小売外食業の理論

外食DX考察 ファミレス ロイヤルホストの場合

外を歩く時にはマスクは不要という政府見解が発表され、いよいよコロナ収束のムードが強まってきた感がある。まだまだ同調圧力が強く「マスク・レス」社会までは時間がかかりそうだが、それでもアフターコロナの時代が到来したのは間違いないだろう。外食にとってこの2年半は受難・苦悩・経営危機だったというしかないが、それでも政府の休業補償で一息つき、ここからどう対応するかが生存戦略、最重要経営課題だ。
たまたま入ったファミリーレストランで気がついたあまりの変化のなさに、どうにもモヤモヤした気分になる。
ということで、モヤモヤ解消のためファミレスを含めた大手外食をみて回ろうと思った。ファミレス業界はどこも大きなダメージを食らっているので、各チェーンでそれなりの工夫をしているのではないかと予測した。ファストフードは全体的に好調なので、やはり観察対象はファミリーレストランと居酒屋だろうと決めた。
回る順番はその日の気分なので、特別な意味はない。混雑ぶりを見に行く(商売の良し悪し)に関心があるわけでもないので、比較的空いている時間、曜日を狙っていこうというくらいのものだ。
見どころとしては、アフターコロナに対応したDX、オペレーションの統合デジタル化・組み直しの進み具合を比較してみようと考えた。

ロイヤルホストは、ファミレス以外の事業もダメージが大きく、大手商社の資本参加で事業立て直しを図っている。コロナ前には中高年を主客層に比較的高めの単価設定で、高いけれど質が良いというアップグレード戦略が当たっていたと記憶している。が、コロナで一番外出を控えたのが中高年、特に高齢者層だったことを考えると、ダメージの深刻さが想像できる。
それでもロイヤルらしさというものが店内には散見できる。テーブル上の仕切り版にはロイヤルホストのロゴが刻印されている。薄っぺらなアクリル板で申し訳程度の小さなものを置いている店も多いだけに、このロイヤルの本気度は素晴らしい。

気になったのは、いまだにメニューが「紙」であることだった。つまり注文、接客は従来通りのお作法で進むということになる。非接触と丁寧な接触は相反するものだけに、ロイヤルホストは非接触より、従業員のサービス、歓待、ホスピタリティーを選んだということになるのだろう。アフターコロナでこの従来路線堅持が、良い方向悪い方向どちらに転ぶかに興味がいく。

満足度の高い定番朝食

ドリンクバーつきのモーニングセットが610円(税別)はさすがロイヤルホストと思わせる高品質だろう。郊外型コーヒーショップでコーヒーを頼むとトーストと茹で卵つきで400円程度だが、プラス200円でこのレベルになるとすれば、コスパの高さはどちらになるか。そして、もう一度中高年・高齢者を引き戻すためには、この従来型路線維持が効果を上げるか、業界的には興味深いところだろう。
もともと朝飯屋だった(と思っているが)デニーズと比較すると面白そうだ。

コロナ前から取り組んでいる冷凍食材の販売も、一応アフターコロナ対応と言えるとは思うが、売り場の大きさや設置位置を考えると、テイクアウトに関してはあまり力が入っていないような気がする。
高くてもうまい、スーパーで売っている冷凍食品とは質が違う、くらいの大袈裟な宣伝をしても良いのではないかと思ってしまう。すでに閉店した実験店舗での、冷凍食品をレンジアップだけで提供するという業態は、予想以上に商品レベルが高かった。ロイヤルの冷凍食品も同じレベルだろうから、もっと威張って売っても良いと思うのだが。
ただ、そのためにはテイクアウト専用マーケティング部隊を組織するくらいの意気込みが必要だろう。アフターコロナの事業計画の中にそれが含まれるのかどうか。
DXという世界とは、まだ距離があるようだ。

食べ物レポート, 小売外食業の理論

山田太郎の進化

昨年夏に開いた山田うどんの新規業態、埼玉タンメン山田太郎を時々観察に行く。地元ということもあるが、埼玉タンメンなる造語までした新業態がどう進化していくのか楽しみにしているからだ。2号店は川島(関越インター近く)に開いたので、そちらもそのうち見学に行こうと思っている。新業態の2号店は、1号店の修正がなされた増加試作的な形になることが多いので、1・2号の比較はためになる。少なくとも仮面ライダー1号2号程度の差はあるはずだ。

今回の気づきとして一番の変化は、メニューブックとスマホ注文を併用していたのが、タッチパネル注文に代わっていたことだ。開店時から非接触型のコロナ対応店舗だったが、どうやらスマホオーダーが不人気だったようだ。麺を主力とする業態だけに、中高年男性が多い印象があるが、その客層が問題の原因だと思う。何度か来店して観察していたが、いまだに携帯電話を使っている男性客が多いこと。そして、スマホを持っていても口頭で注文する面倒くさがりが多すぎるようだ。
タブレット式注文はその解決策だと理解できるが、やはり学びはあるようで「紙」メニューがテーブツの上に置かれている。ブック型ではなくペライチというのが、対応客層が誰かを連想させる。一覧できる一枚メニーはファストフードでも多用されているが、メニューが多くなると目移りがして選びにくい。その辺りもレイアウトで工夫しているのがわかる。(元ファストフード従業員としては、もう少し工夫の余地がありそうな気もするが…)
この紙とタブレットの併用策は客層に合わせた柔軟な対応と考えられるが、印刷物の用意は時間もかかるし、単店ではコストがバカにならない。できればタブレットに一本化したいだろうが。まだ試行錯誤中ということか。
また、タブレットはあきらかに一覧性が悪い。いくつかあるメニューからどれかを選ぶとなると、一覧性の悪さは「使い勝手が悪い」と客の不興を呼ぶ恐れがある。この店のように中高年男性が主客層になる場合は客離れの原因にもなりかねない。

すでにコロナが収束しつつあり(感染者数の減少より社会的認識として)、アフターコロナの外食ビジネスがどういう運営方法に落着するのかが目先の課題だろう。外食各社の思惑で「百花繚乱」状態から、どのやり方が定着してくるか。業界標準が定まるには、もう少し時間がかかるようだ。
埼玉タンメンは山田うどんの系譜につながる、テーブルサービスのファスト提供というユニークな業態なので、進化の行方が楽しみでしょうがない。

今回の新商品はトマト味のタンメンだった。トマトスープのラーメンは先行業態があるが、そこのトマトラーメンとは全然違う。埼玉タンメンのスープをベースとしてトマト味に仕上げたものだが、全体的に印象のぼんやりとした味になっている。イタリアンを意識したのか、あるいは先行形態のトマトラーメンを狙ったのか、粉チーズをかけて食べる仕上がりになっている。当然、チーズの旨味成分と塩が加わって完成形になるという、合体方式の麺料理らしい。ただ、それであればチーズが別提供、後掛けではなく提供時から合わせたものを出すべきだろう。
チーズなしで食べるとスープの味が薄く、麺料理として完成していない気がする。ちなみに、薄味が気になって卓上にある醤油とニンニクを追加してみた。予想通りスープの塩味が足りていないのが醤油で補われると旨味を感じる。ニンニクが入いると「イタリアンなトマト味」に変化した。味変を楽しむという意味では、面白いベースだと思ったが、それが狙いでもないだろう。
まあ、色々な試行錯誤の中から「ヒットメニュー」も出てくるのだろうし、あれこれ新しい味を楽しませてほしい。
次に行った時には何が起こっているだろうか。実に楽しみだが、進化速度をもっと早めても良いような気がする。アフターコロナの生存戦略の一つは「変わり身の速さ」だと思うのだが。

街を歩く, 小売外食業の理論

ファサードの魅力と吸引力

札幌狸小路の話を長々と続けているが、実は今回の札幌探索で一番気になった店を狸小路で発見してしまったのが原因だ。何度も書いているが、狸小路の西端は建物がどんどん潰れて、駐車場になったりホテルになったりしている。新陳代謝が激しいと言えばそうかもしれないが、新しくできるレストラン、食べ物屋のほとんどは新築ビルに入居するわけではない。古くて小ぶりなビル・建物にひっそりと開店するのがほとんどだろう。
だから、ビルの2階にある店舗も多い。数少ない狸小路歩行者を店内に引き込むべく、外観のデザインやpopなど工夫している店が多い。だから、都心中心部を歩くより狸小路のはずれを歩く方が、今の札幌で店をやろうと思う若い衆の意気込みが感じられると思っている。そんな街歩きの中、数ある新進気鋭の店舗群の中で、一番目を引いたのがこの店だった。
ちなみに「点と線」は某有名推理作家の出世作の題名と同じだ。何か、その小説と関係があるのかもしれない。勘ぐれば、点と点をつなぐ線みたいな意味で、つながりとか共生などを考えているのだろうか。店名だけであれこれ考えさせられてしまう。

どうやらカレー屋さんが始めたラーメン店のようだが、「新しい麺料理のカタチ」と真面目な宣言をしている。デザインセンスはなかなか優れものだと思う。ただ、ラーメンが退色しているように見えるので、その点は気になる。
ああ、このラーメン食べてみたいなと思わせる説得力がある。コピーもシンプルだが力強い。このデザイナー、センスがいいなあと感心した。

入口横メニュー看板も一点豪華主義といいうのが良い。ついついフルメニューを乗せたくなるのが入り口看板だが、その誘惑をしっかりと退けている。いいぞ、いいぞと思う。
おまけが、地面に置いた行灯だ。夜になり灯りが入れば、これは実に効果的だ。この手の地面に置く行灯は京都先斗町や東京神楽坂でたまに見かける。夜に特化した「ハイセンス」POPだが、使い方が難しい。それをラーメン店でよくやり遂げたものだ。
次回の札幌では、この店を外すわけにはいかない。店内の姿にも期待が高いが、おそらくラーメンのビジュアルも相当にハイレベルでフォトジェニックな仕上がりになっている気がする。
レストランは見た目が8割、ということを理解している人は少ない。見栄えが悪いが味はうまい食べ物など、極めて稀な存在で天然記念物級のレアものだ。それと同じで、レストランの良し悪しは入り口で8割方決まっているものだ。初めて入る店は入り口で決まる。嫌な感じがしたら、決して中には入らない。意外とお店をやっていながら、このことに気がついていない店主・経営者は多いようだ。うちの食い物はうまいはずなのに、なぜか客が来ないという傲慢な店主は、入り口で客を惹きつけないどころか排斥していることに気がつかない。その意味でこの店は必見の一軒だと思う。

繁盛店を作るには、店名とファサードがとても重要なのですよ。 

食べ物レポート, 小売外食業の理論

ファストフードなステーキ 

今回で1000回目になった。ほぼほぼ食べ物の話だけで、飽きずに書き連ねたものだ。原因はコロナの流行で在宅時間が増えたということだと思う。まあ、数が多ければすごいというものでもないし。駄文はいくら書いても駄文だと自覚している。この後はぼちぼちという感じで続けていければ良いのかなというのが1000回目の正直な感想だ。

さて、進化するファストフード界のチャレンジャー代表が松屋だと思っている。成功しているブランドほど保守的であることを考えると、松屋のチャレンジぶりは尊敬に値する。
ただ、そもそも論的に言えば、松屋は最初から異端の牛丼屋だった。牛丼屋というより定食屋だとする方が正しいと感じていた。が、最近の動向を見ると定食屋からスタンド形式のファミリーレストランみたいなものまで進化?したように見える。そして、その進化の波は松屋本体から、姉妹チェーンに飛び火してカオスなファストフードを次々と展開している感がする。その松屋シスターズで一番気になるのがステーキ屋松だ。

吉祥寺の百貨店裏という立地は、ファストフード向け立地とはずいぶんと違う気がする。小ぶりなイタリアンとかフレンチ、あるいは洒落者気味の和食店あたりが似合いそうだ。このステーキ屋松という業態はファストフードとしてはアッパーな価格帯だけに、日常使いができるような客層がいる立地を選んだという見方もできる。
駅前に店を開け、300円の牛丼で客席を1日50回転させるような商売とは正反対な業態を確立する。そのための実験店ということもあるだろう。
面白いのが(コロナ対応だと思うが)入店する前に食券を買うことだ。松屋でも入り口を入れば券売機があるが、あえてそれを店外に設置している。
券売機で食券を買うと、ドアを開けて従業員が出てくる。席を案内するためだと思うのだが、店内のお好きなところにどうぞと言われて、いささか拍子抜けした。
この辺りもアフターコロナで対応が変わるとは思うが、松屋本体でも商品渡し口で食券と引き換えに受け取る方式もある。カウンター越しの対面接触を避けるため、新しい提供様式が試行錯誤されている段階と考えるべきだろう。

席に着くと数分でステーキが出てきた。その速さにびっくりした。肉が焼ける重々という音がしている。肉の上には紙ナプキンのようなものがかけられていて、油飛びを防いでいるようだ。その髪をとると石板の上でステーキ登場となる。石板は相当に熱く、レア状態で出てきた肉をナイフで切って石板に押しつけ好みに合わせて加熱するという仕組みだ。
極端に言えば生肉状態で提供するわけで、注文から提供までの時間が短いのは納得だ。焼き加減も関係ないので従業員が「焼き」の技術を身につけるのも不要だ。この辺はペッパーランチと同じスタイルでファストフード化するための必須技術だろう。

肉は石板に置いただけでなんの調味もしていない。ますます従業員の技量は必要ない。カウンター席の目の前にある多種のソースから好みのものを選んで、肉につけて食べる方式だ。このソースあれこれは、松屋本体で既に実証済みの仕組みだからお家芸に近い。4種類のソースを全部試してみたが、好みはオニオンソースだ。塩、胡椒、ワサビなども置かれている。これで味のバリエーションは確保した、ということだろうか。シャリアピンステーキのように肉の上からソースをかけるタイプには対応しにくいとは思うが、そこは「肉を生でくらう」的に割り切れば良いことだ。
そもそも、この店のコンセプトを考えるとソース上掛けによる単価アップは、あまり期待できそうももない。単価アップを狙うのであれば、肉増量して割引の方がよど補客層的にすっきりしたものになるだろう。

ご飯は少なめを選択

肉が素早く出てきてしまったので、サラダバーに行くのを忘れてしまった。食後に確認に行ったら、最低限の野菜サラダは食べられる状態だった。郊外型ステーキ店の重厚なサラダバーとは異なるが、ファストフード・ステーキ店としては十分だろう。
150gの赤身肉ステーキは、あっという間に胃袋に消えた。自分でも驚くほどの速さだった。これならばハーフポンド、約250gでもよかった。もう少し腹を減らしていたら1ポンドもいけそうな気がする。
この先、この店がどう進化していくのかが楽しみになった。立ち食いステーキのあれこれを学んで改良されたコンセプトだと思うが、やはり二番手の方が色々と改良されている。次回はテイクアウトも試してみよう。もしテイクアウトがあるレベルを超えていれば、アフターコロナの対応進化型ファストフードとみなすことにしよう。その時には新型ファストフードの定義と理論を整理してみたい。

街を歩く, 小売外食業の理論

小麦の奴隷のユニークさ

うまいパンを焼けば売れる、というのは嘘だ。売れるパンがうまいのは確かで、まずいパンは売れない。ただ、うまいだけで売れるわけではない。売るための必要条件ではあるが、売れることを保証する「十分条件」ではない。
世の中には商品の優秀性に対する過信がありすぎるといつも思っているのだが、それをとあるパン屋で思い知らされた。

チョコチップの入った硬めのパンくろわっさ

くどいとは思うが、小麦の奴隷について書き連ねる。冷凍生地を利用して甘いパン(生地に糖分が多い)を作るのは簡単らしい。高級食パンも生地がリッチなのが流行りなので適応しやすいと聞いたことがある。逆に小麦と塩だけのようなリーンな生地(ピザ生地などがその典型)が難しいそうだ。
だから、小麦の奴隷に並ぶ数々のパン、柔らかくて生地が甘くて、ふわふわで、フィリング(中身の詰め物)がいろいろ入っているパンは、対応がしやすいのだろうと想像している。
ところが、その甘いパンのバリーションを開発するのは、個人経営の小規模パン店ではなかなか難しいのも容易に想像がつく。アイデアに関してであれば、流行りのパン屋に行って、売れ筋のパンを買ってきて、それのコピーを作るくらいのことはできるだろう。
ただ、多品種少量生産をしようとすれば食材は増えるし、焼く手間も増える。そもそもコピーとはいえ試作は何度かする必要もある。
個人経営者本人であれば残業時間など考える必要はないから、自分の頑張りが全てだが、パン職人を雇って経営しているとすれば、開発に要する人件費も増加する。

クロワッサンではない

つまり、レシピー開発は手間がかかる仕事で、できればやりたくないというのが本音だろう。ただ、バラエティーこそ「繁盛の基本」要素であることも確かだ。だからこそ、そこを代行するビジネスがフランチャイズとして成立する。
世間的によく理解されていないかもしれないのだが、フランチャイズシステムとは「売れている看板」を使う権利が「売り物」主体だ。次に「独自の商品」の製造許可が来る。商品ありきではなく、売れている看板こそが売り物なのだ。
ただし、どんな分野でも商品の経時劣化というか、時間と共にありふれたものになる、飽きられるのは避け難い。だから、強い定番商品は改良を続け、第二の定番を生み出すまで新商品開発も怠けることができない。優れた商品とは、「進化し続ける商品」であり、商品開発力こそがフランチャイズビジネスの基盤となる。
残念ながら多くのフランチャイズ企業で、この原則を守らない「なんちゃって商品」ばかり投入されるのを見てきた。このブランドも長くないななどと思うことは多々ある。

カルツォーネと言っているが、外側はソフトなパン生地


この観点から、小麦の奴隷がどうなるのか一年、二年は見続けなければ答えは出せない。ただ、一つだけ確信しているのは「都会の匂い」を商品開発の軸にしていることだ。地方の小都市、田舎町をターゲットにしているそうだが、「都会の匂い」はまさにそうした立地の客に来店動機、行きたくなる気持ちをもたらす。基本コンセプトにブレがないことは重要だ。
それはネーミングのひねったセンスに現れている。そして、商品のおしゃれ感も「都会の匂い」には重要な要素だ。硬いパン、柔らかいパン、甘いパン、惣菜食事パンなどの配分も適切に見える。

誰でも知っているメロンパンであれば、形容詞で強化する。地方都市では、まだあまり知られていないようなパンは、イタリアン、フレンチのカタカナ名を濫用して圧倒する。おそらく定番の出し入れと季節商品の出し入れを頻繁に行い、常連客を飽きさせないヘビーローテンションを狙う作戦だろうと推測している。
地方都市の小商圏圏でパン屋を成立させるには、パン職人の腕前だけでは足りない。綿密なマーケティング戦略が必要なのだと、この店舗を実際に訪れて思ったことだ。
ロケット打ち上げビジネスをやりながら、田舎のパン屋を展開する、ホリエモンというビジネスパーソン、すごい人なのだね。

食べ物レポート, 小売外食業の理論

回転寿司のマーケティング分析

スシローがキャンペーンで「東北」ネタメニューをやっていたので、ノコノコと出かけてしまった。スシローアプリでキャンペーンメニューを確認して、開始日も確認して、と入念な準備をした。そして、ネタ切れという悲惨な目に遭わないように開店10分後を目指して出かけた。ところが、開店10分でカウンター席は満席で、待ち時間が発生するという人気ぶり。いやあ、驚いてしまった。
そして、まずはお目当てのホヤ塩辛軍艦を注文した。期待通りというにはちょっと「ホヤ臭さ」が薄い。ただ、ホヤフリークでない限りは、これくらいの「薄さ」の方が受け入れやすいだろう。仙台で食べるホヤは鮮度が素晴らしく匂いもしないが、首都圏まで輸送されてきたホヤは、一種独特の匂いがする。この問題が解決できればホヤファンも増えるだろうにとも思うのだが。

続いて貝の二種盛り。まあ、無難なまとめかたという感じ何する。貝好きにはちょっと物足りないかもしれない。ネタがもう少し大きければなあ、という感想だった。ただ、回転寿司で貝をしっかり食べさせてくれるのはスシロー限定に近いような気もする。ネタとしての貝類が難しいせいだろうか。

そして本日のメインイベントは、夏に続いてリリースの「うに」だった。ただし、これはチリ産ウニを塩漬けにしたものらしい。ただ、なまのウニもうまいが、つけたウニも別のうまさがある。個人的には塩漬けウニが大好物なので、これは実に嬉しい。鮮度管理のことを考えると、こちらのほうが味のバランスが良いという気もする。
回転寿司でしっかりとしたウニが食べられる時代になったかと、思わず嘆息する。店数が増え買付規模が上がったことや、競合他社との競り合いが厳しいせいだろうが、大手三社のネタの質は年々進化しているように思う。競争は大事だ。

ただ、今回のお目当ては、新ネタの寿司を食べに来ることではなかった。お持ち帰りロッカーの見学が目的だった。これはネットで注文したテイクアウト商品(決済済み)を、店員と話すことなく持って帰る仕組みだ。スマホ注文時に発行される解除番号でドアが開く。テイクアウト商品の販売は、この手の「非接触型引渡」が主流になるのだろうと予測できる。
この手の設備に十分投資できる企業体力が業界での生き残りの条件になる。つまり、テイクアウトを販売の主力に置こうとすると、膨大な設備投資が要求される「パワーマーケティング」の時代になる。知恵と工夫で生存しようとする戦略を、木っ端微塵に打ち砕く「数こそ正義」という戦略だ。
これが、どの業態でも寡占状態の最終決着をつける、最後の戦略になる。回転寿司業界は、そろそろファイナルステージに入ったようだ。それは中小企業受難の時代となり、生き残るのがますます厳しさを増すことを意味する。

**誤字修正などをして、再アップしました

小売外食業の理論

コストコでチキン 日本外食の課題がみえる日米比較してみた

コストコのチキン

年末に家族の要望でコストコに行ってきた。開店当初は会員になっていたが、あまりの混雑に辟易して、ここ数年は非会員状態だった。そもそもコストコは会員制業務用卸の商売だったはずだが、今ではすっかり個人ユースが主流のようだ。コロナによる外出制限を追い風にして、商売も順調らしい。
そのコストコでいつも買っていたローストチキンを久しぶりに手に入れた。この立体パッケージはアメリカのスーパーでも良く見かけた、テイクアウト・ローストチキンお決まりの入れ物だ。
チキンの大きさと価格を考えると、もう一度コストコ会員になろうかと思うほどのコスパの良さだ。味付けはあまりくどくどしていないため、追加で自分のお気に入りのソースをかけて食べるのが良い。やはり、あくまで業務用でチキンメニューのベース材料という感じがする。この値段で仕入れて、ソースを自前で作成してレストランで販売すれば、3000円を超えるお値段が取れそうだ。
ローストチキンを食べている時に、クリスマスに買った某ファミレスの丼入りローストチキンを思い出した。

ファミレスのチキン

大きさは、コストコの半分程度。焼き方は腹が上のあおむけ焼き。味付けは色々濃厚だった。値段はコストコの5割り増しくらいなので、小さくて高いということだ。この2品を比較すれば、色々と言いたことが出てくる。ただ、その違いの理由も十分理解しているので、あえて語るつもりはないが、この差は一般の消費者から見ればなんとも腹立たしくなる違いにあたるのだとも思う。

コストコチキンは、自分の中のローストチキン像とマッチした調理の仕方で、うつ伏せスタイルで腹は下向き。背中がこんがり焼けている。チキンは上半身の胸肉、手羽が好みの部位だが、ローストチキンの場合は、適度に油と水分が残った足の部分がうまいと思う。
ただ、物性的にいうと手羽元付近の胸肉が旨味成分となるアミノ酸が多いので、某フライドチキン創始者のおじさんは、味見をする時には手羽元・胸パーツをたべたそうだ。なので、自分の家でローストチキンを食べる時には、解体役をしながら、解体役特権として手羽元部分を最初に手に入れる。
これにママレードなどの柑橘系で甘さ控えめのジャムをつけて食べると、なんともアメリカンな気分になる。ローストチキンは照り焼きソースや味噌、醤油系和風仕立てソースより、やはりアメリカンテイストで食べたい。アメリカ製バーベキューソースが手に入れば、それが一番よく合うと思う。

テイク・アンド・ベイク はアメリカピザ業界の新興勢力

アメリカではデリバリーピザよりも人気があるらしい、トッッピング済みのテイクアウトピザがあちこちで売っている。いわゆる生ピザだ。自宅に大型オーブンがあるアメリカの家庭では、この生ピザが絶対定番に近い商品だろう。日本的に言えば、生ピザはラーメン(インスタントではない方)に近い位置付けだと思う。
Take & Bakeと名付けられた持ち帰りピザは、デリバリーピザの半額くらいで売っている。価格の安さも魅力だが、自宅て焼きたてあつあつを食べられるのが最大のメリットだろう。スーパーでは常時5−6種類のトッピング違いピザが売っている。チーズの違うピザも人気がある。
Take&Bake専門店もあり、そこではお好みトッピングの指定もできるが、人気筋のミックスピザを10−15種くらいを取り揃えている。大きさは標準が16インチ、直径40cmくらいあるので、日本では特殊な家庭でしかそのまま調理できない。オーブントースターやグリルを使うにしても1/8くらいにカットしなければ調理機器の中におさまらない。当然、日本のスーパーでは売っているはずがないサイズなのだ。
そのアメリカンサイズのピザがコストコでは当たり前に手に入るのだが、やはりこれは業務用と考えるべきだろう。家庭向きの大きさではない。値段を見れば、デリバリーで注文する時のMサイズピザ(10インチ)の値段だ。コスパの良さは歴然としている。これもレストランで原材料として購入して、トッピングをアレンジして販売すれば、2倍程度のお値段は設定できそうだ。日本のコストコでも、生まれ故郷のアメリカンなDNAはなくしてはいないようだ。

イケアのホットドッグ シンプルでベストという感じだなあ

コストコに行った翌日にIKEAに行った。フライドチキン、ホットドッグ、どちらも100円程度。立ち食いスタイルとは言え圧倒的な低価格での提供だ。コストコでも同じように買い物後の立ち食いが人気コーナーだった。確かに、安い買い物をした後、高い食事をすればコスパ気分は台無しになるから、イケアもコストコも低価格提供することに、損得をあまり考えていないのかもしれない。
残念なことに、日本の外食産業が提供する低価格コンセプトが、いつもチープになるのはこのあたりの総合的な割り切り、コンセプトメイクができないことにあるようだ。コスト低減のと値付けの考え方に問題がありすぎるのだと思う。
Value for mpney 、支払った金に見合う価値 という考え方をもう一度ゼロベースで見直すべきなのだと、年末に欧米発祥の価格破壊コンセプトに買い物に行って、改めてあれこれ考えていた。

街を歩く, 小売外食業の理論

ディッシャーズ 再訪

びっくりドンキーの新型店舗が開店後一年を経過したので、再訪しようと思っているうちに夏が終わってしまった。オリンピック騒動と長期化した緊急事態宣言ですっかりやる気を無くしていたせいだ。
年内にはなんとかしなければと、新宿までのこのこ出かけてみた。年末の週末なので人出は少なく、店内に客もまばらだったが、この店の真価は平日ランチだろうから、日にちを変えるべきだったと反省した。
基本的には究極の省人化がコンセプトのようで、店内で従業員と対面接触するのは注文した商品が運ばれてくるときだけ。言葉を交わすこともほとんどない。

タッチパネルで注文するのだが、基本のプレートにサイドアイテムや量の調整をすることで自分の好みに仕上げることができる。ハンバーグ五枚乗せとか、飯大増量とか、ガツン系には楽しみなオプションで作成できる。ただ、その分だけお値段は上がっていく。
ソースにカレーが選べるというのは、ちょっと嬉しい。ハンバーグにカレーはかけたくないが、ご飯にちょっとカレーという組み合わせができる。会計は右下にある番号札で、会計機で行う仕組みだった。

橋、ナイフやフォークも木製に代わっていた

ナイフやフォークなども基本的にはセルフサービスになっている。食器が木製に変わっているのは脱プラスチックということだろう。この辺りの最新SDGs対応は、流石に西新宿のオフィスビルというロケーションのせいだろう。けっして某・元環境相のせいではないと思いたい。新宿高層オフィスビル内にあり、SDGsを唱えている会社ばかり入っているビルだから、周りの店でも同じような対応をしているのかもしれない。

カレーソースをつけて1000円程度、西新宿オフィス街では平均的な価格かもと思うが、これが繁華街立地で出店するとちょっと微妙な値付けかもしれない。ファストフードとしては高すぎる。ファミレスとしてみると、妙に接客サービスが足りない気もする。ファストフードとレストランの中間形態、つまりファストカジュアルと考えれば納得がいくコンセプトだ。非対面接触型の店内飲食主導モデルとしてみれば、完成度は著しく高い。
ただ、アフターコロナを見据えて作った店ではないと会社が言っているので、これをうまく発展進化させた「アフターコロ型」をみてみたい。おそらく現在手薄なテイクアウト専用メニューの充実などを踏まえたものになるのだろうが。

現在はピザを導入して夜のちょい飲み需要、パンケーキを入れてティータイムの実験をやっているようだが、本命はハンバーグのテイクアウトではないのかと思う。
あらためて定点観測すべきコンセプトだなと思いながら帰ることになった。気になる店舗でありますよ。

小売外食業の理論

お正月の福袋から経済動向を

今更ながらだが、自宅近くの神社に初めて初詣に行った。というか、福袋を買いに行く途中で行列を見つけたので、ついでにお参りしてきたというのが正解だ。地元の街では旧市街にある古い神社が初詣や七五三で賑わっている。多分、何百年かの歴史がある由緒正しき神社なのだ。
自宅近くの神社は雑木林が造営されて新興住宅地になったときに勧進されてきたものだから、比較的歴史が浅い。小ぶりな神社で普段は宮司もいないようだ。それでも周辺住民の支持は厚いようで、境内はいつも綺麗にされている。
その初詣のささやかな行列に並んでいて気がついた奉納絵馬が、なんと中学の美術部作品だった。これは新年早々良いものを見せてもらった。中学生が冬休み前に頑張って描いたのだろう。すごい力作だ。

今年の福福は、事前にネット予約して中身もわかるし、カードで事前決済するのが主流とニュースで言っていた。衣料品であればサイズ別の予約もできるというのだから、もはや福袋の中身は開けてからのお楽しみ的なびっくり要素は皆無になった。
コロナのせいか、ネット社会の進展か、原因は微妙なところだが便利と言えば便利だ。
そして、今年はようやく抽選に当たった「マクドナルド」の福袋を元旦に買いに行った。というか引き換えに行った。現金払いではなくネット決済にすると当選倍率2倍という特典付きで応募して、めでたく当選した。

お店に行きネット決済の番号を見せると、当選者のリストの中から名前を確認する。リストは4−5ページあったから1日100人以上は当選しているはずだ。引換日は指定されているので店頭での混乱も起きないようだ。(名簿確認に時間がかかったが) 福袋は3150円(税込)で、マクドナルド商品の引換券とおまけの品々という組み合わせだった。

商品引換券だけで販売価格とほぼ同じ金額になる。ということはオマケの分だけ得をするという仕組みだ。黒いものが保冷機能付いたリュックサック。赤いのがフライドポテト型ライト、黒いプラスチックカップと白いプラスチック収納袋がついてくる。製造原価で考えると1000円はかからないくらいのおまけだろう。
仮に原価600円とすると3000円の売り上げに対して2割の販促費をかけたことになる。ただし、クーポンの構成を見ると、原価の安いポテトとナゲットが、ほぼ1000円分入っている。原価と販促費のバランスがよく考えられた仕組みだろう。完全予約制で売れ残しなしであることを考え合わせると、よくできた福袋戦略だと思う。
一店あたり1日100個予約が取れたとすると、三ヶ日で300個販売する。定価3000円(税別)だから、福袋で90万円の売り上げになる。
そして、これはおまけとクーポン券の入った福袋を予約客に渡すだけなので、調理も不要だ。ネット決済であれば、会計すら不要になる。福袋販売は、究極の人件費カットが前提条件となっている。要するに楽して金儲けができる。
1店舗90万円かけるマクドナルド2942店(2021年12月時点)だから、ざっくり27億円を三が日で追加売り上げとする計算だ。おまけにその売上のためにハンバーガーを作る必要がない。クーポン券は後日、商品と引き換えになるので、その時は原価がかかるが、大多数の客はクーポンに合わせて追加注文をするだろうから、クーポン券はまさしく誘客効果を生み出す。
正月早々に他人様の商売で、こんな皮算用をしていた。需要の先食いと言われていた飲食店の福袋だが、ここまで来ると巨大マーケティング戦術に仕上がっている。
おそらく今年は夏の福袋とか秋のハッピー祭りとか、新年福袋と類似の仕掛けが始まりそうな気がする。
今年は、マクドナルドが空前の売り上げ低下からV字回復が始まって4年目になる。コロナを追い風にして伸長した売り上げを、さらにどう伸ばしていくのか。今年も目が離せない巨大ブランドの動向だ。
夢を見る福袋から、随分と世知辛い現実を思い起こした元旦でありました。

小売外食業の理論

ブランド再建 コラボの力

回転寿司、立握り 両部門とも結構気に入っていたのだが

長らく吉野家の傘下にあった京樽がスシローに売却された。テイクアウトが主流の京樽が展開していた寿司レストラン、回転寿司も合わせて事業移管されているので、一体どうなるのかなと興味があった。最初に動きがあったのは、持ち帰り部門で、なんと予想外のWブランド展開だった。

看板を見ればわかる。というか、店名はわかるが、売っているものも想像はつくが、一体なんなのこれって感じもする。京樽といえば、ショーケースに飾り寿司や海苔巻きを並べて売っている場所という記憶がある。寿司を売るというよりショートケーキを売っているような感じだった。最近ではオープン型のショーケースも使っていたが、基本的に握りは扱わない店だったように思う。
それが、この合体店舗では変わっていた。握り鮨部門がスシロー製、飾り寿司部門が京樽製商品という棲み分けだった。ショーケースがはっきり分離されている。
また、基本的にセルフで寿司を取り出し、レジで会計するというスタイルに変わっていた。これは時間をかけて選びたいという客には効果的だろう。対面販売の辛さ(客側)は、注文をさっさと決めないといけないというプレッシャーにある。自分の後ろに待ち客がいたりすると余計ひどくなる。

寿司製造の小型厨房と、セルフ販売ショーケースを設置するだけなので、小型店舗で十分展開可能だ。駅前などのテイクアウト立地であれば相当に戦闘力がありそうだ。今のところ京樽既存店からの転換が進んでいるようだが、握りと飾り寿司という両ブランドのいい所取りができれば、新規出店も可能だろう。
ショッピングモールなどとの相性も良さそうだ。レストラン街に回転寿司を入れて、食品スーパー近くにテイクアウト店を設置するということで効率良い2店舗運営も可能だろう。
最近ぼちぼちとWブランドの店が出始めている。アフターコロナを睨んだ実験なのだろうが、このスシロー×京樽は成功例になるような気がする。

回転寿司三崎丸もブランド転換が始まっている。色々と業界も動き始めているのだなあ。