街を歩く

NYT おすすめのリアル

どこかでみたようなカラーリングの車体は山陽本線の列車だ。広島から岩国まではそれなりの本数が走っている。大都市圏の通勤列車だ。編成車両数も多い。ただ、この色は妙に懐かしい感じがする。今でも多少は走っている西武線の旧式車両と同じ色に見えるせいだ。
だが、同じ電車が岩国から先はほとんどローカル線扱になる。運行頻度は激減して、一時間に一本しか走らない。思い返せば、仙台を過ぎた東北本線も似たようなものだから、JRの都市近郊線以外はみんなこの程度の運行形態なのだろう。奥羽本線はもっとひどかった。
もはや鉄道は地域の主要交通網とは言えない。運転が出来ない交通弱者の限定利用しか考えられていない。すでに長距離移動は新幹線、そこから短距離移動は自動車でという分業も成り立ってはいるのだが。短距離移動用のローカルバスは、ほとんど病院に通う老人向けという扱いだ。
つまり、田舎町を旅行する者にとって、今や日本は結構不便な国になっている。すでにアメリカのように、飛行機で移動した後はレンターカーでという世界になってしまった。
世間に溢れるインバウンド客は流石にこのローカル線には乗っていないだろうと思っていたが、しっかりと数組乗り込んでいた。面白いことに西に進むにつれて、インバウンド客の人種が変わる。近さもあるのだろうが、半島からの旅行者が目立ってくる。もう一つの気づきだが、アジア系旅行者は車内でもうるさい。欧米系、インド系と思われる旅行者は大概がおとなしい。東南アジア系の集団も人数が多くなればうるさくなる。国民性なのか、乗車時のマナーが国によって違うのかはわからない。コロナの時と同じように、いきなり電車の中で殴りかかる暴力ジジイが出現しそうな雰囲気だ。飛行機で来れば東京も大阪も福岡もほぼ変わらないだろうに。なぜ、西にくると旅行者の構成が変わるのか、この辺りが実に不思議だ。

岩国での新発見は、コンビニで見つけたヨーカンパンだ。初めてみるタイプだが、高知の宿毛で作られているものに似ている。味付けはそれなりに甘い。一度、某ケンミンショーでヨーカンパン特集でもしてくれないものだろうか。

いや、某公営放送でブラ◯モリの後継番組として、珍しい食べ物行脚を仕込んでもらっても良いのだが。商品名が出せないから無理か。

延々とローカル線を乗り継ぎ、山口県県庁所在地に初めて辿り着いた。これで、日本47都道府県全ての県庁所在地を踏破したことになる。47都道府県全部に足を踏み入れたのは随分前のことだが、福井市と山口市は47都道府県達成後も行く機会がなかった。個人的な感覚で言えば、山口市は鹿児島市より遠い。そもそも元・長州には本当に来る用事がなかったせいだろう。初めて山口県で訪れた場所は大島にあるジャム屋で視察だった。福井市に行ったのは恐竜博物館を見に行くついでだったが、山口市にはついでに寄る場所もなかった。

西国武士が全盛を極めたのは平安末期から平氏勃興の時期だろう。その後、東国武士に擁立された反乱軍が、平家と共に西国武士連合を蹂躙し、しばらく軍事政権は東国にとどまった。都落ちした初代将軍は、よほど京が嫌いだったのだろうし、西国武士集団を恐れていたのだ。その後を継いだ東国武士団の首領も東国の田舎出身でありながら、一度負けた内乱を西国武士の支援を受けて制した。そのため、本拠地を京に移した。これが失敗だったのは脆弱で短命な政権だったことで証明済みだ。
それでも一時期は勢力を強め、東西で二政府体制をとった室町政権が急速に弱小化する。それにつれ、東国政権による支配から頚城を解かれた西国武士団は、大規模な地方軍閥状態を迎える。東国武士が鎌倉以来の正統性であれこれ諍いをしているうちに、西国武士集団は実力本位の争いと統合を仕掛けていた。

ただ、それも最後は東国をまとめ上げた徳川政権に臣従することになる。西国武士雌伏の時期は、また300年近く続くことになる。なぜ武家政治が続いた1000年近くの間、西国武士が東国武士に従えられていたのか、その理由を考えると面白い。おそらく要因は西国農業の生産性が東国と比べて高かったことにあると思う。中世から近代にかけて東国は常に貧乏地方だった。そのために、金の持っている西国を略奪するしかなかった。
小京都を作った大内氏のように栄華を極めた豪族は、東国の歴史を眺めてみても奥州藤原氏くらいしかいない。関東以北で強大な軍事政権ができなかったのは、戦争を続けるだけの資金を持てなかったせいだろう。
国というものは金がないと凶暴化する。いつの時代も、それこそ今の時代でも同じことで、ユーラシアの西で起きている戦争も同じ構造だ。貧乏が嫌になった国が、自分より先に金持ちになりそうな国に強奪を働く。金目当ての戦争に正義などあるはずもない。

ところが、比較的金持ち揃いだった中世日本の西国では、そんな弱肉強食的思想を持つ大名が少なかった?ようで、西国武士は文化的であったのかもしれない。

ニューヨークタイムズでおすすめの観光地指定された山口でそんなことを思っていた。しかし、この街、観光地にするならもっとあれこれ改善しないと悪評が立ちまくりそうだ。
少なくとも、JRの駅に早くコインロッカー整備してくれないか。県庁所在地の駅でコインロッカーないなんて見たことないぞ。駅前にタクシーもいないし。バスは一時間に一本やってくるみたい超間引き運転だ。せめて観光資源のある県庁付近までシャトルバス運行くらいしてくれよ、と言いたい。

うーん、やはり金持ちのお殿様の血を引く気性ののんびりした一族が多いのだな、きっと。

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