
徳島の食文化は基本的に大阪ベースだと思っていた。今では地続きで神戸に高速道路で繋がっている。駅前からは当たり前のように、神戸三宮行きや関西空港行きの直通バスが出ている。
会社員時代も、徳島に関しては大阪と同様な販売施策でいけると踏んでいた。四国の他の三県はそうはいかない。地名の名前の通り、各県ごとに嗜好性やら販促に対する反応が違うので、四国はマーケットサイズの割に苦労する「重たい地域」だった。
ところが、どうもその常識が通じないようで、うどんに関しては讃岐スタイルがストレートに伝播しているらしい。大阪のうどんはどうなっているのだろうか。
徳島といえばラーメン県だと勝手に思い込んでいたが、隣県うどん王国からの侵略には寛容らしいのだ。

店内に入れば、カウンター前に行列をしてうどんとサイドアイテムをセルフでとるスタイルだった。どうもテーブルに座り注文をとってもらうというお江戸の常識は通用しない。このスタイルに文句はないのだが、それでも香川県の外で、某全国チェーン以外がこういう売り方をしているとは、なんだかすごいことだ。

まずはかけうどんにげそ天といういつものスタイルで食べてみた。これは確かに「讃岐うどん」だ。ちょっと麺が柔らかい感じもするが、高松でも店によっては麺の固さ柔らかさには差があるので問題といえない。出汁も濃いめの旨さいものだった。普通に美味いうどんだ。

それでも気になって、追加で釜揚げうどんを頼んでみた。釜揚げうどんは、ある意味かけうどんよりもうどんの質がわかると思う。茹で加減であったり、うどんの仕上げ方であったり、かなり素直にうどんの基本が現れるメニューな気がしている。だから、時間があるときはかけうどんではなく釜揚げうどんを注文する。釜揚げうどんは茹でたてで出ることが多い。ちなみに、某全国チェーンではこの差が出ない。茹でたうどんを出汁に入れるか湯に入れるかの違いくらいしかないようだ。
結論として、この店は釜揚げうどんがうまい。時間がかかるが、こちらが好みだ。つまり、讃岐スタイル、それもストロングスタイルのうどん屋であり、なんちゃって讃岐うどんではない。
瀬戸内海を挟んだ岡山と香川のうどんの差も面白いと思うが、香川と徳島のうどんに差がない方がもっと面白い。こころをそそる研究テーマだ。ただ、なんとなくこの讃岐うどん伝播現象は、比較的最近起きたことのような気もする。時間をかけて調べてみようか。