
北海道人には常識かもしれないが、一般的にスーパーなどで売っている子持ちししゃもは「カラフトししゃも」あるいは「キャぺリン」というししゃもとは別の魚だ。
本物のししゃもは苫小牧近くの太平洋岸、あるいは釧路付近で獲れる希少な魚だ。昔はガンガン(一斗缶)に山盛りにされて売られていたそうで、貧乏人の食べ物だったらしい。
母親が樺太の住民だったのだが、幼少時のおやつは浜に干してあるししゃもを勝手にとって食べるか(どう考えても窃盗のような気がするが、子供だけに許されていたらしい)、海に入ってウニやホヤを自分で獲っていたそうだ。まさに、樺太ワイルドライフではないかと驚いたことがある。そのワイルドなおやつ、ししゃもも、うにもホヤも、全て超がつく高級食材になってしまった。
この季節になると軽く炙ったししゃもが食べたくなるが、ひと串の値段を見ると到底手が出ない。ししゃもの隣に並んでいる「コマイ」であればなんとかなるが、この安い方のコマイも記憶にある価格からするとすでに五倍ほど値上がりしているのではないか。そのうちコマイも買えなくなりそうだ。
ちなみに、ししゃもの世界は男尊女卑ではなく、「女尊」男卑なメス社会なのだが、このオス・メスの値付けを見ると、多少ながらオスの地位が向上したようだ。昔はオスの値段がメスの半額以下だったような気がする。
まあ、人間社会も最近では男性の劣化が激しいから、シシャモ業界のように「オスはダメ商品」なので安売りという時代が近づいている。現在のジェンダー問題は男女間の不公平、不公正の排除だと思うが、近い将来起こるのは、弱小し劣化した男性の保護みたいな話になりそうだ。「こんなダメ男でも、とりあえず生きている以上保護してやるか」とか、「こんな使えない男にも生存権は認めてやらなければならない」みたいな逆ジェンダー問題になり変わるだろうなあ。
「下がり続けた底辺層である男性の地位向上」なんてテーマが2030年代に世間を賑わすのだろうか。まあ、そんな社会の方が平和で良いと思いますけどね。