
昭和の後半には一世を風靡した西武流通グループはすでに解体され跡形もない。名前だけ残っている西武百貨店も経営はセブンイレブングループだし、パルコは大丸松坂屋連合の傘下にある。西友はウォルマートに買われた後に楽天に転売され、その楽天からも見放された。(楽天が債務悪化のため手放した格好だが)ファミマも伊藤忠傘下にある。まさに、強者どもが夢の跡だ。
そしてもう片方の西武グループ、西武鉄道グループもこれまたファンドの支配下にあるのだが、西武流通グループが解体された(?)ため、西武線の大型駅周辺に鉄道グループが経営する商業施設を再編・再構築している。まあ、これが鉄道ビジネスの正しい在り方だろうなあ、とは思う。鉄道と流通の経営がバラバラというのはビジネスの合理性としておかしな格好だったのだ。
その鉄道グループの本拠地で駅周辺再開発が最終段階を迎えた。電車の整備工場跡地を使った大規模モールがオープンして、駅の周りには全く隙間がなくなった。駅前にタワマンが聳え立つ隣にできた徒歩型モールだ。これが、なんとも都会的な雰囲気を醸し出す。二子玉川とか中目黒あたりの気配が漂う。埼玉県西部の地方都市が光り輝く「シティー」に変身した。(大袈裟だな)

2階は駅から続く歩行橋で結ばれているので、1階がデパ地下的な食品ゾーンになっている。その一階の半分以上を占めるのが「フードホール」だ。フードコートとフードホールの何が違うかといえば説明に困る。勝手に自分なりの理屈を捏ねてみると、フードコートは全国ブランドの低価格チェーンが5-10入居している長屋みたいなもので、価格帯も低く抑えられている。
フードホールは全国ブランドというよりもっと個性的な店が多く、提供される料理・メニューも尖ったものがそろっていて価格帯も一人前1000円越えの高額なものになる。長屋というよりおしゃれな低層メゾネット・マンションという感じだろうか。
当然ながら、この諸物価値上がりのご時世で、新規開店は長屋より高級マンションが良いという結論らしい。

コロナの後遺症というべきか、通路幅も含めて空間には余裕がある。またファミリーレストランのように多人数が同席するような場所よりも、少人数で使うテーブルが中心で、この辺りがショッピングモールのフードコートとは一番違う感じがする。
ただ、どれだけ頑張ってみても時間が経てば、町の長屋的な変化はするだろうなあとは思うのだが。場所が場所だけに。だって、埼玉だしさ。

プレオープンのタイミングで見に行ったので、まだ人出は限定されていて、それでも珍しい店には行列ができていた。台湾の夜市をイメージした屋台料理風の店が一番人気だった。ちょっと前であれば、メキシカンとか東南アジア系の店が目立っていたものだが、料理の世界でも流行の変化は早い。台南担仔麺が流行ったのは30年以上昔だが、それがリバイバルしそうな雰囲気だ。
ただ、小籠包は台湾料理ではなく香港あたりの広州がメインな飲茶の一部だったと思うけどな。まあ、細かいことは気にしない……………