
実家のある町ではお盆過ぎもよく晴れた日が続いていた。朝早くに郵便局に行ってあれこれと用事を済ませたあと、駅前のマンションを見上げて身がついたことがある。ベランダには全くと言ってよいほど洗濯物がかけられていない。これが北海道スタイルなのだと思い出した。

生まれて初めてお江戸に行った時、電車の外に連なるマンションを見ていて、ほぼ全てのベランダにさまざまな洗濯物が干されている光景に驚いたものだ。北の国では洗濯物は夏でも室内干しだった、冬に屋外に洗濯物を干したりすればたちまち凍りつく。そのためか、気温が高い夏でも屋外で洗濯物を干すことが少ない。せいぜい布団を干すくらいではないか。それも今では布団乾燥機が使われるのが当たり前になっているらしい。
改めて洗濯物の干していない風景に気が付いた。ただ、それも意識しなかれば気がつかない。どうも脳内の「景色」が、その時々のいる場所で切り替わっているらしい。お江戸界隈では洗濯物の連なるベランダを当たり前と感じ、北の街では洗濯物のない光景を当然と見過ごすらしい。なんとも不思議な脳内記憶なのだろうと、ちょっと笑ってしまった。
似たようなことは女性の服装や飲食店のメニューでも起こっているような気がするが、それはまた別の機会に考えてみよう。