
お江戸では老舗の蕎麦屋に行くとあれこれ作法を言い出す人がいて、これがなかなか面倒くさい。だから基本的に蕎麦屋に行く時は一人だ。夜になると蕎麦屋を居酒屋のように使う蕎麦屋飲みも好きなので夕方になればぶらりと蕎麦屋に行くこともあるが、この時も誰かと行くということはあまりしない。
同行者がいる場合は速攻で飲んで速攻で帰る。おまけに締めのそばは食わない。だったらなぜ蕎麦屋に行くのだと言われそうだが、だいたいは同行者の求めに応じるという消極的な使い方だからだ。だいたい、締めのそばなど注文するあたりで面倒なことを言い始める「そば通」が多すぎる。(個人的感想です)
ところが、普通に街中にある町蕎麦屋であれば話しが違う。特に、軽食堂というか蕎麦と丼を置いてあるような店となれば、カレー丼という絶品飯が置いてあることも多い。カツの卵とじなど作ってくれる店もあり、はたまた親子丼の頭、つまり鶏肉と玉子のとじ煮などがあったりする。出汁が良い分、チェーン居酒屋などより数段レベルの高い酒飲み場だと思う。だから町の蕎麦屋は居酒屋として天国クラスなので、最初っから蕎麦など当てにせず(酷い話しだが)グイグイと酒を飲む。そして、締めではなく最後のつまみとしてもりそばをちびちびと食う。うーん、天国だ。

その町中華ならぬ町の蕎麦屋というか蕎麦屋食堂で、たまに見かけるのがラーメンだ。細めの麺を使ったシンプルな醤油味のものが多い。昔のお江戸支那そば系の流れだろうか。
そして、お江戸立ち食いそば界のジャイアント「富士そば」がコロナの前あたりから、蕎麦に加えてラーメンを置くようになった。最初はそばに近い味を狙ったのか、魚介スープのラーメンだった。これが実験店から順次拡大して今ではほぼ全店で置いてある。これはなかなか旨いラーメンだ。
その後、醤油ラーメンも追加し、最近はついに真打登場という感じで味噌ラーメンが出てきた。魚介ラーメン、醤油ラーメンまではそばに遠慮をしている感じだった。が、蕎麦とは訣別して独自ラーメン路線が始まるのかなと思った「味噌ラーメン」だが、やはり蕎麦屋のラーメン路線は踏襲したようだ。
なんとも優しい味で、ラーメンスープというより濃い味の味噌汁と言った仕上がりだ。つまり、味噌ラーメンという蕎麦とは一線を画すメニューになるはずが、なんとか蕎麦との共存を図りたいという方向性が見え隠れする。
ただ、これは貴重な味噌ラーメンの変化系だ。ラーメン店では登場することのない「ソフトスープ」と言いたい。ラーメン屋では想像できない味だ。
さて、富士そばで「辛いラーメン」が登場するのはいつになるだろうか。蕎麦系の辛さがどんなものになるか楽しみだなあ。