食べ物レポート

天王寺の飯屋 極上でした

天王寺に泊まった夜、散歩をしていて発見した定食屋に入ろうとしたらすでに閉店時間間近だったので、翌日に出直すことにした。ランチタイムだが開店時間は遅い。普通は11時くらいに店が開くだろうが、この店はなんと12時をすぎてからの開店だった。
昼のピークを外して午後1時過ぎに出向いたが、すでにというか、まだというか、満席だった。人気店なのだ。隣のラーメン屋はさほどの混み具合でもないようだったから、ランチ難民の街ということではなく、やはりこの店が人気なのだろう。

カレーライス 生卵入り は、大阪風だろうなあ あとは、きつね丼かあ

まずはオムライスを注文する。時間がかかるが良いかと聞かれたので、問題ないと答えた。この店に入る前からオムライスにすることは決めていた。やきめしにも心引かれる。いつのも迷い方だが、この日はもう一つ迷うことがあった。典型的な町中華料理屋のように見えるが、ラーメンはない。そこがちょっと不思議だ。ラーメンがあったら食べてみたい気はあるのだ。多少無理しても……………
と思っていたら、中華そばと書いてあった。うーん、この書き方は騙し討ちみたいなものだ。きつねうどん、たぬき蕎麦の後ろに中華そばと書かれてあると、蕎麦の一種だと勘違いしてしまった。これは多分、いや間違いなくラーメンのことだ。しかし、周りの席を見渡してみても誰一人中華そばを食べていない。半分の客がオムライスを食べている、あるいは待っている。これは、一旦思考停止にしよう。

美味しいオムライスだったが、特に大阪風ということはないようだ いつでも食べたい「うまし」だ

そして、メニューにはしっかりと「たぬきそば」があった。朝、駅蕎麦で確かめたのだが、どうやら大阪ではたぬき蕎麦の定義がお江戸と違うらしい。駅蕎麦だけが特殊ということではなく、一般食堂でもたぬきそばは存在している。
麺の上に油揚げが乗っていると、うどんであればきつねうどん、蕎麦であればたぬき蕎麦と呼ぶらしい。お江戸風にかけそばの上に揚げ玉(天かす)が乗っている「たぬき蕎麦」はメニュー上存在しないようなのだ。これはやはりたぬきそばも追加注文して実態調査をするべきではないか………

メニューは全く乗っていないサイドメニューは、背中の後ろにあるガラスケースの中にたっぷり入っていた。セルフサービス式でおかずが10種類ほど選べるようだ。
チラリと覗いてみると卵焼き、ほうれん草のおひたし、焼きししゃも、コロッケなどなど魅力的なラインナップで、ついついあれもこれもと食べたくなる。ご飯に味噌汁のセットを注文して、おかずはガラスケースから持っていくという客もちらほらいる。ええい、どうすると迷っているうちにオムライスが到着してしまった。
これまた見事な街の定食屋スタイルのオムライスで、まさにコンプリート版という感じがする。実食しても満足感は変わらない。優れものだった。

帰り際に「おおきに」といわれた。大阪で実際にこの言葉を聞くのは極めて稀な気がする。「ありがとう」と尻上のイントネーションで言われる大阪スタイルも最近は減ってきた気がする。全国チェーン店の接客マニュアルに書いてあるのは東京弁だが、研修が動画になっているせいか、発音すら東京弁に似てきているのだろう。それが実感としてわかる。
テレビ番組では、大阪イントネーションを強調するインタビューばかり映して異国感を醸し出したいようだが、街の中の会話を聞けば随分とマイルドな発音になっているのがわかる。
天王寺という場所は、また大阪の下町感覚が残っているのかなとおもった。ただ、地理感覚でどこが大阪の下町なのかはよくわからないが、おそらく大阪市南側がそうだろう。つまり難波から天王寺あたりは「ど」がつくほどの下町なんだろうな。確か、じゃリン子ちえはこの辺りで暮らしていたのではなかったか。

オムライスに感動しながら、大阪文化論に浸る、天王寺の昼下りでありました。

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