
ちゃんぽんの大チェーンであるこのブランドで、ちゃんぽん(普通味)の調理工程をテレビの情報番組で見て感心したことがある。職人の手作業を排除することで味の平準化を果たし、温度のばらつきを排除した上で、調理時間短縮も達成するというストーリーだった。
同じ業界に働く身としては実に感銘を受けるお話だったが、一般人からすると機械化された料理はどうも感覚的に味気ない、ついて行けない気がするらしい。ただ、冷凍食品をレンジで加熱することが「料理」と認識される現代の常識からすると、このちゃんぽん製造システムは少なくとも家庭ではできないはるかに高度な調理形態とも考えられる。
専用調理器具の開発もさることながら、原材料の標準化(大きさやカット形状に至る)まで突き進む必要がある。おまけにこのブランドでは全ての原材料を国産化するという快挙まで成し遂げている。コロナの後に何度か値上げをしたようで、今ではあまりお買い得な価格とは言えないが、それでも麺業界の中では破壊的な価格設定をしているとも思う。
ちょっとだけ文句をつけたいのは、新商品の投入の仕方がまるっきりハンバーガー屋と同じになって染まったことだ。
新商品=高単価商品=客単価増をねらうという図式は、ある意味業界標準となったやり口だが、実はこれは危うい罠なのだ。表面張力で目一杯盛り上がったコップの水が最後の一滴で溢れ出すように、10円刻みで値上げしたとしても最後の10円がどこになるのかは失敗しなければ気が付かない。「まだ行ける」と思い込むのはマーケティング担当者のわがままでしかない。そして、最後の一滴で溢れ出した水、つまり客数は当分戻ってこない。ダメージ度合いにもよるが、長い時には年単位で客数回復が遅れる。(そして、だいたい社長が首になる)
そうなると、値頃感を再度探るために値引き、低価格価格商品投入、バリューセット開始となる。この業界、真似をするのも簡単だから(笑)「きせつげんてい、誰もが同じ失敗を繰り返すことになる。バーガーの失敗はちゃんぽんでは起きない、起こさないと思うのだろう。他者の事例は十分に学習したと言い張るかもしれない。まあ、一年後の結果を見ればわかることだが。
コロナの後の強烈な値上げ、インフレの中で外食企業のほとんどがこの罠にどっぷりハマっている。好調だったバーガー企業、鶏唐揚げ企業はすでに罠に嵌った後の修正作業に入っているというのになあ。

好物のちゃんぽんが1000円の壁を越えたら、おそらく年に一度くらいしか食べなくなると思うのだ。普通のちゃんぽんより200円も高い「季節限定 変わりちゃんぽん」には手を出す気にもなれない。
どうやら日本の外食企業も米国風のマーケティング施策を取るようになり、人事も米国風に「失敗したらクビ」という時代になったようだ。ただ米国風マーケティングをすると、前職の失敗を転職先でも同じように繰り返す、結構業界的には迷惑な人材を生み出してしまうのだよね。これもあまり知られていない業界あるあるだ。まあ、自戒の意味も込めて……………
こんなことを考えながら食べるちゃんぽんはちょっとウェットでぬるい感じがしてしまう。