食べ物レポート

生パスタ

新宿紀伊国屋書店本店は学生時代からずっとお世話になてきた。待ち合わせ場所であり、暇つぶしの場であり、趣味の本を探し回る一番の拠点でもあったから、おそらく年に20回や30回は来ていたハズだ。お江戸界隈では長年働いていたオフィスを除くと最頻出没地点であったと思う。
そのビルの地下が食堂街になっていた。いつ行っても絶対と言っていいくらい入れない超人気の居酒屋もあったし、スタンド形式の鮨屋とか、とてつもない歴史があるらしいカレー屋とか、大手製麺メーカーが出していた実験ラーメン店とか。なかなか面白いラインナップだった。「だった」と過去形にしたのは、耐震工事のためここ何年間か地下食堂街が閉店していたせいだが、今年になってようやく部分的に開店し始めて、新しい「紀伊國屋地下食堂街」が再開した。
その中で、やはり一番利用していた生パスタの店が開いたのは実に嬉しいことだ。

本日は盛り方が微妙で、これもこの店のあるあるだ。

この店はもともと大手製麺メーカーがパイロットショップとして開けていたもので、他の場所にも数店舗あったが、やはり一番手軽に使えるのはここの店だった。新宿で昼飯といえば、おそらく3回に1回はここで食べていた気がする。
いつの間にか運営会社は変わってしまったが、それでも生パスタのモチッとした感触は変わりなく、飽きることなく通っていた。
そして、飽きることなく注文していたのが、このナポリタンだ。たまに浮気をしてもペスカトール、つまりシーフードの入ったトマトソース味だからあまり変化がない。ある時期、これではいかんと片っ端から他の味のパスタも試してみた。
醤油味、オイル、クリームなど残らず挑戦したはずだが、結局はこのトマト味、それも具材の少ないナポリタンに戻ってしまった。
お江戸にはナポリタン、つまりパスタではなくスパゲッティの名店は多い。あちこち食べ歩いてみたものだ。ナポリタン熱が高じてわざわざナポリタン発祥の店(横浜)にまで行ったこともある。が、実はこの店のナポリタンが一番気に入っている。
この店のナポリタンはいつも味が違っているのだが、その違いはある振れ幅の中で収まっている。いつ食べてもハズレにはならない。常食するには、この振れ幅が小さいほど良い店になるのだが、ことナポリタンに関してはその振れ幅の許容度がちょっと大きめなので(そういう自覚はある)、今日はちょっとトマト強めとか、今日はちょっと油多めとか、日々楽しんでいる。今日はうまいとかまずいとか思わないので、やはり位お気に入りの店なのだ。
おすすめは半分くらい食べたところでたっぷりとタバスコソースをかけて、「辛辛」変化させることだ。ああ、また食べたくなってきた。

コロナ終息以降、昔から通っていた店がどんどん閉店してしまい悲しい思いがあるが、そんな中で馴染みの店が復活してくれたのは実に「善きかな良きかな」なのでありますよ。

街を歩く, 食べ物レポート

蕎麦屋のカレーはうまい

蕎麦屋のカレーはうまい、と言うのが個人的な経験に基づく信念だ。当然、たまにはハズレもあるが……… 山形県では蕎麦屋のラーメンがうまい。と言うか、蕎麦屋の看板を上げながら実態はラーメン屋というほどラーメンの売り上げが多い店もあるそうだ。有名な冷たい鶏そばを食べに行った時も、店の中にいる客の半分くらいが蕎麦ではなくラーメンを注文していた。
お江戸の老舗蕎麦屋に行ってカレーを注文することはないが(置いていない店も多い)カレー南蛮は当たり前にメニューに載っている。街の蕎麦屋であれば、間違いなく天丼やカツ丼の隣にカレー丼が並び、そのちょっと横にカレーライスがある。サラリーマン時代にはもりそばと半カレーライスのセットはよく頼んだから、蕎麦屋のカレーは美味いと知っている。
しかし、この高知県西部の町にある蕎麦屋に連れて行かれて、生まれて初めて蕎麦屋で蕎麦以外のものを頼んだ気がする。いや、厳密にいうと蕎麦屋でカレー丼を頼んだことはあるが……………
そもそもこの店は蕎麦屋と言って連れてきてもらったが、店頭でよくみると「うどん屋」っぽい。街中によくある蕎麦もうどんも出す店で、極めて昔懐かしの蕎麦が中心の大衆食堂という感じだ。ただ、高知県は蕎麦よりうどんの方が勢力が強いようで、うどんも出す蕎麦屋ではなく、蕎麦も出すうどん屋のように見受けられた。そして、店内に入って周りの注文を見渡すと、あれまあ、ほとんど定食ではないか。つまりこの店は、うどんも蕎麦も出す大衆定食食堂だったのだ。
となるとカレーは絶対に美味いはず、と確信を込めてカレー、それも奮発してカツカレーにしてみた。

出てきた料理のルックスはまさに想像通りだった。カツも厚過ぎず、肉料理というより衣を食べる料理として完成している。よしよし。
まずはカツの端をカレーにつけて食べてみた。恥の部分は肉が少なくほとんど衣だけに、カレーによく合う。どろっとしたカレーが衣に絡み、やはり想像通りの味だった。蕎麦つゆをベースに使っている甘めのカレーだった。白飯とだけ食べても美味いが、脂のたっぷりなカツの衣と合わせると絶妙な濃厚さを醸し出す。おまけにカレーはあまり辛くない。何度でも食べたくなる出しの効いた味だ。
同行した友人は蕎麦と丼を書き込んでいる。すごい食欲に圧倒されるが、こちらはカツカレーで定量オーバーだから、そばは次回に回すしかない。
ファミレスでも和食っぽいメニューが出されるようになったが、和風で出汁の効いたカレーまでは手が回っていない。だから、こういう大衆食堂っぽい店はもはや天然記念物あるいは文化遺産に指定して食文化財保護の一環としたいくらいだ。

今度また食べるときは、無理を言って福神漬けを大盛りにしてもらおう。目黒の秋刀魚ならぬ須崎のカツカレーは美味いと結論づけることにした。

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ナブラでご飯

プラカゴに入って売っているのはみかんだった

「なぶら」というのは業界用語で、カツオの群れをさす。高知に足繁く通ううちに、土佐弁のヒアリング能力は向上したが、それと合わせて「土佐言葉」「料理言葉」もカタコトながら覚えるようになった。自分にとって第三外国語は土佐弁と理解しているので、わからない言葉はともかく周りの人に聞く。言語習得には小学生並みの好奇心、向学心が重要なのだ。
その「なぶら」を冠とした道の駅がある。その中にカツオ専門レストランがあり、色々なカツオの食べ方を楽しめる。この地は高知県でも屈指のカツオ漁港であるだけに、観光バスに乗った団体客も押し寄せる。それだけではなく高知県内の観光、ビジネス、その他あれこれの通行人も群れてくる。まさに「なぶら」状態だった。よい名前にしているものだと感心した。

高知で定食を頼むと大抵の場合、沢庵がついてくる 沢庵ラブな県民性?なのだと思う

その「なぶら」の一角に入り込み、カツオで昼飯をすることにしたが、さすがにたたきを注文する気にはならない。前日、たっぷりとこれまたカツオの名所で、うまいたたきを堪能した後だった。
あれこれ変わり種のカツオ料理を物色してみたが、三色丼に食指が動いた。たたきとカツオそぼろとカツオカツの三点もりだ。たたきは普通にうまいが、カツオフライはいささか不思議な感じがする。ツナ缶をコロッケ状にしたような感じがする。ツナ缶コロッケと言われれば味の想像はつくだろうが、まさにそういう味だった。
そして意外に奮闘しているぞと思ったのがそぼろだ。カツオは熱を通すとやたら硬くなるが、このそぼろは調理の加減なのだろう、固さをあまり感じない。むしろ柔らかめの食感であるし、カツオの旨みがよく出ている。
売店でソボロが販売されていたが、確かにこれは家でも食べたい逸品だ。三色丼を堪能した。

高知では有名なカツオ漁船、明神丸の本拠地でもあり港近くにある加工場は体育館をいくつも連ねたような巨大施設だった。南洋で釣り上げられたカツオをこの町で一斉に加工しているとのことだが、小学生の社会見学に連れてこられたらカツオ産業に参加したくなるかもしれない。

高知県西部 四万十川流域はうなぎだと思うが、やはりカツオがメインだった。うなぎはサイドアイテム

店内ではカツオ関連商品がたくさん販売されていた。お江戸界隈ではあまりお目にかかることもないハラミの加工品があり、試しに購入試食してみた。珍味なのだろう。
しかし、POPに書かれている「攻め文句」が「お酒が進むよ♪」とは、なんとも高知らしい。このセンスは、敬服するしかないな。

食べ物レポート

衝動的に焼肉 井○頭五郎的選択

埼玉の誇り 安楽亭

所用がありちょっと遠出をした。あれこれと打ち合わせをした後、気がつけば昼飯の時間を過ぎていた。帰りの運転がてらどこかのレストランで遅めの昼食にしようと思ったのだが、前日に見たテレビ番組の記憶に引きずられてしまった。
それは深夜の飯テロとして有名な番組で、録画したものを適当に見ているのだが、たまたま前日に見たのが焼肉のシーンだった。その「飯テロ」記憶が空腹と連動して、たまたま進行方向にチェーン焼肉屋の看板が目に入った瞬間フラッシュバックした。実に衝動的な、だからこそ圧倒的な強さで「焼肉食いてー」となってしまった。気分はすっかり五郎さんだった。

一人焼肉など何年振りかと思うくらいだが、大衆価格の焼肉チェン店もこの数年間でかなりの値上がりになっていた。昔はワンコイン焼肉ランチなどという有難いものがあったが、いまは昔の話になっていて、焼肉ランチはだいたい1000円超だ。だが、今日は価格の問題ではないと断じつつメニューを睨んだ。この店は焼肉店なのにメニューがやたらと複雑だ。肉の種類や組み合わせをあれこれ悩むとほぼ無限大のメニューに拡散してしまう。
なので、まず食べたい肉を決める。カルビかロースかみたいな話だ。そこに豚とか鳥を混ぜると話がややこしくなるので、牛肉一本に絞る。続いて肉の量を決める。昔であれば200gや300gはへっちゃらだった(と思う)が、いまでは肉の量を慎重に決めなければいけない。一番下の量80gでは物足りないだろう。160gにすれば大きめのハンバーグくらいだからなんとかなるか。みたいなことで肉を決める。
そして、ランチメニューにはスープのオプションもある。セットメニューの基本はワカメスープだが、割り増し金を払えばカルビクッパに変更できる。カルビクッパは好物なので、これは外せない。ところがカルビクッパは量が多い。小ぶりのラーメン丼くらいの起きさだ。そうすると、総摂取重量が増加するので胃袋の限界問題が発生する。
だとすれば、白飯の量を並から小に変更だ。当然、もう一つのオプションであるサラダとキムチの選択も量の少ない方、つまりキムチを選ぶことになる。
ここまで慎重に考えてようやく注文できるのだが、注文はタッチパネルなので焦って決める必要はない。横に従業員が立っていて注文を取る従来型スタイルであれば、緊張のあまり適当に頼んでしまうに違いない。焼肉屋の技術向上は確かに役に立つではないか。ここまで、ほとんご気分は五郎さんになりきっている。

とあれこれ迷いながら頼んだ焼肉ランチセットだったが、結論を言うとカルビクッパはやめて焼き肉をもっと増量しておけばよかった。意外なことに思っていたより肉を食べても胃袋の余裕があったのだ。人は歳をとると食が細ると言うが、肉の量に関してはそうでもないらしい。さすがに丼飯で焼き肉を食う元気はないが、米を少なめにして肉をたっぷりであれば、まだ行けそうらしい。何年ぶりかの焼肉屋で気がついたことだ。

うーん、また肉が食いたい。

街を歩く, 食べ物レポート

お江戸のラーメン

西新宿にあったサンマ節ラーメンの店がいつの間にか増殖してお江戸のあちこちに系列店、暖簾分けが増えていた。
池袋東口の裏路地のポツンとある店を発見したのは、たまたま馴染みの蕎麦屋を探していた時のことだ。探していた蕎麦屋は潰れていて、居酒屋に代わっていた。ラー油蕎麦を久しぶりに食べたかったのだが。
この店も西新宿本店には足繁く通ったものだが、最近はすっかりご無沙汰していたので、えいやっと気合を入れて久しぶりにサンマ節ラーメンを食べようと店内に入った。入り口にある券売機は最新鋭のものだった。ただ、これが実にわかりにくい。コロナ中に開発された店内飲食、店外持ち帰り両用機は大抵が使い勝手が悪い。いかに機器開発側の頭が悪いかを見せつける仕様だ。開発者出てこいと言いたくなるくらいのダメ仕様だと思う。一番ダメなのは複雑化したデジタルキャッシュ対応で、ここがストレスを最大にする部分だ。
興味のある方は、この店に行って体験すると良い。なかなかストレスフルな経験ができる。ちなみにお店の従業員の対応は素晴らしい。店がダメなのではなく、機械がダメなのだと、明言しておく。

チャーシューうまし おかわり欲しいが……………

魚介系ラーメンの元祖だけあって味に文句はない。それなりに腹がげっていたからいっきに食い終わると思っていた。ところがだ、記憶にあるより遥かに麺量が多い。(ような気がした)
おそらく加齢による胃袋容量の現象だと思うのだが。完食するのに苦労した。
おそらくだが、昨今のつけ麺の隆盛により汁麺も麺が太めになり、標準的な麺量も増加しているのではないか。都くんこの店は最近流行りのチャラ系ラーメンではなく、質実剛健の極みに位置する。
次回はもっと腹を減らして最良戦したいものだが、チャーシューメンは避けておこう。トッピングなしの素ラーメンで良いかもしれない。
まあ、そう思わせるくらいお気に入りのラーメンではありました。池袋で美味いラーメン屋見つけるのはなかなか大変なのですよね。行列ができる店がうまいとは限らないし……………

食べ物レポート

シベリヤ

自宅近くのパン屋で手に入れたシベリア

シベリヤと呼ばれるパンがある。見栄えがまるで和菓子のようだがれっきとした「パン」らしい。カステラ生地で餡子を挟んだもので、とてつもなく甘い。系統的にはあんぱんの親戚みたいなものだろうか。調べてみると関東一円で売られているローカルパンらしい。ただ、この名前に既視感がある。昔から知っていたような気がする。となると、北海道でも売っているのだろうか。ヨーカンパンがあるくらいだから、ヨーカンサンドがあっても不思議ではない。

などと考えていたら、ついに札幌のイオンで発見した。おそらく通年商品ではないのだろう。寒い時期になると売られる季節商品で、肉まんと同じように10月から販売開始ということではないか。おまけに製造元はヤマザキだから、それなりに地元でも知名度があるということだ。

中身は三角サンド形状ではなく、四角いサンドイッチ風で、ずいぶんと小ぶりなサイズだった。味は予想通りの激甘、一切れ食べるとごちそうさまと言いたくなる。これはやはりパンと言うより菓子ではないか。パンとケーキの中間品みたいな気がする。三切れ食べ切ったがとてつもない満腹感に襲われ昼飯は抜きにした。

関東生まれのシベリヤがどんな経緯で北海道に渡ったの(北海道生まれで、それが関東にながれていったということはないと思う)、そのあたりも興味があるが、次は札幌の老舗パン屋巡りでもしてみるか。変形シベリヤがたくさんありそうだ。中身がつぶアンとかウグイスアンとか……………
ブーランジェリーなどと言う高級なパン製造店では売っていないだろうしなあ。
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神田でチャイナな気分

古くからの友人との飲み会で神田に行った。予備知識なしで出かけたが、店の前で看板を見て「おやまあ」と驚いた。味坊という店名から大衆居酒屋を想像していたのだが、なんと火鍋屋、それも本格派の店みたいだ。おまけに羊肉店だと書いてある。これは明らかに「和」ではなく「華人」料理ではないか。
店内の従業員も明らかにチャイナな方達だった。メニューは大陸北方系の料理らしい。店内に残っている匂いも明らかに中華系スパイスだった。


最近押し寄せてくる大陸系インバウンド旅行者にとって町中華の料理は「日本料理」なのだそうだ。その典型がラーメンであり、餃子であり、チャーハンらしい。正統的なチャイニーズとは全く別物で和風アレンジされた、まさに和食なのだそうだ。だから華人が華人のために調理する「中国料理」と呼ぶべき料理とは似て非なるものだ。
町中華のメニューは100年掛でアレンジされた創作和風料理だろう。確かに日本で食べる酢豚と大陸で食べた古老肉は似ているが違う料理だと思う。この店は神田にあるが「中国料理」店であり、中華料理店ではないのだろうなあと感じた。

看板にある通り、羊肉が「推し」メニューで、羊肉串焼きを注文した。味はまさに羊肉だったが、スパイスが日本的な中華料理の定番、ニンニク+生姜ではない。八角、ういきょうなど大陸系のスパイスだった。最近ではサイゼリヤでもこの手のメニューがあるので、羊肉が日本に定着しているとは思うが、味付けはやはり日本アレンジの方が主流だろう。羊肉を煮たり焼いたりして食べる文化圏はユーラシア大陸中央部を中心に、中国東北部から中東までの幅広い地域に広がる遊牧狩猟民文化と一体の食文化だろう。

極めて一般的な空芯菜の炒め物も味付けが違う。町中華であればニンニク塩味が主流だが、ここではやはり八角系のチャイナな味がする。従業員曰くさっぱりとした味付けとのことだったが、これは濃厚野菜炒めとでもいうべき代物だろう。日本人的な感覚からすると、さっぱりとはだいぶ遠い。ご飯のおかずには向かないが、羊肉と食べ合わせるにはこれくらいの強い味付けが必要だと思う。

厚めの餃子の皮に、これまたたっぷりとニラを入れた餡をくるんで焼いた「餅」が出てきた。日本語でいうところの「もち」ではなく、チャイナなモチである「ピン」だろう。まさにサイドアイテムではなく、腹持ちのするメインディッシュだ。これだけを昼飯にすると、ちょっと変わったチャイニーズランチになりそうな気がする。日本的にアレンジすれば「肉まん」になるのだろうけれど。案外餃子の原型はこんな料理だったのかもしれない。
ちなみに日本的な焼き餃子は「中国料理」には存在しないらしい。日本では飲茶で出てくる水餃子のようなものが、いつの間にか「焼き餃子」に変わったようだ。ネタ元は台北にある北京料理屋の大将に聞いた話だから多分正しいと思う。
余談だが台湾にある北京料理屋は高級店が多い。それは台湾成立の政治的事情と絡んでいるので、あまり追求してはいけないらしい。ただ、宮廷料理の流れを汲む正統北京料理店がなぜか台湾にも多くあるし台湾のローカルである台湾料理も多い。中国料理をお勉強するには台湾が便利なところなのだ。
焼き餃子に近いものは、餡を包んだものではなく、端を閉じでいない筒状のものだそうで、これは日本でも紅虎餃子房で提供している鉄板餃子とほぼ同じだった。

この店の大判焼き餃子もどきは気に入ったので、またいつか訪れて見たいものだ。

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山賊焼という唐揚げ

新宿にあるお気に入りの洋食屋で、ランチメニューの中に気になる一品があった。山賊焼というもので、長野県松本、塩尻周辺の郷土料理だ。焼きとは言っているが、実際には唐揚げだ。ニンニク醤油の濃い下味がついた、衣がカリカリの唐揚げだ。熱々を食べると、いかにもスタミナがつきそうな(昭和的発想だ)ニンニクガツン系の味がする。油とニンニクは実に相性が良い。今風の流行りであればこれにタルタルソースをかけ、より濃厚化させそうだが、この店はストイックに現地風の体裁を守っている。これはポイント高い。
横についているのはオマケの白身フライだが、こちらも自家製らしきタルタルソースにつけて食べると感動するうまさだった。山賊焼がホームランバッターだとすると、白身フライはスマッシュヒットを重ねる技巧派バッターという感じだろう。

そして、このランチメニューは丼飯と味噌汁がついてくる定食屋スタイルだ。ただ、この店は洋食屋であり定食屋ではない……………はずなのだが。新宿歌舞伎町界隈でこのような店はすでに奇跡に近い。小洒落たカタカナ名のレストランは多いが、どこもお値段はこの店の二倍から三倍になる。
和洋中取り混ぜたメニューが並ぶランチは、昔のデパート大食堂のメニューラインナップに近い。そのあたりが懐かしさを掻き立てると言えばそうかもしれない。

内装はシックなもので、窓が大きいため店内は明るい。薄暗い店が好きな客にとってはちょっと眩しすぎるかもしれないが、窓際のカウンター席では食事を終えた後に本を読んでいる人もいた。確かに読書には向いた明るさだろう。
これくらいの明るさの喫茶店があれば嬉しいのだがなあ、などと思いつつ丼飯を完食して身動きが取れなくなった。どう考えても和風ファストフード店よりコスパが良い。次回はもう少しレトロな定食、ではなくランチセットを注文してみよう。

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うま味調味料について

一時期は、まさに蛇蝎の如く嫌われていたうま味調味料が見直されているようだ。世界的な研究機関が、うま味調味料、つまり化学調味料と言われるものになんら問題はないと発表したそうだ。逆に低開発諸国における食事の改善にうま味調味料使用を勧めているらしい。
うま味調味料を使うと舌がバカになるとか、体に不調が起こるとか、実に宗教論的な手に負えない議論が横行していた時期があった。外食企業で働きながら、その手の宗教論議?が好きなものも多くて閉口した記憶がある。自分たちの主力商品には、彼らの視点から言うと過剰というほどうま味調味料が使われていることを知っていながら、「ない」ことにしたままのうま味調味料議論なのだから、全く始末に追えない。
もし本当にうま味調味料、化学調味料が体に悪いものだとしたら、自分の売っている商品は「毒」ではないのか?という方向に思考は進まないらしい。嫌なことからは目を背けてないことにする。困った人たちだった。
さて、うま味調味料に関する最近の論調についてだが、汚名挽回というか、正しい使い方をすれば便利なものですよというお墨付きを受けたようなので「味の素」も正当な評価をうけられるようになったか?と思う。


その味の素がコラボ商品を売っていた。おまけに第二弾だという。

この人気アニメキャラとのコラ部はなんとも不思議だ。中身は通常品で、瓶の表面がキャラになっているだけなのだが、そのキャラが実に多彩だ。まさか全キャラコンプリートなどという荒業が目的ではあるまいと思うが、第二弾が始まったということはそれなりに第一弾の人気があったのだ。
ただ、この「味の素」ひと瓶を使い切るのにはどれくらい時間がかかるだろう。少なくとも一ヶ月や二ヶ月では無理だと思う。値段はたいした金額でもなかったので二瓶も買ってしまったが、これを使い切るには年単位の時間がかかる。3年は大袈裟にしても、相当長持ちしそうだ。

この企画を考えたのは誰なのだろうか。味の素側に仕掛け人がいたとも思えないのだが、ひょっとすると味の素の社長が「わん○ース」の大ファンだとか、原作者が味の素大好きだとか、そんな裏話があるなら知りたいものだなあ。

もしこのまま、第三弾、第四弾などと続いていくと、熱烈ファンの家には死蔵された味の素がずらっと並ぶのかな。探してみたけれど瓶の表面に賞味期限は見当たらないし、中身は腐りそうもないからライフタイム商品で良いのかもね。

補足 ネットで調べてみたら夏に発売の第三弾で終了していた。どうやら手に入れたのは、売れ残っていた在庫処理品らしい。どうりで安かったわけだ。それはそれで希少品ということかもしれない。

食べ物レポート

フォトジェニックなラーメン

旭川に本店がある山頭火の塩ラーメンは、ビジュアル的な点で日本屈指の美しいラーメンだと思う。それと比べると、最近流行のトッピングもりもり、オーバーデコレーションなラーメンはあまりにもけばい。
比較的シンプルなトッピングと白いスープの対照が美しさを生むと思うのだが、なんと言っても真ん中に置かれた紅一点、小梅の働きが素晴らしい。


見栄えだけでなく、この塩ラーメンのスープは完成度が高い。濃厚淡麗という相反した仕上がり具合だ。塩味控えめなので最近の人気ラーメンと一線を画している。麺は旭川ラーメン特有の多加水麺で歯触りを硬めに茹で上げているところが好みだ。札幌ラーメンの麺は西山製麺製造が主流のようだが、その歯応えがある麺はちょっと違っている。固いというよりもちっとした歯応えだ。有体に言えば麺の違いこそが札幌と旭川のラーメン差ではないか。

二種類の異なるチャーシューを使うというのは現代ラーメンでは当たり前の手法だが、これも山頭火が始めた頃は実に斬新なものだった。
古典的とも言える三平の味噌ラーメンと山頭火の塩ラーメン、この二つのどちらを選ぶかでいつも心が揺れる。味の三平、様式美の山頭火とでも言いたくなるが、次に行くのは三平になるだろうなあ。
オフィスビルの地下にある山頭火は、夜になるとちょい飲み対応の店になるのだが、そのちょい飲み時間帯もずうっと気になている。餃子に唐揚げという鉄板のつまみ以外に、あれこれ酒の肴が登場するようで、それはまたラーメンとは別の興味で試してみたいと思うのだ。次回は昼の三平、夜の山頭火という組み合わせかな。