
新宿紀伊国屋書店本店は学生時代からずっとお世話になてきた。待ち合わせ場所であり、暇つぶしの場であり、趣味の本を探し回る一番の拠点でもあったから、おそらく年に20回や30回は来ていたハズだ。お江戸界隈では長年働いていたオフィスを除くと最頻出没地点であったと思う。
そのビルの地下が食堂街になっていた。いつ行っても絶対と言っていいくらい入れない超人気の居酒屋もあったし、スタンド形式の鮨屋とか、とてつもない歴史があるらしいカレー屋とか、大手製麺メーカーが出していた実験ラーメン店とか。なかなか面白いラインナップだった。「だった」と過去形にしたのは、耐震工事のためここ何年間か地下食堂街が閉店していたせいだが、今年になってようやく部分的に開店し始めて、新しい「紀伊國屋地下食堂街」が再開した。
その中で、やはり一番利用していた生パスタの店が開いたのは実に嬉しいことだ。

この店はもともと大手製麺メーカーがパイロットショップとして開けていたもので、他の場所にも数店舗あったが、やはり一番手軽に使えるのはここの店だった。新宿で昼飯といえば、おそらく3回に1回はここで食べていた気がする。
いつの間にか運営会社は変わってしまったが、それでも生パスタのモチッとした感触は変わりなく、飽きることなく通っていた。
そして、飽きることなく注文していたのが、このナポリタンだ。たまに浮気をしてもペスカトール、つまりシーフードの入ったトマトソース味だからあまり変化がない。ある時期、これではいかんと片っ端から他の味のパスタも試してみた。
醤油味、オイル、クリームなど残らず挑戦したはずだが、結局はこのトマト味、それも具材の少ないナポリタンに戻ってしまった。
お江戸にはナポリタン、つまりパスタではなくスパゲッティの名店は多い。あちこち食べ歩いてみたものだ。ナポリタン熱が高じてわざわざナポリタン発祥の店(横浜)にまで行ったこともある。が、実はこの店のナポリタンが一番気に入っている。
この店のナポリタンはいつも味が違っているのだが、その違いはある振れ幅の中で収まっている。いつ食べてもハズレにはならない。常食するには、この振れ幅が小さいほど良い店になるのだが、ことナポリタンに関してはその振れ幅の許容度がちょっと大きめなので(そういう自覚はある)、今日はちょっとトマト強めとか、今日はちょっと油多めとか、日々楽しんでいる。今日はうまいとかまずいとか思わないので、やはり位お気に入りの店なのだ。
おすすめは半分くらい食べたところでたっぷりとタバスコソースをかけて、「辛辛」変化させることだ。ああ、また食べたくなってきた。
コロナ終息以降、昔から通っていた店がどんどん閉店してしまい悲しい思いがあるが、そんな中で馴染みの店が復活してくれたのは実に「善きかな良きかな」なのでありますよ。





















