが、大多数の北海道風月愛好者は、大阪にも風月ってあるんだと思っているはずだ。

このコテを持ったおっちゃんが創業者であることはわかる。ただ、自分たちの相手をしていた頃は、いつも競馬新聞を片手にぼーっとしていた。ぼーっとしていたのではなくラジオの競馬中継を聞いているらしいと聞いたこともある。注文すると、アーともウーともいえない返事をしながら、焼きそばを炒めたりお好み焼きの仕込みをしていた。
ただ、それからしばらくすると街のあちこちに支店が増えて行って、お好み焼きといえば風月となったのだから商才はあったのだろう。おっちゃんが社長になってから、たまにテレビで見かけたりするようになった。

しばらく行っていない間に、店内はおどろくほど情報武装化されていた。お好み焼きの焼き方もタブレットから動画で見ることができる。すごい進化だ。思わず、あのおっちゃんの会社が………と言いたくなる。この3年間の非接触営業推奨に対応したのだろうか。

出てきたお好み焼き(イカ玉)は、相変わらずのルックスだった。確かに創業56周年というのはすごいことだが、記憶の中にあるおっちゃんを思い出すと、やはり笑ってしまう。ちなみに喫茶店でコーヒーを飲むと200円の時代に、イカ玉は確か190円だった。お好み焼き一枚がコーヒーより安いのだから高校生が集まるわけだ。ついでに言えばラーメンが350円くらい、ハンバーガーが200円、瓶に入ったコーラ(200cc)が50円、アルバイトの時給は300-350円程度だったと思う。
豚玉はイカ玉より20円くらい高かったような記憶もあるが、そこは定かではない。えび玉が一番高かったはずだがその値段も思い出せない。全部入ったミックス玉もあったはずだが、高すぎて注文した記憶がない。

この半分焼けたところでひっくり返す時に、バラバラに分解してしまうことが多かった。だから、お好み焼きが丸く固まったまま焼き上がると、食べるのが惜しくなるほど嬉しかった。マヨネーズとソースという万能な味付けを学んだのも風月だった。
結果的には、流れものだったおっちゃんが味の伝道師として、北海道にお好み焼き文化を根付かせたのだから、その功績は(少なくとも)道民栄誉賞くらい差し上げても良い気がする。
今ではお好み焼き(イカ玉)もすっかり高級品になっていて、ラーメン一杯よりは高い。ハンバーガーだと4個は買える値段になっていた。ただ、こちらもすっかりオヤジになっているので、イカ玉とビールなどという大人な注文をして、今は亡きおっちゃんのことを思い出していた。「北海道のイカ玉」うましだ。合掌。

街を歩く, 食べ物レポート

タイムスリップ感をあじわう

札幌の副都心と言われる新札幌地区にあるラーメン店を贔屓にしている。そのあたりに行く機会があれば、だいたい立ち寄ることにしている。昔っぽい味のラーメンが売り物だ。店内は昭和中期のおもちゃや看板などが陳列掲示されていて、いわゆる昭和レトロ推しな店だ。
今では消失した炭鉱町の名物食堂で提供されていたラーメンを復刻しているから、まさにThe 昭和 で間違いない。
ただ、今回も懐かしラーメンを食べにいったら、店頭看板の上に貼られた「昭和の良き時代の店です」という文言にちょっと引っかかってしまった。別に文句をつけるつもりはないのだが、昭和の最終期や平成生まれの人にとって、昭和とは自分の記憶にない未体験時代だろうから、江戸時代とか鎌倉時代と同じ程度の「想像の世界、時代」でしかないはずだ。そうなると昭和が良き時代だったと思えるのだろうか。
知らない時代=良い時代にはならないだろうし、そうなると自分たちの親や祖父母が生きていた時代の話を聞いた結果、昭和は良い時代だったのねということになるのだろうか。
リアルに昭和を生きてきた世代、昭和初期生まれ、昭和中期生まれの世代は、今やすっかり高齢者層であり、ましてやその大半は後期高齢者、要介護高齢者ではないか。その世代にとって昭和が良い世代かどうかはそれぞれの思いがあるだろうが、少なくとも自力で外出が難しい世代であり、昭和を懐かしむために外出するのは難しい人が多いことは推測できる。
そうなるとリアル昭和を知っていて、それにノスタルジーを感じる世代は客層として極めて少数になるのではないか。
とすれば、経営上の課題として考えるべき主たる客層は、やはりリアルな昭和を知らない世代になるであろう。かれらが昭和に感じるものはノスタルジーではなく、タイムスリップ感、自分の知らない日本を体験してみたいという気分ではないだろうか。加えて言うと、昭和リアル体験のない世代にとって、昭和世界とはハリポタ的なファンタジー世界、ドラクエ的なRPGゲームの中に登場する仮想世界みたいなものではないのかと思う。
そんなことを看板の前で立ち止まり考え始めてしまった。まったく「いかん、いかん」だ。我は時代の考察をしに来たのではなく、ラーメンを食べにきたのだぞ、とセルフツッコミをした上で自己反省をする。

今回は3種類ある昭和の醤油ラーメンのうち、初代が作っていた元祖なラーメンにしてみた。当然、リアル昭和体験があるから、「そうそう、この味だよね、なつかしー」と感動しながら食べてしまう。メンマではなく支那竹が乗っていると言いたい。赤い渦巻きのナルトが乗っているが、昔より厚切りだと感心した。昔は輪切りのゆで卵が一切れだけ乗っていたが、今では丸々一個乗っているのが嬉しいと言いたい。チャーシューは明らかに昔のものよりうまい。しっかりと肉々しい味がする。そして、北海道ラーメンの絶対的トッピング「お麩」が乗っているのが実に懐かしい。などなどノスタルジー的な感激どころが満載なラーメンなのだ。
ただ、やはりこういう楽しみ方はリアル昭和体験世代の特権というか、罠のようなもので、昭和を知らない世代には楽しみようがない。今後滅びゆく種族を相手にしたノスタルジー商売はどうにもお勧めできないなと思う。
だからこの店はノスタルジーではなく「タイムスリップ感」を売り物にして、長く営業を続けていて欲しい。滅びゆく世代の一員としてそんなことを思うのだが、美味しいラーメンを食べるには余計な情報でもあるようだ。
次に来る時には、2代目が作ったというラーメンと給食セット(アルミの弁当箱に入ったライス+おかずセット)にしよう。

ちなみにセルロイドやブリキのおもちゃというのは、もはやどこにいったら売っているのだろうか。全国チェーンの駄菓子屋でも見かけないなあ。Amazonあたりで売っているのかな………

食べ物レポート

簡便食としての鮨がほろ苦い

今回は切り身が大きい もう少し細めに切ってある日もある 個人的には細め切りが好みであります

日本三大がっかり観光名所に選ばれている?旧農学校の脇に、よく行く鮨屋がある。一時期は外国人観光客に占拠されていたが、ここ数年は比較的空いていて待ち時間も15分程度で入れることが多い。ただ、ここしばらくは日本人観光客が急増してランチタイムは、また待ち時間が伸びてきている。お店にとってはようやく苦難の時期が終わったということだろう。
いつものサーモンユッケを頼みながら軽く酒を飲む。今日は何を摘もうかとメニューを見ていて気がついた。なんと、握り鮨が全面的に値上がりしている。特に自分の好みのネタが絶望的な価格上昇をしている。悲しい。が、このご時世だし値上げもせずに店が潰れてしまうくらいなら、値上げをしてもお店を続けて欲しい。
お店も苦しいだろうが、客も苦しい。お互いに助け合って生きていこう、などと悲壮な(笑)決意をしてしまった。

相変わらずのイカ・鯖連合で注文したが、イカも鯖も高級魚の一角に食い込んできた。本来の高級ネタである鮑は注文するのに抵抗がある値段になってしまったので、今回は泣く泣くパスした。それでも握り鮨が「うまくて、早い」というジャパニーズ・ファストフードとして王者の地位にあることには変わりがない。「安い」というポジションだけは危なくなってきているが、それでもすでにラーメンは1000円時代だし、街の蕎麦屋でもりそばが1000円越えをする時期も近そうだ。ハンバーガーもテレビ宣伝に出てくる巨大系バーガーはすでに単品600円越えだから、鮨だけが高いということでもない。
平成で刷り込まれた「物価の上がらない世界観」は破綻しつつあるのだが、それを認めたくないダメオヤジのぼやきと自省するしかない。スーパーで売っている機械製造の握り寿司パックもすでに1000円越えしているし、たまに職人さんが握る鮨を食べにくるのはささやかな贅沢として許されるはずだ。ただ、その時はやはり勘弁食として鮨を4-5貫摘んでさっと帰るのが、インフレ時代の大人のお作法かもしれないなあ。