街を歩く

プチホテルの朝飯

四国の西部、山の中にある地方都市で実に良いプチホテルに泊まった。極上の旅とはこういう物だよな、などと思うほど気持ちの良いホテルだった。そのホテルは老舗旅館の離れとして作られているため、朝食は旅館の食堂まで行く。道を挟んで建てられているから距離があるわけではない。大規模観光ホテルでエレベーターと長い通路の先にある朝食会場に行く思いをすれば、こちらの方が全然楽だ。
早朝というほどではないが早めの朝ごはんはその日の気分を軽くする。

ビュッフェ形式の朝食は実はとても好みだ。愛読する椎名誠氏の著作にビュッフェ形式の朝飯に対する盛大な苦情が登場するが、個人的にはあのなんでもありで好きなものを好きなだけ食べられる形式は実に好ましい。特に、野菜サラダをふんだんに(山盛りにして)食べられるのはありがたい。が、日本旅館の伝統的な朝飯が嫌いなわけではない。それはそれで朝からプチ芸術を見るような気持ちの良さはある。
そんな良い朝ごはんが出てくると、その旅館の評価が3割増しで上がるというものだ。この日の朝ごはんはまさにそういう贅沢だった。
朝飯といえば定番でついてくるサバの塩焼きとかアジの干物はあまり好みではない。朝は干物などなくても良いと思っている。勝負をして欲しいのは味噌汁だ。大量に作って具はわかめだけという味噌汁は些か残念な気分になる。逆に、一杯ずつ注文に合わせて作った味噌汁にありつくと、これまたそれだけで朝食の価値が5割上がると思う。
あとは海苔のグレードも大事だ。西日本では味付け海苔が主流らしいが、好みとしてはなんの味もついていない焼き海苔、それも厚みがあるものが一番だ。味噌汁と海苔さえあれば我が朝食は完結すると言っても良い。
この日は焼き魚にうるめの焼き立てが出された。これは、熱々のうちに骨から身を取りつつ食べるとうまいぞと思っていたら、骨ごと食べろと勧められた。言われるままにカルシウム補給だとバリバリ食べた。実に美味い。
付け合わせの小鉢のどれもがキリッと美味いので、普段は絶対にしないご飯おかわりをしてしまった。結果的に朝から大満腹で、腹ごなしの休憩が必要になるほどだった。 

シンプルな内装の食堂だった。これが良い。ただ、プチホテルと老舗旅館という状況で食事に来るのは女性客ばかりだと思っていたら、なんと同年輩のおっさんだらけ。どうやら、この日はおっさんビジネスマンで占拠されていて女性客は皆無、満腹感とその認識ギャップで余計に打ちのめされた「伝統の朝ごはん」でありました。

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