
下関から連絡船で海峡を渡った。船を降りた先に門司駅がある。JR鹿児島本線の始発駅だ。下関まで伸びていた山陽本線から繋がる九州の大幹線がここから始まる。現在のJR新幹線網と高速道路の配置で日本の地理をついつい考えがちだが、実は古代日本から連綿と近代まで続いた幹線道路、幹線経路は今とはずいぶん異なっている。
日本最大の幹線経路は間違いなく瀬戸内海海運で、それに続くのが日本海を北上する北前ルートだろう。現在の東海道も歩いて移動するために使われていたが、物資輸送はもっぱら太平洋沿岸を伝う海上ルートで、これが意外と細いものだった。瀬戸内海雲の拠点である門司下関は海上ルートの一台拠点だったのだから、そこから鉄道が陸路に伸びたのは当然のことだっただろう。
お江戸で言えば東京駅みたいな由緒ただしきターミナル駅だ。

鉄道の起点駅のホームはいつ見ても感じ入ってしまう。海の道につながるターミナル駅としては高松駅も昔は似たような感じがあった。今では随分と変わってしまっているが。青森駅も青函連絡船が通っていた時代は、港と駅のホームが直結する昔ながらの駅だった。
それでも、港直結型駅としてはやはりこの門司港の駅が最も優雅だろう。四国や北海道に渡るのは内国ルートだが、門司や下関は国際港だ。江戸末期に出来上がった、いわば成り上がり者の神戸や横浜とは格が違う。古代日本から続く伝統と栄光の港なのだ。その片鱗が駅のホームにも見られる。

駅舎内は今ではきれいに再整備されてほとんど美術館のようなものだが、みどりの窓口は現役の施設だった。JRグループの中で独立独歩なスタイルを貫くJR九州らしい、自ら観光地を作り上げるという意志が感じられる。
ちなみにJR東は東京、首都圏の通勤客が払う金の再配分、JR西は関西圏の通勤客運賃の再配分では金が足りず、ローカル線を徹底的に縮小の方向。JR四国と北海道は、あとはJRグループ東西に吸収されるのを待つばかりなのだが、どちらの会社も上場企業なので赤字会社の吸収合併には及び腰だし、再建プランも持っていないだろう。JR東海は東海道新幹線の上りで食べているだけだし、本来切り捨てるはずのローカルが少ないので我が道を行ける。






そんなJR各社の経営方針の違い、事業戦略の差は歴然としているのだが、JR九州が一番鉄道事業、つまり本来の運輸事業から離れようとしているように見える。首都圏や関西圏で通勤客用の住宅地供給を主力に路線経営を進めた東急グループや阪急グループと似た、鉄道+不動産業+生活産業による総合収益事業を目指しているように見える。
博多駅や鹿児島中央駅の取り組みを見れば、そのあたりはあきらかだ。おまけに子会社は九州だけでなく東京でも支店(レストラン)を出店して広域営業活動をしている。それも駅の外だ。
東京駅や大阪駅の改装後の姿を見れば、JR九州との違いは明らかだ。鉄オタとしてはその辺りがちょっと嬉しい。ちなみにこれは撮り鉄や乗り鉄から派生した、事業鉄とでもいうべき分野で変わった楽しみ方だろうな。これを楽しむものは極めてレアだと思うけれど。