
徳島駅の地下にある居酒屋横丁的な施設が、何とも中途半端というか難しい営業をしている。観光客からすれば駅ビル地下に地元の名物料理屋があれば実に便利だ。しかし、近くのオフィスから来る地元客からすると、全国チェーン店でも問題はないだろうし、その方が喜ばれるのかもしれない。たとえば、大都市からの旅行者にとってシアトル系コーヒー店はありふれた街の光景だが、地方都市で言えばまだまだ「目立つための場所」なのだ。
確かに一階は観光客と地元客のミックス需要に対応して、土産物菓子屋とシアトルコーヒー店とファッション関係が雑居していた。
どうも自分の勝手な見立てだが、新幹線駅がある県庁所在地は地域の中核商業地になっている。広域から人を集める、県内の中心地としてそれなりに人気がある場所だ。ただ、大多数の県庁所在地は昔ながらの繁華街が駅とは違う場所にある。なので市内の商業地が二極化してしまうが、旧繁華街、それも大体はお城の下にひらけた旧城下町は、駐車場対策の遅れにより陳腐化し老朽化が進んでしまう。
ただ、このモデルも新幹線が通っていない街には適用できないみたいだ。四国の4県庁都市はこの典型で、どの街も駅前がパッとしない。駅前、駅ビルの再開発をしてみても郊外に流出した地元客を取り戻すことには成功していないように見える。特にJR駅前の賑やかさがない。松山や高松では私鉄駅前がそれなりの賑わいを見せるが、それでも中途半端だ。おそらく鉄道を通した頃の政治情勢がまちづくりに影響を及ぼしたのだろう。あるいは先の大戦で空襲により街が平面化?したかどうかの差なのかもしれない。
徳島駅前にあった三越も今ではテナントビル化しているようだが、駅前の回遊性は見られない。ちょっと寂しい感じがする。ずいぶん前に訪れた時には、何だかもっと活気がある街だったような記憶がある。新駅舎が出来てもっと賑やかになるのかと思っていたのだが意外だった。

その難しい立地で、これまた集客が難しい地下階に通常の飲食店を誘致するのが困難極まるであろうことはよくわかる。地元客で賑わうのはせいぜいランチタイムの一瞬だけで、夜の時間になれば地元客は従来からある賑やかな繁華街に流出していく。
それを食い止めるべく、居酒屋業態を多種類放り込み、昼夜の二毛作ではなく、夜昼の二毛作を目指している。ただ、居酒屋と定食屋は根本的にメニューの設計思想が異なるので、これは計画通りになるかというといささか怪しい。
夜と昼と二度見に行った。客の入りが当然店によって違う。昼も夜も満席になていたのは、何と鮨屋だった。ただ、その鮨屋でも夜は酒を飲んでいる客が少ない。なかなか思惑通りに客が踊ってくれないものだ。
そんな苦労を目にしながら、あれれと思ったのが居酒屋ランチで「モツ煮込み定食」というものがあったからだ。確かに定食屋でモツ煮を出す店は見たことがない。これは意外と盲点かもしれない。
地元の埼玉県で展開している郊外型うどんチェーン店の人気メニューがモツ煮定食で、意外とおっさんだけではなく、女性や子供にも好まれているらしい。ただモツ煮定食は基本的に安い。肉料理として生姜焼き定食やハンバーづ定食より1ランク安いから成立する料理ではないか。
そのモツ煮定食が1000円弱という値付けは強気というか、すごいなと思ったのだが、隣の席(カウンター席)に来る客が全員これを頼んでいた。あれまあ、と驚いてしまうキラーコンテンツだった。
勝手にあれこれと地下の居酒屋集合体を批判していたが、やはり現場を見なければ分からないことは多い。昼間のモツ煮込みは普通の定食屋で食べられないから人気メニューになるようだ。この発想は出てこないなあ。他の店でも夜メニューが昼の裏メニューとして人気を博しているのかもしれない。いやいや、おみそれしました。