
最近の日本列島付近の海流は異常をきたしているようで、ここ数年北海道では鰤が大漁続きだとは聞いた。そもそも、ブリは日本海側を新潟あたりまで北上して回遊を終えるはずの魚だったが、今では対馬海流が強まったため新潟どころか青森を超えて、青函海峡すら突破する。大間のマグロも同じようなルートで北海道青森沖合が一大漁場になっているが、そこにブリも参戦しているのだという。ブリはマグロよりも元気が良いのか、青函海峡をつき抜けて東方面海域に進出し、襟裳岬沖あたりで北からくる千島海流にぶつかるまで頑張っているのだ。
ところが、襟裳沖合はもともと北からの寒流に乗って鮭が帰ってくる場所なのだが、ブリの大群に押されて鮭がいなくなってしまったそうだ。
何年もかけて自分のホームに帰ってきた鮭が、ぶりに邪魔されて母なる川を遡上できないという、なんとも哀れなお話になっている。鮭だけが困るわけではない。鮭を獲れないと漁師も困るだろうが、鮭漁の網の中には鮭ではなくブリだけが入っている。まあ、鰤が鮭より高く売れれば、これは外道ながらの豊漁と喜ばれるのだが。
しかし、基本的に北海道人は鰤を食べない。例えば、札幌の居酒屋で鰤ダイコン、つまり居酒屋における定番煮ものにお目にかかることは稀だ。カスベ(エリ)の煮物かカレイの煮物が北海道的な定番に魚だろう。そもそもブリの刺身もほとんど食さない。ぶりの豊漁では金にならないのだ。
ただ、鮭ではなくブリしか獲れない期間が何年にもなると、流石に北海道人も鰤を食べるようになったようだで、最近ではスーパーで北海道産ぶりを見かけるようになった。値段は、明らかに安い。重量単価でみると秋刀魚より安い気がする。
鮭漁で取れる外道な魚なので値段は安い。まさに猫またぎと言われそうだ。鮭の値段と比べれば1/10くらいではないか。

だからなのか、ついに北海道産のブリがその安値を武器に関東圏に進出してきた。半額セールの特売目玉商品なのだが、北海道生まれとしては、これを実食して良いものだろうかというためらいがある。本当は襟裳沖の美味しい鮭を食べたいのだ。なぜか鮭がブリに振り替わってしまうというのは、無念のような気がしてならない。
それにこの大ぶりなサクでは一人で食べきれそうもないし、悩ましいものを見てしまったなあ。