街を歩く

銀座へ老舗サンドを買いに行った

銀座の一角にあったおフランスの百貨店があれこれ変転して、今ではユニクロの店になった。わざわざ銀座でユニクロ製品を買いたくなることがあるのかと、ささやかな疑問があるのだが、インバウンド観光客であれば、今の円安で爆買いしそうな気もする。だが日本人であれば、ユニクロのロゴ入り袋をぶら下げて銀座を歩くのはちょっと物悲しい気もする。
そのユニクロのビルにEDLP EveryDay Low Price を標榜する安売りスーパーのオーケーが出店した。開店当初は業界人が視察で押し寄せていたようだが、銀座だから特別高級品を置くということもなく、普段通りのオーケーらしい商品が並んでいた。多分、日本人は本当に貧乏になってしまったのだ。ちなみに、サントリーのウイスキー角◯◯は売り切れていた。半島から来たインバウンド客に人気なのだそうだが、大瓶まで売り切れているのには驚いた。

スーパー視察のおまけに東銀座にある超老舗のコロッケ屋?に足を向けた。この店のコロッケ、メンチカツ、豚カツを挟んだサンドイッチは間違いのない絶品だが、コロナの間は買いに行くこともなかった。たまたま行ったとしても店がしまっている可能性もありそうだし、電話をかけて確認するのもなんだかなあという感もあった。

注文する時には、具材を選び、挟み込むパンを食パンかコッペパンかを決める。昼時には事前に出来上がったものが準備されてあり手早く手に入る。たまたま売り切れていても、すぐに作成してくれるのでさほど待つ必要はない。
食パンを選ぶと、懐かしい包装紙でぐるっと巻いてくれる。紙を止めるのは輪ゴムだ。この昭和中期の典型的な包装が今では何かとてつもなく新しい感じがする。コンビニで売っているサンドイッチは透明なフィルムで包装されている。それが今の標準的な包装形態なのだが、それと異なる「紙包装」は、なにやらエコ的な観点からも優秀に見えてくる。

食パンの耳はついたままだから、なんとなく「母親の手作り」的な見え方もするが、今では「母親の手作り」であっても耳無しのサンドイッチ用食パンを使っているから、これは「昭和の母・手作り」とでも表現するべきだろう。
あの頃のサンドイッチといえば、いちごジャムが塗っただけが当たり前で、ゆで卵のスプレッドやハムが挟んであるだけで贅沢品だった。ましてや、カツサンドなど高級レストランの食べ物だったような記憶(あるいは捏造されたイメージかも)しかない。
このポテっとしたフォルムはいかにもうまそう感がある。

カットされた断面を広げれば、「おー……………」とため息が出てくる。薄めのとんかつが二重に入っている。ベースはソースの味がついているシンプルなもので、ガブリと齧ると口の中でカツとパンが溶け合ってゆく。
当然、このひと組のサンドイッチはボリュームたっぷりとしていて、これだけで昼飯は十分だという気がする。全国チェーンのハンバーガー、Big Mと比べて、どちらが好みかと言われたら、やはりこちらになる。
銀座周辺には、こんな穴場的名店があちこちに存在している。高級ブランドが立ち並ぶ街で昭和レトロを楽しむのはまさに快感だが、この店にインバウンド客にバレてしまい、店頭のメニューが英語になり、あちこちの言語が飛び交う行列ができ、そこに並ぶようになったらどうしよう。ちょっと想像したくない光景だ。

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