街を歩く

名物店の味噌ラーメンで思うこと

安定の味噌ラーメン

ラーメンの街札幌というと、札幌はラーメンだけではないとか、ラーメンの街といえば旭川だとか、あれこれ反論が返ってきそうだ。ただ、50年以上続く老舗も生き残りつつ新興勢力が攻防を繰り返している新陳代謝の激しい街だとは思う。まあ、札幌で新陳代謝というか、開店閉店が多い業態はラーメンだけに限らないが。


北海道はケーキの主原料である、小麦粉、砂糖、牛乳、バター、チーズの主産地であり、ケーキ屋も多い。和菓子でもあずきを含む豆製品、米粉なども全国屈指の生産量なので、和洋菓子合わせての激戦区だ。
前職の上司に北海道で菓子の研究をすると言ったら鼻で笑われた。菓子といえば東京だという。ヘイヘイと文句も言わずに引き下がったが、原材料の供給地も知らず品質に至っては知識もなく、おまけに大多数の有名パティシエは東京生まれでもなければ、東京育ちでもなく、修行先はヨーロッパの各地だったりする。修行を終えたパティシエが地元に狩る時代でもある。原材料調達の理を考えると、北海道に安くて美味い洋菓子・和菓子店があるのは当たり前なのだ。まあ、菓子店の後継が東京で修行をしているということもあるから、東京を悪様に言うつもりもない。
ちなみに、札幌市近郊を含めた有名パティシエの店で売っている商品は、東京の著名店と遜色はないが価格は半分程度(個人的感覚ですが)であり、神戸と並ぶ二大洋菓子都市ではないかと思っている。


東京は菓子市場として大きいが、そこにいるのはたくさんの「客」でしかない。お江戸に老舗羊羹屋は京都から引っ越してきたから、東京では古手だが京都の屈指たる老舗の中に入れば並の歴史だろう。
菓子といえば東京だという、まさに東京というブランドに振り回された浅薄な理屈でしかないと、暗い薄ら笑いを浮かべたものだ。どうも地方から東京に出てきた成功者は二通りに分かれるようだ。一つは故郷を含めた地方を切り捨て東京礼賛するもの。もう一つは東京を罵り地方を信奉するもの。どちらもどっちだと思う。それぞれの土地に誇るべき名物・名産品があり、それは何処かと比べて相対的に良いとか美味いとか言い立てても仕方がない。うまさや好み、嗜好はそれを手にしたものの絶対評価で良いのだと思う。
お江戸至上主義は京都至上主義とぶつかった時に正邪をつけたがる。(その反対も成立するが)
自分と他人の比較をして自分が正しいと信じる性癖こそ人類に備った根源的な欠陥であり罪悪であると思うのだ。全国で展開する企業、ブランドは、その地域の独自性や価値観を消化吸収できる度量が欲しいものなのだが………


まあ、東京モン(それも移住者や移住者の子孫)の鼻持ちならないのは今に始まったことではなく徳川期のお江戸もそうだったから、知ったかぶりの宝庫であり半可通の老舗都市だ。
東京界隈に流れてそのまま住み着いたとしては、この悪癖に染まりたくないものだ。味噌ラーメンを食べながら、そんなことを思っていた。ただ、確かに東京で食べる味噌ラーメンは、換骨奪胎が下手くそななんちゃって味噌ラーメンだからなあ。

東京で食べて美味いと思うのは、九州系豚骨ラーメンをベースに札幌味噌ラーメンのエッセンスを取り込んだ、豚骨味噌ラーメンというハイブリッド商品だ。全国から流れものが押し寄せるカオスな街、東京でこそ生まれる「ハイブリッド」。それを生み出す力こそが、東京の誇るべきものだろう。全国に大都市は数々あるが、そのカオスな力は東京に敵わない。そのうちハイブリッドのハイブリッドが「東京発」として定着する。そんな「東京味噌ラーメン」と元祖味噌ラーメンを食べ比べてみたいものだ。

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