
札幌の地下鉄東西線が停電で運休となった。あとで確認したら6時間ほど止まっていたようだ。テレビのニュースによると、アルミ製バルーン(よくイベントなどで売られているぷかぷか浮かぶやつ)を、どこかの地下鉄駅ホームで手放したお馬鹿さん?がいて、それが架線に接触してショートしたことが原因とのことだった。このバルーン対策はこの先どうするのかはわからないが、想定外の事故だったらしい。
大水による浸水で地下鉄が止まったりすることはあるし、それはまだ納得できるのだが、停電で止まって復旧できない、原因が即時に発見できないというのはリスク管理上に大きな問題があるのではないか。地上を走る電車であれば電車が止まっても脱出はできる。それが畑の真ん中であっても、山の中であっても電車から退避することは可能だ。が、地下鉄ではそうもいかない。真っ暗な中を隣の駅まで歩くのかと思うと外に出るのは躊躇われる人も多いだろう。感電の危険もある。
そんなことを考えながら駅の改札前で30分ほど待っていたのだが、復旧の見通しは当分ありませんというわけのわからないアナウンスを三度ほど聞いて諦めた。この地下鉄を運営する人たちは、いや組織はお馬鹿さんなのだなと。
首都圏でもなんらかの原因で電車が止まることは度々ある。そのたびに思うことだが、いい加減なアナウンスをする私鉄各社(JRを含む)は多い。電車待ちを余儀なくさせられている乗客が知りたいことを伝えようとしない。自分たちの責任になるようなことは一切言おうとしないことだけが徹底されているらしい。
つまり、乗客の知りたいことはシンプルで、停車の原因はなんなのか、いつ電車が動くのか、それが判明できていない時はあとどれくらい待てば、その情報を伝えるられるのかに尽きる。あと10分で運転再開であれば待つという人もいるだろうし、あと1時間止まるというのなら代替の交通手段を探そうとする、あるいは所用を諦め自宅に帰るという選択肢もある。それを言わない。言おうとしない。
経験的にダメなアナウンスをするのはJRの一部駅、「武」のつく私鉄。逆にかなり的確なアナウンスをしてくれるのが、「京」のつく私鉄だ。
鉄道事業者が安全運行を目指すのは当然だが、運行停止に追い込まれた時の危機管理ができていない。営業組織として「客」に対する気遣いが足りなさすぎる。
まして、札幌の地下鉄は「官製」鉄道なので、関東圏私鉄以下の対応だと思う。昭和後半・平成に断行された官製事業の民営化のおかけで、普通化した事業体はかなりサービス業の基本を学んだようだが、今でも官製事業は公共交通に多く残るので、交通サービス業はダメダメ事業者が多い。
大規模な事業体といえば、東京都営地下鉄・バス事業や大阪の地下鉄、札幌や福岡、横浜、名古屋、仙台などの地下鉄事業だろうか。それでも首都圏などでは私鉄と地下鉄の乗り入れが進んでいることもあり(東京メトロは私鉄扱いしても良いと思う)、それなりのサービス水準にはある。それ以外の大都市圏公共交通事業は、民間に移譲した方が良いと思うくらいの低レベルサービス業だ。
それにしても一番不思議だったのは、停電しても駅構内の照明は消えないことだ。電源が運行と改札業務では別なのだな。それはそれでリスク管理ができているのかもしれない。
例の北海道大停電の時はどうなっていたのだろう。確か、東豊線は道路が陥没して地下鉄線路が埋まったのではなかったか。その時の経験値が生かされるということはなかったのだろうか。不思議な組織だ。
ただ、この運行停止事故は、ニュースでの扱いは実に小さく、あからさまに札幌における公共交通機関の地位が低いことに気づかされた。首都圏であれば夜の大ニュースだろうになあ。自動車社会に地下鉄は不要ということらしい。