
カルパッチョを魚料理に変えてしまったのと同様の趣向だ
日本人の料理に関する情熱にはある種偏執的なものがあると思う。イタリア料理では肉とチーズで設えるカルパッチョを刺身料理に変身させたのは日本にあるイタリアンの店らしいが、今では海鮮カルパッチョはグローバルスタンダードにまでのし上がったそうだ。
寿司がアメリカに行って、アボカドとサーモン料理に変形したのは、現地仕様でありアメリカナイズだと思うが、それを逆輸入してカリゴルニアロールなどとありがたがっているうちに、さまざまなアボカド巻が開発されていくのには呆れてしまったものだ。ただ、日本食、特に家庭料理にアボカドが入り込んで行ったのは、この寿司屋(鮨屋ではない)の努力が大きいのではないかと思っている。
同じように隣の国の肉料理だったはずのユッケがいつの間にか、肉の刺身料理にアレンジされ、それが魚を使ったものに進化した。いやいや、これはびっくりだ。回転寿司大手のスシローが展開するすし居酒屋で見つけたメニューだ。
この海鮮ユッケを試してみると、中身はサーモンとブリのようで、確かに白身で油の乗った魚が辛味と醤油と胡麻油という強い味付けには向いているのだろう。
これが、マグロやサバやカツオなどの青魚であれば、ごま油のタレとケンカしやすいような気がする。淡白な白身、例えばタイとかヒラメでは魚の味が持たない。
ただ、この発想は鮨屋ではなく居酒屋的な発想が必要だろう。スシローという巨大チェーンが作ったすし居酒屋は格段に進化を遂げているようだ。
きっとそのうちに、チキン南蛮ならぬ「さしみ南蛮」みたいなハイブリッド料理が出てくるに違いないと思う。もう少し深読みすると「深海魚セット」とか「内陸養殖セット」など、普通の寿司屋を乗り越えるようなメニューが生まれるに違いないと思う。
進化する外食とは、中小のベンチャーではなく巨大ブランドが作り出す時代になったのかもしれないなあ、などとハイボールを飲みながら思うのでありました。