街を歩く

ミュンヘン市の不可思議さ

北の街で冬の風物となった感があるミュンヘン市は、すでに20年近く続いている。コロナの間はお休みしていたが、また元気に開催されるようになった。北の街で最大の冬イベントは知名度の高い雪まつりがメインとなっているが、観光客の過剰増大(オーバールーリズムというやつ)とか、大型雪像の制作依頼先である自衛隊との関係悪化とか(自分としては、どうも市役所の対応がタカビーなのではと疑っている)、あれこれ運営方法も含めた問題があるようだ。
ごくごく個人的な話をすると、雪まつりは夜に行って10分眺めて、あとは居酒屋に転がり込むためのイベントだと思っている。北の街では厳冬期であっても居酒屋の中は常夏の温度環境だ。

大通り公園全体を使う雪まつりとは異なり、ミュンヘン市は2丁目だけを使うこぢんまりとしたイベントだが、その分飲食施設が大量出店するので、冬の屋外立ち食いという何とも奇妙というか、よくやるよねという、摩訶不思議なイベントになる。
ただ、さすがに雪国育ちの面々はとりあえず屋外の寒さには強い。そして、わざわざ厳冬期に訪れる物好きな観光客は寒さこそがご馳走らしいので、これまた屋外耐寒飲食を我慢強く楽しんているようだ。

平日昼でこれほど人が出ているのは実に不思議な光景だ。北の街の繁華街は大半が地下道で結ばれていて、当然のことに地下道を歩けば雪で滑る危険もなく、暖房が入ったぬくぬく快適な地下通路を歩くものが多い。駅から大通りをつなぐ「チカホ」は、どの時間帯も通行人で溢れている。屋外を歩いているのは、寒さ体験が目的の観光客くらいだろう。

つまり、このイベント会場に登場する客を考えると、かなりの割合で「非・雪国」居住者がいるはずだ。一般的に雪の上を歩いて転ぶ人間はほとんどいないが、雪が圧縮されて固まる、つまり氷板状になると実に滑りやすい。スケートリンクを普通の靴で歩くと簡単に滑って転ぶが、この会場のように圧雪の結果で氷板になった場所は、スケートリンクのように平ではなく微妙な凹凸があり、スケートリンクより明らかに、そして余計に滑りやすい。
雪国居住者は冬になると「冬靴」に履き替える。冬靴の特徴は防寒性もさることながら、裏面ソールに滑り止め加工がなされていることだ。車で言えばノーマルタイヤとスタッドレスタイヤの違いみたいなものになる。
だから、氷板上の道路でもそれなりにスタスタ歩く。ところが、非居住者の中には、なんと「夏靴」のまま無防備状態で、この危険な場所に挑むものが多いらしい。

ちなみに圧雪状態のツルツル道路で滑ると、まるでアニメに出てくるバナナの皮で滑った状態になる。滑ったあと、体は水平になり空中に浮かぶ。足は空に向けて上方45度くらいまで跳ね上がり、視線はまさしく空を見上げることになる。そこからほぼ垂直に落下して背中を地面に直撃させる。尻から落ちればまだ救いようがある。尻の打撲はそれなりに痛いけれども、その後の歩行は可能だ。ただ、だいたいの人は受け身が取れないので、背中を強烈に打撲する。運が悪いと反動で後頭部も打ち付ける。失神するほど痛いらしい。
昔、東京の知り合いがすすきのの盛場と真ん中で転び肋骨を3本ほど折った。だから、写真に写っているようなツルツル路面には近づいては行けないのだ。危険が危ない。

ただ、真剣に思い悩むのだが、なぜ観光協会や市役所の観光担当の者たちは、この会場をロードヒーティングにして根本的な安全対策を取ろうとしないのだろうか。今年初めてやるイベントであれば費用対効果とか、来年やるかどうかわからないとか、非対応の理屈は通りそうだが、すでにこのイベントは20年近く続いている。おまけに、その間には東京オリンピックのマラソン開催を押し付けられて、公園周りはあれこれいじりまわしたはずだ。その時についでに改良工事をすれば、あの金に汚いオリンピック委員会(JもIも)ですら資金援助してくれたのではないかなあ、などと思ってしまうのだ。

誰かが転倒事故で死ぬまで何もしないのかな。雪の降らない南の国から来た人が事故に遭えば、深刻な国際問題にもなりそうな気がする。官の世界は狂気のワンダーランドに違いない。

ちなみに、北海道で最初にコロナが公式に発生(認定)したのは、雪まつり会場の管理事務所だったと記憶している。暖房のため密閉、乾燥、混雑、例の三密条件を完全に満たしていた環境だ。今の管理事務所がどう変わったのかみてみたい気もするが、窓開放で極寒地獄になっているはずもなさそうだ。
それに、雪まつりの混雑に乗り込むのは気が進まない。今年はインフルエンザが大流行しているそうだが、転倒事故と感染症拡大、どちらが怖いのかねえ。少なくとも転倒事故は人災だと思う。

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