
新宿にあるお気に入りの洋食屋で、ランチメニューの中に気になる一品があった。山賊焼というもので、長野県松本、塩尻周辺の郷土料理だ。焼きとは言っているが、実際には唐揚げだ。ニンニク醤油の濃い下味がついた、衣がカリカリの唐揚げだ。熱々を食べると、いかにもスタミナがつきそうな(昭和的発想だ)ニンニクガツン系の味がする。油とニンニクは実に相性が良い。今風の流行りであればこれにタルタルソースをかけ、より濃厚化させそうだが、この店はストイックに現地風の体裁を守っている。これはポイント高い。
横についているのはオマケの白身フライだが、こちらも自家製らしきタルタルソースにつけて食べると感動するうまさだった。山賊焼がホームランバッターだとすると、白身フライはスマッシュヒットを重ねる技巧派バッターという感じだろう。

そして、このランチメニューは丼飯と味噌汁がついてくる定食屋スタイルだ。ただ、この店は洋食屋であり定食屋ではない……………はずなのだが。新宿歌舞伎町界隈でこのような店はすでに奇跡に近い。小洒落たカタカナ名のレストランは多いが、どこもお値段はこの店の二倍から三倍になる。
和洋中取り混ぜたメニューが並ぶランチは、昔のデパート大食堂のメニューラインナップに近い。そのあたりが懐かしさを掻き立てると言えばそうかもしれない。

内装はシックなもので、窓が大きいため店内は明るい。薄暗い店が好きな客にとってはちょっと眩しすぎるかもしれないが、窓際のカウンター席では食事を終えた後に本を読んでいる人もいた。確かに読書には向いた明るさだろう。
これくらいの明るさの喫茶店があれば嬉しいのだがなあ、などと思いつつ丼飯を完食して身動きが取れなくなった。どう考えても和風ファストフード店よりコスパが良い。次回はもう少しレトロな定食、ではなくランチセットを注文してみよう。