街を歩く

福袋のクーポン

毎年12月に発売されるマクドナルドの福袋(抽選)はWEBプロモーションとして秀逸なプログラムだと思う。
まず、当選倍率はよくわからないが、個人的経験でいくと2年に一度くらいは当たる。前年に外れていると、当選確率が2倍に修正されるらしい。
割引率が大きいから人気がある。確か、この3610円分の商品券が3000円で購入できたはずだ。そして、商品券以外に細々としたおまけがついてくる。
今回はビッグマック風のライトがおまけだった。できれば夏の福袋も発売して欲しいものだと思う。


福袋に商品券をつけるのは需要の先食いだという意見も多いようだが、実は全く間違っていると言いたい。一つ目の理由は、この高額な商品券(3000円)を買いたいと思うのは日頃からマクドナルドの利用頻度が高い、いわゆるヘビーユーザー、つまり常連客だ。ヘビーユーザーはそのブランドを好んでいるから、利用回数は多い。どうせハンバーガー店にいくならマクドナルドとか、ファストフードに行くならマクドナルドとか、ブランドの選好性が高い客層になる。ただし、日頃から通うので客単価は決して高くならない。セットは頼まず好みの商品を単品で頼んだりもする。
ところが、この商品券・高額割引クーポンがあると普段は頼まない高額商品を頼む。例えばいつもはチーズバーガーを頼んでいるが、今日はサムライマックにしようみたいな商品アップグレードを行う。
自分の例で言えば、普段は決して注文しない(高額なため)フラッペを頼んでしまった。
二つ目が同伴客を連れてくる可能性がある。普段は自分一人、あるいは子供と二人という少人数での使い方をする客が、友人を連れて来たりする。「ただ券あるから、マクドナルド行こうよ」というお誘いをする。これは客単価が二倍以上に跳ね上がる。つまりクーポンを引き金にして購買数量、金額が増えるのだ。
三つ目は使用期限が6月30日、つまりほぼ6か月先になっている。ちなみに無料クーポンにバーガーは4種類設定されているので、おそらく半年で4回、平均的に使用すれば6週間に一回の利用となる。これは利用頻度促進としては相当なものだ。
その上で未使用分もそっくりと売上に乗っかる。(これが需要先食いと言われる部分のメリット、おまけ的効果でもある)

4つ目の売り上げ効果として(実は販売促進として最強なのが)、全量が事前抽選販売ということだ。当日売り出しであれば売れ残りが出る可能性がある。事前抽選販売なので、当たっても店頭に来ない客の分だけが売れ残りとして発生する。
ただ、これは何年か実行すれば当選しても買いに来ない客の発生率がわかるので事前対応が可能だし、事前にネット決済にすることで当日のドタキャン、いわゆる「ノーショー問題」はクリアされる。(来ても来なくても売れたことになる)
それを上手にやているなと思うのが、「ネット決済にすると当選確率を上げる」という抽選心をよく把握した売り方を加えていることだ。
逆に、デメリットは年に何度も実施できないことだ。まず高額商品を売り込むためには、希少性を保つことが大事だ。年がら年中売っているロト系の宝くじより年末ジャンボの売り上げが多いことがその事例になる。
だから社内的には、売り上げが不調になると「夏の福袋」などが取り沙汰されるかもしれないが、現状ではお正月限定で年1回実施、それで十分なのだろう。

そのほかのデメリットとして経理的処理をどうするかとか、販売システムの対応問題とか、技術的な課題は盛りだくさん出現するので、中小規模のチェーン店が真似しようとすると初年度はとてつもなく難しいはずだ。社内からの反対が噴出するだろうと予測できる。
結局、この福袋の売り方は、企業体力に優る大企業だけがなせる力技とも言えるので、業界の参考事例としてはあまり役に立たないと思う。

マーケティングという観点で言うと、奇襲を狙う小技は予算がない弱小が取る戦略で(それしかできないというのが真実だ)、金と体力がある企業は力技でねじ伏せるのが最良戦略となる。業界ナンバーワンのマクドナルドが体力任せに攻めるのは実に合理的なことだ。
日本人は奇襲作戦、つまり義経の鵯越とか帝国海軍の真珠湾襲撃が大好物だが、それは所詮貧乏人がなけなしの予算を全部突っ込むことでしか勝負出来ないだけだ。(そして歴史では奇襲のほとんどが失敗している)


良い子の皆さんは真似をしてはいけませんよ。

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