
このルックスを見て、これは冷やし中華だと思う人が大半ではないだろうか。だが、これは冷やし中華ではなく、ラーメンサラダと呼ばれる北海道発祥の食べ物だ。名物料理は「発祥については諸説あります」などと言われることが多い。蕎麦などの麺類は特に、元祖や本家が入り乱れる乱戦地帯だ。ところが、このラーメンサラダは生まれた経緯がはっきりしている。発祥の地は札幌グランドホテルのレストランだ。だから、あくまでもその原型は洋食であり、サラダなのだ。冷やし中華とはあきらかに由緒が違う。(ちなみに冷やし中華も発祥の地がはっきりしていて、仙台の中華レストランだ)
そのはずなのだが、ラーメンサラダが世に広まるにつれ変質と拡散が起こり、今では冷やし中華との境界背はなきに等しい。そもそもラーメンサラダに固有のトッピングなどがないせいだ。ラーメンサラダとはハムなどの肉系トッピングが入ったミックスサラダに、添え物として茹でたラーメンが乗せられているもので、ドレッシングは白のフレンチだったはずだが、今では中華系の醤油味(これが冷やし中華混同疑惑の正体だ)やごまだれが主流になってしまった。
居酒屋などで麺量が増量されて、ますます冷やし中華との境界線が曖昧になってきた。ちなみに北海道では冷やし中華ではなく冷やしラーメンと呼称されることが多い。ヒヤリラーメンは夏季限定の季節商品だが、ラーメンサラダは通年販売される。
つまり、ラーメンサラダと名乗りを変えただけで、冷やしラーメン(冷やし中華)が通年商品化したと考えられる。
確かに北海道では冬でも室内温度は30度近くあることが多いので、冷やしラーメンの需要は夏季限定でなくても良いはずなのだ。
まあ、あれこれ考えても仕方がないし、年中食べられるラーメンサラダは存在自体がありがたい。現在では全国あちこちに進出しているラーメンサラダだが、どうやらいろいろな地方で独自の進化を見せているようなので、この先が楽しみだ。