
おたる水族館はとても小ぶりな施設だが、時々無性に行ってみたくなる。半島の先に突き出したような場所にあり、小樽駅から路線バスで行ける古き良き観光スポットだ。水槽には北の海育ちの魚が多く、海沿いには海獣のプールもある。
トドやアシカに餌をやるのはなかなかスリリングな体験だ。ちなみに餌はホッケをまるのまま投げ与える。トドがダイビングキャッチするのは、実に迫力のある光景だが、夏は臭いし冬は寒すぎる。
さて、なぜおたる水族館が好きなのかというと「オオカミウオ」が飼育されているからだ。オオカミウオはオホーツク海に生息しているらしい。うろ覚えの記憶でしかないが、日本海のあちこちで訪れた水族館ではこの魚を見たことがない。やはり、北方の魚だと思う。
このオオカミウオの顔が異様というか醜悪というか、魚界でも屈指の「コワモテな顔」だ。この顔をゆっくり眺めていると、人生のあれこれを悩んでいたとしても全てが忘れられる。人間に生まれてよかった、オオカミウオに生まれたら自分の顔を見て人生?に絶望してしまうに違いない、などと大変失礼なことを感じてしまうからだ。

どう見ても異相であるし、そのすごい顔の連中が水槽の中で何匹も群れている。オホーツクの海でも大集団で泳いでいたりするのだろうかと想像するだけで恐ろしい。もしも自分がティラノサウルスに生まれ変わったとしても、その凶相にはあまりたじろがないのではないか。おそらくオオカミウオに生まれ変わった時ほどの衝撃は受けないような気がする。
いい歳をしたおっさんがそんなことを考えながら、オオカミウオの水槽前でずっと立ち続けている光景の方がよほどホラーかなとも思うが。
やはり心が疲れた時にはおたる水族館に行って人生の自信を取り戻すのが良振る舞いというものだ。しかし、北はこのおたる水族館に始まり、オホーツクの水族館にも行った。南は沖縄美ら海水族館まで日本の水族館のほとんどに行ったような気がするが、このオオカミウオに匹敵する凶相は見たことがない。基本的に魚の顔は平和的で平面的だからどの魚を見ても違和感を感じることはないのだが、この魚だけは別格だ。見た目だけでいえば、ジョーズを遥かに凌ぐ。
たっぷりオオカミウオと対面して癒しを受ける。そのあとは、階上にある食堂で蕎麦を食べながら、あるいは名物オムライスを食べながらビールをちびりと飲むと、我が精神世界は完全復活を遂げている事に気がつく。水族館は精神安定に良いところだよなあ、と書きながら思い出していた。来週は、小樽水族館に行くとするか。