札幌を舞台にしたコミックはついつい読んでしまう。あちこちに出てくる街の風景を、ここはどこかと推理したり、ああ、ここに入ったことがあると納得したりする。
古くは「最終兵器彼女」の舞台が札幌と小樽だった。「テセウスの船」は札幌と近郊の町、「動物のお医者さん」では北大周辺、「チャンネルはそのまま」では旧HTV本社付近が登場する。
テレビ番組であれば、普及の大名作(大迷作)である「水曜どうでしょう」初期はは札幌と北海道ないのあちこちガロ蹴りになっている。ローカル深夜番組であり予算の都合だったらしい。(その後、舞台は日本各地、特に四国、そして海外へと広がる)
小説で言えば、イチオシが映画化もされた東直己「ススキの探偵シリーズ」で、原作のモデルにBARにはよく通った。(著者はこの10年くらい新作を発表していないのが残念だ)
さて、波よ聞いてくれというお話は、札幌の架空のラジオ放送局が舞台で、画風はシリアスながら途方もないほら話というか、ほとんどコメディーなので、真面目に読んではいけない。とも思いつつ、連載期間が長いこともあり、その間に起きた大地震と大停電をテーマにした甲斐もある。引きこもり女性の社会復活とか新興宗教法人の暴走とか、時事ネタもたっぷり盛り込まれている。
ただ、この本の一番の楽しさは「軽妙な会話」にある。その要因は、描き手の頭の中はどうなっているのだろうといつも驚かされる、日本語のアクロバット的誤用だ。チャップリンに代表されるスラプスティックコメディーをコミックの上で行なっている。日本のエンタメ界では、エノケンから始まりクレージーキャッツ・ドリフターズと続いたドタバタコメディーのコミック化と言えるだろう。(そう言えば、ドリフターズの直径後継者である志村けんの後、ドタバタ喜劇を演じるものはいなくなってしまったなあ)
現在は12巻まで発行済みだが、おいしく読むためには初版発行時の時事ネタを多少なりとも調べてみることをお勧めする。なーるほど、と思うことで楽しみは倍増する(かもしれない)
