
札幌でつぼ八が産声を上げた頃、すでに地元では大型居酒屋として有名だったこの店が、今でもしっかりと営業していることに驚いた。昭和後期の居酒屋ブームが起こる前に、すでにテレビコマーシャルをしていたような記憶がある。耳にこびりついていた、あのフレーズが思わず脳内で繰り返された。「グランド居酒屋、ふじでーすよー」となんとも哀愁を帯びたマイナーなメロディだった。
学生時代は大人数のコンパであれば、よくここが選ばれた。値段はどうあれ30-40人が入る伊勢となれば、その選択肢は自ずから限られてしまう。大座敷がある居酒屋の走りだったのかもしれない。

商談の終わった後の打ち上げということで、わずか3名でこの店に入った。札幌在住の方のおすすめで、おまけにこちらはやたら懐かしい気分になったから文句は全くない選択だった。ただ、なんとなく賑わいが感じられないのは宴会席ではなかったせいだろうか。それとも、いまではすすきの定番の外国人客が海芋のせいだろか。確かにインバウンド客には使いづらい店なのかもしれない。が、現在の日本において外国人ゼロという店は貴重な存在だと思う。
あれこれと、北海道的メニューを頼んだのは元・札幌駐在員であった東京出身者だった。メニュー選択が面白い。
忘れてはいけない一品としてラーメンサラダが出てきた。これは締めでも美味いが、スターターとしても優れものだ。珍しく野菜多めの醤油味ドレッシングだった。うまい。

そして、これまたど定番のザンギ、鶏の唐揚げだが、50年続く秘伝のレシピーなどと書いてある。50年とは大袈裟なと思ったが、それは自分の勘違いでしかない。確かに昭和後期から続いている店では50年越えのメニューは当たり前に存在する。これも脳内記憶の歪みというか、昭和がそんな昔だという意識がないせいだ。このザンギもうまい。おまけに大ぶりなのが昔懐かしい。(最近のザンギはすっかり小型化している)

そして不思議メニューが追加された。なんとお好み焼きで、なぜ札幌でお好み焼き?という疑問は湧いてくる。が、これはこれでなかなか美味い。炭水化物系で酒を飲むのはちょっと邪道な気がするが、甘めのソースとマヨネーズのコンビは、日本人にとって鉄板の味。酒に合わないはずはない。
ちなみに札幌圏でお好み焼きといえば、十中八九「風月」という答えが返ってくるはずだが、これは大阪のお好み焼き屋とは全く関係のない屋号だそうで、いわばパクリらしい。だから、北海道人が大阪に行って「風月」(本物)の看板を見ると「おお、大阪にも風月がある」というとか。都市伝説みたいなものかもしれないが、自分はまさに大阪の風月に行って、相覆ってしまった。
札幌の風月がなければ、札幌の居酒屋にお好み焼きが登場することはなかっただろうなあ。50年続く居酒屋が100年続きますように