街を歩く

あんかけスパ のようなもの

あんかけ とは言い難いと思いますよ

久しぶりに家のものと洒落た喫茶店に行ってランチを食することになった。すでに全国展開を果たした名古屋発の人気店だが、喫茶店というより軽食レストランに近い。全盛期のファミレスはこんな人気ぶりだったなと思い出す。現在のファミレスはサイゼリヤを除いて、ほぼ全てが洋食屋ではなく大衆食堂化している。ハンバーグとピザを中心とした新・業態であったファミレスが、マグロ丼や天ぷら定食やラーメンを出す「なんでも屋」に落魄れた。
そこそこの味の商品はなんでもあるが、特別感は何もない希薄な存在となっている。おまけに最大手が低価格指向で始めた業態をどんどん値上げして、コスパんの悪いメニューになり、価格も高止まりし、ましてや食を楽しむ体験値も低く、ほとんど餌場ではないかと思うほど、全く印象に残らない「ダメ業態」にしてしまった。だから、ファミリーレストランは食の選択肢として最低レベルに落ちていると思う。(これと同等の過ちをしているのが上底弁当で騒がれたコンビニ最大手だ)
その隙間を切り開くように、ファミレスの代わりに軽食を食べられるちょっとお高い喫茶店が全国を席巻しているのだが、値段の高さが受け入れられているので、大量生産による食材原価の低減も不要だ。当然、ローカルチェーンの生まれる余地もある。全国で喫茶店戦国時代が生まれても良さそうなはずだが、なぜか名古屋発コンセプトの一人勝ち状態となっている。

理由はいくつかあるのだろうが、一番は喫茶店が長居をする場所として認められていることだ。混雑する居酒屋のように2時間制などとうるさいことを言わない。長居することがメインで、食事はおまけとまでは言わないが追加の楽しみという客の認識が強みだ。
第二にファミレス業界が手を出した悪魔の所業、アルコール提供を積極的にしない。これは客層を広くするための絶対条件だ。
第3に広めのスーペースを確保していることだろう。4人掛けのテーブルは意外と小さいので、実際にはふたり利用となることが多く、その場合は「広めの席」になる。
第四はリピート促進、つまり毎日来てねという仕組みづくりだ。週刊誌や新聞が多数置いてあるので、モーニング時間帯にはそれを読みに毎日やってくる常連客(高齢者)が多い。
などなど色々と理由は挙げられているが、個人的に思うことは喫茶店メニューらしい「シロノワール」という看板デザートの存在だろう。
昔々、これを試食するために名古屋まで行ったほどの伝説的な代物(デザート)だが、食べた後はなんだこんなものかと思った。それでも、このデザートには中毒性があるらしく、おまけに模倣者も出てこない。最近のオーバーデコレーション気味のデザートと比較すると実にシンプルだが、その戦闘力の高さは、結局のところ完成度の高さということに尽きる。

そんなあれこれ小難しいことを考えながら、さて昼飯は何にしようかと悩んでいたら、名古屋発のあんかけスパを発見した。実はこれが好物で、長年続けた名古屋飯探求の引き金にもなった名古屋名物だ。
ただ、注文して出てきたものを見ると、うーん、ちょっと違う気がする。あんかけスパというより肉なしミートソースというか、具なしナポリタンというか……………
まあ、でもこのオシャレ感溢れる造形がファンには納得できるのだろう。個人的な意見を述べると、「名古屋飯はこんなふうにオシャレになってはいかんな」と思う典型例だった。やはり当初の思いつき通り、シロノワールを昼飯にすれば(多少甘すぎるとしても)満足感は高かったのになあ、と反省した小洒落た喫茶店ランチでありました。

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