
高知県中土佐町久礼、昭和中期に育った人間には懐かしい「土佐の一本釣り」というコミックの舞台になった漁師町だ。高知県の中でもカツオは久礼などと呼ばれるらしいカツオのビッグネームタウンだ。
その駅前は昔はさぞ賑やかだったのだろうなと思わせるように、飲食店が立ち並ぶ場所だが、今では営業している店もまばらになっている。
駅から徒歩10分程度のところに、大正町市場という商店街がある。昔懐かしな市場の雰囲気がたっぷり残っているが、そこに全国から美味い鰹を求めて人があつまる。先日もBSの鉄道番組を見ていたら、友人である久礼の魚屋社長がいきなり登場してびっくりした。
そんなのんびりとした田舎町を度々訪れている。小さな宿に泊まった次の朝、早く起きて天気が良ければ町内をぶらぶらと散歩することがある。朝は人通りがほとんどないはずなのだが、散歩をしている高齢者にはよくすれ違う。こんなに歩いている人がいるのだと感心もするくらいだ。みなさん、お気に入りの散歩コースはあるのだろう。そのコースを余所者がぶちぶちとぶつかるように歩いているわけだ。

その散歩コースの途中で見つけた道標だが、どうやらこの古の道はお遍路ルー路であるらしい。お遍路旅に詳しいわけではないのだが、どうやらこの久礼の町は、前後にお参りする寺の中間点付近にありお遍路さんがよく泊まるらしい。七子峠というのは、確かに歩いて峠越えをしようとするとそれだけで1日かかりそうな難所だ。

海沿いに立つ八幡様は町の規模の割に随分と広い。つまり、昔は漁業の街として金持ち漁師たちがぶいぶいというほど栄えていたことを意味する。大きな神社仏閣を維持するには、大口スポンサーが必要なのだ。
人っ子一人いない境内で八幡様をお参りすると、神様を独り占めしたような気分になる。朝の散歩の功徳というものだろう。
車移動ではわからない街のあれこれを探すには歩きが一番だ。