街を歩く

公園の脇にある焼き鳥屋

井の頭公園の入り口を見下ろす場所で

井の頭公園という言葉には微妙に反応してしまう。中学生の頃、まだ行ったこともない東京で憧れの場所がここだった。原宿でもなく渋谷公園通りでもなく、井の頭公園だった。吉祥寺という街を知っていたわけでもなく、中央線沿線が4畳半フォークソングの舞台だったことも知らない。井の頭公園は、絵本の中に出てくる夢の国のお城的存在だった。
理由は簡単だ。当時全盛期だった深夜放送のおたよりコーナーで、井の頭公園でデートをする(結局、失敗する)話が盛り上がっていたからだ。確か誘った女の子とボートに乗って、そこで何かプレゼントをすると関係が深まる……………という妄想ストーリーにワクワクしたものだ。
それから随分と経って、お江戸界隈で生息するようになり、初めて井の頭公園に行った時にちょいと甘酸っぱい気分になったものだ。
吉祥寺の駅から出て井の頭公園に通じる小道は、今やすっかり賑やかな通りになっていた。井の頭公園は観光客向けスポットとも思えないから、やはり原宿「竹下通り」的な散歩道・デートコースとしての盛り上がりなのだろう。

その公園入り口にある焼き鳥屋はいつも煙が立ち込め繁盛していたが、しばらく前に改装して小綺麗なレストランに変わっていた。ただし、メニューは昔ながらの伝統的なストロングスタイルの焼き鳥が中心で、小洒落たカタカナメニューなどかけらもない。ガツ酢など、居酒屋でオヤジが涙をこぼすほど喜ぶメニューも健在だった。

焼き鳥盛り合わせ、一人前4本を3人分頼むとこの量になる。昼時に食べるには十分な量だ。おまけに、隣の席では小学生くらいの子供が半分いるグループ客がいて、これはまさに焼き鳥ファミレスではないかと思うほどだった。
それでも客の半数以上は高齢者であり、中には自力歩行が難しいものもいる。それでもこの店に押し寄せるのは、若い頃の思い出なのだろうか。周りの客を見ているとなかなかほろ苦いものがあるが、逆にそれが老舗というものだろう。
二階席は座敷で、高齢者向けに厚い座布団というかクッションが用意されていた。眺めは二階席の方が良いのだが、次回は足に疲れのこない一階テーブル席が良いななどと思うほどには、歳をとってしまったのだなあ。

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