街を歩く

ごま蕎麦と天ぷらで

北の街で都心部のあちこちにあったゴマ蕎麦屋の支店が、ビルの建て直しなどの影響でどんどん減ってしまい、ちょっと困った事態になっている。それでも、学生の頃から通っている店はいまだに健在で、そこでちょいとそばをたぐる気になった。
長めの散歩をした後なので、休憩も含めての蕎麦タイムになったが、注文するのはいつものもりそばだ。
冷たい蕎麦の王者といえば納豆そばであると信じている。昼に食べるのはこれに限ると思っているのだが、サラッと行きたい時にはやはり「もり」になる。そばを楽しむには、シンプルなものほど良い。料理としての蕎麦であれば、カレー南蛮やおかめそばだろう。豪華さを味わいたい時には、天ざるとか鴨せいろになる。ただ、もりそばはつゆと蕎麦の真剣勝負なので、店の格はここに出ると思っている。腹に余裕があれば、森戸かけを順番に頼む。かけそばの方が出汁の具合がわかりやすい。

この店は蕎麦つゆをケチらないのが良い。そばをザブンとつゆにつけても足りなくなることはない。蕎麦の名店は全国あちこちに多いが、胡麻を練り込んだ蕎麦はあまり見かけない。そういう意味でこの店は貴重な蕎麦屋なのだ。最後に蕎麦湯でつゆを割って楽しむのを覚えたのもこの店だ。蕎麦湯を飲みながらぬる燗で締める。

歳をとって覚えたのは、そばにはぬる燗という注文の仕方で、これはビジネスタイムのランチではない時にできる楽しみ方になる。流石に仕事の時の昼飯では、和風ファストフードとして蕎麦屋を使うから、酒はなしだ。
最近では、蕎麦屋の楽しみは蕎麦なのかぬる燗なのか、微妙になってきたが……………
蕎麦が来るまでチビチビと酒を舐めている時間が楽しい。

いつものゴマ蕎麦屋の後は、立ち飲み屋に寄ってみる。この店は小樽の有名食堂が出した支店で、焼き鳥とおでんを楽しめる。おでんもうまいが、おでんの出汁が染み込んだ大根を天ぷらにしたものがお気に入りだ。最初の注文をぬる燗と大根の天ぷらにして、後はのんびりあれこれ考えながら注文する。凝った料理は置いていないが、酒飲みの肴としてはよく考えられているラインナップだ。自宅の近くにこんな店が欲しい。

ちなみに歳をとったから淡白なものばかり食べているのかといえば、全くそんなことはない。枝豆に冷奴で肴は十分という「オヤジ・ジジイ」もよく見かけるが、全くそんな嗜好になることはない。まあ、好きなものを好きなだけ食べるのが幸せというものだから、枝豆に冷奴を否定するつもりはないが、決して同調はしない。
飲む時に肴をシェアするのも嫌なので、同行者が食べたいといえば一皿ではなく二皿注文する。もうあれこれ周りに気を使うのも飽き飽きしていることだし。

一人飲みにこだわるのは、案外とこれが理由なのかもしれない。わがままなのは間違い無いと思う。

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