食べ物レポート

老舗のカレー屋@札幌で

久しぶりに食べて、昔の感動が蘇る という食べ物はそんなにあるわけないのだが   これはうまい

おそらくはるか昔、まだ学生だった頃からずっと続いている老舗カレー屋がある。カウンターだけの小ぶりな店だが、いつも行列ができている。最後に食べたのはいつだったか思い出せないくらいの昔だ。まだスープカレーなるものが存在すらしていなかった時代から、ここのカレーは行列ができていた。
その行列に並ぶのが嫌で、いつも横目で見ながら素通りしていたが、このままでは死ぬまで入ることがなくなりそうなので、何十年ぶりかでおそるおそる店に入ってみた。

うまいカレーだったが、食べ終わってからの感想を少し。まず、遠い昔の記憶しかないので比べようもないが、カレーの味はあまり変わっていないような気がする。カレーに妙に尖ったところがないので安心して何度も食べられる。最初はあまり感じないが、途中からじわっと辛味を感じ始める。個人的には、ココイチよりも好みだ。ただただ、うまいのだ。
そして、昔は全く気にしていなかったはずなのだが、飯の量が多い。注文した後に気がついたが、カウンターの背板に「標準の米の量は350g」と書いてある。要するに標準が大盛りなのだ。それを250gに減らして注文できるとも書いてある。早く言ってよーだった。
250gという量は、どんぶりなどで普通のコメの量だろう。ご飯茶碗で二杯分くらいに当たる。弁当に入っている米の量もだいたいこれぐらいだ。
つまり、昔は大盛りをバリバリと食べていて気にも止めていなかったが、この標準(大盛り)システムが、今ではちょっと困ったことになる。実際、目の前に出てきた米はたっぷりあるし、食べきれそうにない。小盛りにしておくべきだったと心底後悔した。
カツは揚げたての熱々で、油で火傷しそうなほどだ。衣はカリカリでルーによく合う。福神漬けとらっきょうはセルフで好きなだけ取る。確かに、これが自分の人生の中で「カレー屋の原型」として刻まれているカレーだ。なんだか、タイムマシーンに乗ったような気もする。

札幌駅前のオフィスビル地下にある小体な店だ。行列ができると言っても、せいぜ10分も並べばよいくらいなのだから、待ってでも食べる価値はあるのだ……………すっかり、それを忘れていた。
この日の日替わりカレーはなんと「胡麻ザンギ」だった。(胡麻ザンギは食べたことがないが、味の想像はできる)
カツカレーは好物だが、こちらも魅力的ではないかと、食べ終わった後に気がついた。実はカウンターで両隣の客が日替わりと言っていたのを聞きつけて気になり、食べ終わった後に店外で確認した。うーん、残念だ。なんだか負けた気がしてきた。
次回は、胡麻ザンギカレーを食べたいが、日替わりメニューだしなあ。

食べ物レポート

道の駅で名物外し

芦別という町に両親が住んでいた。父方の実家だが、戦前には小作人も雇う農場主だったらしい。戦後、農地改革で没落?した農家で、先祖を遡ると富山からの移民だ。小作人の次男だか三男だかだったそうだ。伝統的な農家一族た。
母方は樺太からの引揚者で、夫は戦病死した母子家庭で、北海道に引き揚げ後は厳しい暮らしぶりだったようだ。当時の芦別は炭鉱景気にわく賑わいのある地方都市で人口は5万人近い。映画館が何軒もあり、飲み屋の数は北海道第二の都市旭川に次ぐ規模だったそうだ。戦後の外地(本州と四国九州を除く、日本の植民地で辺境部)からの引揚者の受け入れ地として、他の産炭地と同様に機能したようだ。
その町も今では過疎の波に襲われ、映画館もなくなり飲み屋もすっかり減ってしまったが、石狩平野から十勝平野へ抜ける幹線の途中にあり、道の駅はなかなか繁盛している。駐車場も広いので富良野に行く手前の休憩場所としては最適だ。
ちなみに富良野は外国人観光客も大量に押し寄せる観光地なのだが、駐車場が思っているより少ないので、混雑時はトイレに行くのもちょっとした難作業になる。富良野の手前であれこれ用事を済ませておくにこしたことはない。
自分はたまに実家の墓参りにいくので、それなりの頻度でこの街を訪れている。

さて、その炭鉱で栄えた町で、炭鉱夫(古い言い方だ、今で言う炭鉱構内作業員か)に人気のあったあんかけラーメン「ガタタン」が名物だ。道の駅のレストランでもガタタン関連メニューがたっぷりある。ただ、個人的にはどうにも苦手なメニューなので、客席のほぼ全員がガタタンを注文している横で、あえて味噌ラーメンを注文した。
ガタタンはあんかけなので、口内をやけどしやすい。それがトラウマになっている。決してまずいから嫌いというわけではない。ともかく、麺の上に乗っているあんかけが大量すぎて熱量もすごい。危険物だと思う。
その結果、今回食べることにした味噌ラーメンだが、うーん、なんだかこれは味噌ラーメンと別物に思えるほど、一般的な味噌ラーメンとは離れている。まずいとは思わないが、なんか違うなあと、微妙な違和感があるのは何故だろうか。平板すぎる見栄えのせいか。まあ、味噌ラーメンを名乗るラーメンには、この手の不思議な変化が起きているものは多い。全国各地で、「不思議味噌ラーメン」とはよくであう。店主が味噌味だといえば味噌ラーメンになる世界だ。それでも某ちゃんぽんチェーンの味噌ちゃんぽんを食べた時は、思わずふき出した。言ったが勝ちの典型だったからだ。

やはりご当地名物を素直に頼んでおいた方が良かったのかなあ、と反省した墓参りの途中の出来事であります。この店はセルフサービスの店なので、商品が出来上がると呼び出し番号とメニュー名で呼ばれる。つまり、他の客が注文したものが全部わかる。みんな、ガタタンだったのですよ。やはり数は正義なのかもしれない……………

食べ物レポート, 旅をする

居酒屋でサクッと

高知市にある葉牡丹は、晩飯を兼ねて一杯に飲みに行くには最適の居酒屋だと思う。高知名物と言えるかどうかはわからないが、ついふらふらと入りたくなる店だ。と思っていたら、某国営放送局のドキュメンタリー番組で高知市の路面電車が取り上げられ、そこに登場するおっちゃんが電車に乗ってこの店に入って行くシーンがあった。どうやら2階で同窓会をやっているらしい。なんだか、自分の親戚の家がテレビに出てきたような感覚がした。

この店のメニューは定番が串焼きと串揚げ、それに和洋中の料理が混載されている。オムライスと酢豚と鰹のタタキという呆れるコンビネーションの注文もできる。
日本酒を頼むと、銚子のクビに札がかかっている。ふだには注文した酒の銘柄が書かれているらしい。(しっかりと見たことはないので)
おそらく仕込みの時の準備なのだろうが、ちょっと珍しい。猪口とコップのどちらかを選ぶのだが、やはり一人飲みの時はコップ酒が似合う気がする。(ちなみにぬる燗を頼む時は猪口にしている)

まずはスタミナ豆腐を頼んでみた。これも久しぶりだ。暑い夏の間は注文するのを躊躇ってしまう。気温が下がってくると食べる気にもなる。(ちなみにこの日の高知市は気温29度で、秋の涼しさとは程遠い日だったが)
温かい豆腐の上にモツ煮込みがかかっている。見た目の割にあっさりとした味だ。一般的なモツ煮のようにコッテリとした濃い味ではない。なんだか良質のタンパク質をとれるヘルシー料理のような気がしてくる。まあ、見た目は茶色一色だからなんともなあ、という感じだが。

今回の初挑戦メニューは「にら豚」。読み方はニラトンだそうだ。ニラブタと言ったらポカンとされてしまった。ちなみに次の日に他の店で同じメニューを見かけて正しく発音、「にらとん」と注文できた。居酒屋でも学習効果は十分ある。人生、幾つになっても学びは必要だ。


このメニューは、高知特有のものらしい。他の地域で見たことがない。高知はニラの名産地だけに、そのせいなのかもしれない。ニラのおひたしに卵の黄身を乗せたニラ玉も高知発祥のメニューっぽい。ご当地の名物を食べるのも良いが、ご当地だけにある当たり前料理の方が居酒屋での楽しみかも。

食べ物レポート

役所飯

ネギとゆで卵がかすかに見える程度で……………食べると旨いんだけどね

最近、役所飯を食べるのが習慣?になっている。お江戸であればあちこちにある区役所が狙い目だ。地元の市役所はいつの間にか食堂が閉鎖されていた。なんだかよくわからない理由で閉鎖してしまったのは前の市長で、あれこれ市民の不評を買うようなことばかりしていたから、前の選挙で交代になった。
個人的には市役所食堂はコスパが良くて、見晴らしもよい最上階にいあり、眼下には広い公園がある。食堂を閉鎖するくらいなら、せめてカフェにでもすればよかったのにと思っている。目先の経費削減より、市民に喜ばれる施設活用などという視点は持てないしちょうだったのだろうなあ。小学校の冷房設備設置をしぶり、なんと市民投票をやらされて、負けたくらいの見識のなさだった。


さて、最近は札幌市役所の地下食堂に頻繁に通っているのだが、あれこれ試した結果、いちばんのおすすめはカツカレーだと思う。ただ、ラーメンもコスパの観点から捨てがたい。一般的なラーメン店より4割ほどお安いのに、ほとんど味は変わらないハイレベルだ。
ただ、その市役所ラーメンにも課題はある。見た目「非重視」ということを指摘したい。今回は辛味噌ラーメンを注文したのだが、なんとも平坦で凹凸のかけらもない。おまけに一面が真っ赤?だから、見た目だけで随分と存している。いざ食べてみると、からさとスープの濃さが特徴の一風変わった特徴ありすぎるくらいのラーメンだった。
まあ、食べてしまえば見た目のことなど関係ないと思う人も多いのだろうが、それにしてもねえ。
もう少し立体的に盛り付けをすれば、コスパ感も変わると思うんですけど。役所飯、次回はそばにチャレンジしてみようかなと思っております。

街を歩く, 食べ物レポート

今年のラスト冷麺

9月になると冷やし中華や冷麺が終わってしまう。それがちょっと悲しいなと思う。気になって幸楽苑のサイトを調べてみたら、まだ0面販売中とわかり、のこのこと出かけてみた。
見た目はゴージャス感がある冷麺だ。最近の幸楽苑は基本に立ち返ることを徹底しているようで、見た目も含めた商品の完成度はなかなかのものだ。冷麺や冷やし中華はやはり立体化したものが食欲をそそる。良い仕上がりではないか。
しかし、食べてみると難点下記になることがある。一つ目は麺の質だ。モチッとした食感はあるが、これは中華そばの範疇ではないか。冷麺特有の米粉を使った歯切れの悪に粘り感は感じられない。二番目はスープで、多分味が薄いのだと思う。麺と絡めると味がわかりにくくなる。
どうやら幸楽苑の商品開発チームは、冷麺をラーメンの変形として考えている節がある。おそらくそこが違和感の原因、大元だろう。そもそも冷麺のルーツは大陸本土ではなく半島北部であり、温かいラーメンと冷麺では「味の思想」が根底から違うはずだ。日本蕎麦のかけともり程度の差程度と考えてはいけないと思うのだが。冷麺風の冷たいラーメンとでもいうべきものに仕上がっているのが残念だなあ。
冷やし中華をこちらに寄せていくと面白いものになるのかもしれないなあ、などど今年最後の冷麺を食しながら思っておりました。

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カレーラーメン 定点観測幸楽苑

カレーラーメンとは、北海道とマコ宮室蘭のローカル名物だと思っていた。全国津々浦々で、日本蕎麦屋に行くとおいては置いてあるカレー南蛮とは違い、ラーメン屋でカレー味を見かけることはほぼ皆無だ。
そもそもラーメンスープは濃厚系が多いのでカレーとうまく調和しないということもあるよ思う。札幌ではローカル名物かしたスープカレーもその原型はラーメンスープをベースにカレー味に仕立てたものという花足を聞いた。発祥の地であるカレー屋で生まれたスープカレーがインスパイア系料理として広まる過程であれこれ進化していった過程で起きたことのようだ。
さえ、この後楽園のカレーラーメンだが、札幌のスープカレー的な「締めにはライス」を提案している。が、スープカレーとはだいぶ趣が違い粘度の高いスープだ。が、出汁があまり強くない。一番近い味はなんだろうと考えていたら、某カップ麺のカレー味に似ていることに気がついた。
どうやらこのラーメンのルーツは北海道のローカルテイストではなく、全国どこでも買える有名なカップ〇〇カレー味みたいなのだ。二口ほど食べて、それに気がつき納得してしまった。後楽園のテリトリーは東日本になるので関西系の味付けは評価されないらしい。であれば、青森の煮干しだしラーメンとか秋田の有名店(京都系インスパイア濃厚ラーメン)のコピー品でも出せば良いのになあ。などと思ってしまう。

カレーラーメンだけではちょっと見た目がアレなので、追加トッピングにネギとチャーシューを足してみたのだが。これはカレー味とあまり足しょうが良くなかった。まあ、失敗の経験から次の成功が生まれるのさ、と嘯きつつちょっとだけ後悔してしまった。来年出るだろう(多分)改良版カレーラーメンにきたいしておこう。

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えび玉ちり 満洲の冬メニュー

あまり辛くないというか、全然辛くない

エビチリを最近よく食べる。加齢による海老信仰みたいなものとは関係ない。辛いものとエビが好きになっただけだ。
満州というチェーンは時々面白いことをする。キャンペーン商品で当たりが出たら定番化するというのが通常の外食企業が取る常套作戦なのだが、満洲はどのキャンペーン商品も潔く捨てる。翌年の同じ頃にリバイバル出品することもあるが、大抵は使い捨てメニューになる。
おまけに、メニューを絞り込んでいるので町中華の絶対定番とも言える「酢豚」「エビチリ」が存在しない。「青菜炒め」もない。
だからエビチリ発売とニュースで見かけて、これは食べに行かねばならないと本店まで出かけてみたら、なんとも不思議なことに「エビチリ」ではなく「エビ玉チリ」だった。エビチリに卵の炒めたものが入っている。だから甘めの味になっている。味付けに文句があるわけではない。世の中には甘いエビ理知もあれば、これは食べるのが無理と言いたくなるほど辛いエビチリもある。どちらもうまい。ただ、卵を入れた意図がよくわからない。ひょっとしてエビ好きの子供向けに「大人の階段」を上らせるみたいなことを社長が考えたのか、と疑いたくなる。

最近の満洲はメニューが健康志向なので、それもどうやらよく食べにくる一人暮らしの高齢者のために、いろいろと考えてくれているようだ。銘柄豚を使ったり、米は白米と玄米を選べたり、麺が少量のラーメンを提供したりする。ただ、卵入りのエビチリにはその高齢者志向というか、健康フレーズが見当たらないので、やはり新客層として子供に目を向けたのではないか。

そんなことを考えながら、次回は玄米チャーハンにしようと思った。確かに町中華で玄米を食わせてくれるところはないよなあと……………

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お江戸の回転寿司事情

鯖は日本近海どこでも獲れると思うが、回転寿司では輸入物の鯖なのだろうか 地域によって味が極端に違う

自宅からお江戸に出かけていくときのJR乗り換え駅は学生街のある。ただ、その学生街が最近はすっかり多国籍タウンになり、看板にかかっている字が読めないことも多い。特に、日本語ではない漢字の店が増えている。内装も異国風というか東南アジアを旅したときによく見かけた軽食堂的なイメージがある。店内を覗くと異国情緒もあると言えばある。
だから、回る寿司の店を見るよホッとするのだが(いかにも日本的で機能的な店内だからだろう)、そこにいる客の半数くらいがこれまた日本語を解さない旅行者であったりする。店内にこだます異国の言葉になんとも奇妙な気分になる。日本人安住の地は路地の奥のこじんまりした店蔵しかなくなってしまった。お江戸の国際化とはこういうことかと思う。
そんなあれこれを思いながら、久しぶりに回転寿司を食べてみた。
ネタは熱くなった気がする。食べこだ絵がある。が、値段は三倍くらいになった。昔の回らない大衆鮨屋の値段を超えている。コロナの影響で日本中の飲食店が整理され過当競争が減った。生き残った店はコスト転嫁を堂々とできるようになった。平成の価格に対する常識はもはや過去のものだ。ただ、価格上昇にスライドして賃金が上がったわけではないので、外食総需要は、金額的に伸びても、利用者層は減少する。より安価なテイクアウト食品、それもが一色企業の製品ではなくスーパーなどの流通業に支配権を譲ることになるのだろう。

最近の好物で、注文するたびに中身が違うびっくり箱状態が良いのだな

そんな価格高騰と全体競争の鈍化により、業態によっては寡占化の最終ステージになったりする。回転寿司業界は外食として規模が大きいが、二大チェーンとその他大勢の弱小という構図に収束しつつある。だから、大手二社以外の店に行くと、意外とアイデア商品というか掘り出し物に出会うこともある。
このネタの端をミックスした軍艦巻きなどは、その際たるものだろう。お値段お手頃で、実は酒の肴に向いた逸品だと思う。このミックス軍艦とサラダ軍艦を食べ比べると、現在のチェーンの立ち位置が見えてくるとまで思うほどだ。
北海道や北陸の質実剛健、ネタの高品質と低価格で勝負している姿を見ると、お江戸の回転寿司屋はもう死に体なのだなと思う。だからこそ、その最後の時まで付き合ってやろうとも思うのだけれど。チープな寿司(鮨ではない)を食うのであればお江戸に限ると思う今日この頃であります。

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ザンギ屋で辛いもの

北海道特有の言い方であるザンギは鶏唐揚げのことだ。ただ、スーパーの惣菜売り場でもザンギと鶏唐揚げが別々に売られていることもあるので、普通うの鳥唐揚げとは味の違いがある。(はずだ)
ただ、ザンギの正しい定義などあるものだろうか。なにやら諸説あるが誰もそんなことを気にしているとも思えない。あえて言えば、にんにく生姜で醤油味というくらいだと思っていたら、最近は塩ザンギなるものが勢力を伸ばしている。ただ、塩ザンギと鶏唐揚げはもはや区別をつけるのが難しいと思うのだが。
その辺りは、言語が極めてアバウトに使用される「北海道的」解釈ということだろう。誰も詳しく咎めたりしないし、それで説明終わりにしても良さそうだ。


塩ザンギよりすごいものがある。十分すぎるくらい濃い味付けのザンギに「専用タレ」をつけて食べるという、ザンギの変形あるいは進化系も存在する。タレ付きザンギで一番有名なのは釧路の町外れ(正確には隣町)にある山盛りザンギの店だろう。ザンタレと呼ばれているが、一人では完食不能な量が一人前で、九分九厘食べ残したザンギを持ち帰ることになる。
その店は車で行かなければいけない場所にあるので、当然ながら帰りの車内はにんにくスメルで充満する。にもかかわらず平日でも行列のできる人気店だ。


北の街でも市民の大多数がその名を知っている(らしい)ザンギの名店がある。正式には町中華でありザンギ屋ではないのだが、ほとんどの客がザンギを頼む。そのザンギ屋が鮨と中華という禁断の国合わせのメニューを出す支店を作った。これがまた大人気店で、予約をしないと入れない。

そのザンギ・中華・鮨の店でランチメニューの旨辛麺を注文した。どんなものが出てくるのか楽しみにしていたのだが、麺より先にザンギが来た。まあ、ザンギは前菜だと食べ始めたところに、一面がレッドな麺が来た。赤みの強い麻婆豆腐のように見える。食べてみると、エビやイカが入った海鮮麻婆豆腐だった。これは美味い。麺の上に乗せるのではなく単品で食べたい。
麺料理の完成度としてはどうよと言いたいくなるが、実はこの店の本店でザンギの次に人気のあるのが麻婆麺らしい。だから、この赤い麺は麻婆麺のアレンジ商品なのだと思う。麺の上にあんかけを乗せたり(広東麺)カニ玉を乗せたり(天津麺)、はたまた野菜炒めを乗せたり(関東圏のタンメン)、麺料理のトッピングはなんでもありの自由な世界だから、そこに文句をつけるつもりはない。仙台では焼きそばの上に麻婆豆腐を乗せているくらいだから、麺料理は本当になんでアリなのだ。
だが、しかし、海鮮麻婆豆腐とは想像の斜め上をいくという感じになる。それも麻婆豆腐本流である「しびれ」ではなく「辛味」推しなのだ。本格的な中国料理(大陸の正式レシピーで作られたもの)と比べて、町中華のなんと自由奔放なことか。いつもそれには驚かされる。
結局、鮨と中華の組み合わせを楽しむ前に白旗を上げてしまった。次回は、麺抜きの海鮮麻婆豆腐を注文してみたい。ザンギを諦めればもう一品追加できそうだが、それはザンギやとしてありえない選択だしなあ。昼飯抜いて夜に行くことにするしかなさそうだな。