
全国チェーン居酒屋の嚆矢であった養老乃瀧チェーンが10年以上前に業態転換を始め、居酒屋不況の時代に快進撃を続ける新業態がある。ターゲットを絞り込んだ渋いコンセプトで、オヤジの一人飲みという昭和のテレビドラマに出てきそうな設定だ。オシャレ感は、はっきりってない。
一号店開店の時から興味があり定点観測しているのだが、こと店内に関しては一歩も進化していない。平成時代は、インフレなど夢の如き話で、外食価格は30年近く変わりもしなかった。令和になりコロナの襲来で極端なインフレ経済に変わったことで、この業態も多少価格帯が上振れしたが、それでもどこぞのファミレスのように客にそっぽをむかれるような価格転換はしていない。価格ポリシーのない外食企業はいつも最初の飽きられるのだが。大丈夫か? SとM……………
この業態の店では時代の流れに逆らうが如く、いまだに喫煙可能店も多い。40-50代オヤジの喫煙率の高さと喫煙難民の涙ぐましい喫煙場所探査活動を思えば、このコンセプトでは喫煙席が必要なことは理解できる。いや、喫煙オヤジ専用店舗と考えても良いはずだ。
にところが、最近そこに若い女性だけのグループが増えてきた。どうやら精神的にオヤジ化している女性が増えたのか、それともこのオヤジ向け昭和ノスタルジックムードがファッション的に受け入れられているのか、面白いところだ。

メニューに並ぶのは居酒屋のつまみ、それも定番低価格帯のものばかりだが、居酒屋でもりもりたっぷり食べろなどというのは本来的に間違っている。居酒屋業態を「居食屋」などと呼び始めおかしな転換をしたチェーンは、今は業態として滅亡寸前だ。
平成時代には居酒屋のファミレスか確かに進んだが、自分たちを居酒屋ではないと定義するなら、メニューから酒を捨て去るくらいの覚悟がいる。
ファストフードが酒を提供してもうまく行かないように、居酒屋から酒を抜いたらビジネスモデルが根底から変わることに気がつかないから、能天気な馬鹿騒ぎをしていただけだろう。今では居酒屋に戻るに戻れず、セルフサービス式の焼肉屋に転換したり、あれこれやってみたりするが、都心部では居酒屋業態を見かけることもな苦なった。
その点、この平成時代に開発された「親父のための居酒屋」というスタイルは変えず続けているのは大正解だ。そして、客の方が新しい使い方を考えてくれるようになると業態は長生きできる、まさにその証明だろう。
なのに、最近のメニューは、どうも親父だけではなく女性グループ客に媚を売ったようなものも出現するようになった。ちょっと大丈夫かなと思う。若い女性客にとっては、親父的なものを親父的な店で食するという、普段は絶対しないような生活スタイルのギャップ体験が売り物になっているはずだ。だから、そこを見誤ってはいけないと思うのだが。大丈夫かなあ。だ。

居酒屋といえば日本酒熱燗か瓶ビールで注文するのが定番だった昭和時代。その雰囲気を醸し出しながら、酒のメニューを見るとアルコール弱目の甘い酒がずらっと並ぶ。需要があるからその類の酒が増えたのだと思うが、周りの席にいるオヤジたちは断固落として(おそらく)甘い酒を頼んではいない。この辺りのバランスが難しい。

店内は昭和の居酒屋はこうであったような、チープさと賑やかさが混然となっている。ただ、昭和の居酒屋はデザイン云々などという深い考えはなく、酒メーカーからもらったポスターを無定見にベタベタと貼り、メニューは自分で手書きしたものを壁に並べるだけという、実用から生まれたチープさの現れだった。
最近流行りの昭和レトロ調居酒屋は、そのチープさをデザイン的に再生しているだけなので、チープだが綺麗なのだ。決して猥雑感が出てこない。このオヤジのための居酒屋も、その辺りに微妙な計算が働いているらしくちょっと鼻につくこともあるが、店が古くなるとだんだんとデザイン的なものは崩れていくので、10年熟成された、この業態が始めの頃に開店した店に飲みにいくとちょうど良いと思いますよ。