
この赤い看板のラーメン屋は、千葉市あたりに行った時よく目にしていた。名前もすごいが、やはり赤白の強力な店舗外観が昼でも夜でも目立つからだ。ただ、店舗前を車で通り過ぎるだけで一度も立ち寄ったことがない。名前のイメージから「二郎系がつんラーメン」だと思い込んでいた。
その店が自宅近くに開いたので、新規開店時期をずらしてオープンの賑わいが落ち着いた頃に、つまり運営力がついて商品の品質も適正化された頃、昼のピーク前に行ってみた。
視察をするときには、ピーク時の運営力を見るためにあえて行列に並ぶということもあるが、その店の地力を見るには昼のピーク前が良いと思っている。ピーク前であれば売り切れ商品もなく、従業員にも余裕があるからだ。

事前にブランドサイトを確かめることもせず予備知識なしで店に出かけた。店頭に立っている幟を見て、初めて自分の理解が間違っていることに気がついた。なんと二郎系ではなく、背脂ちゃっちゃ系ラーメンだったのね。と我ながら自分の不見識に笑ってしまった。
また、全部のせラーメンが税込みだと千円を超えるのも、今風のラーメン価格だから文句はないのだが、1000円越えの商品を店頭で推すというのがちょっと意外だった。

注文はタッチパネルでというアフターコロナの標準オペレーションだった。タッチパネル内部の動線は、まずまず一般的なものだ。昔ながらの紙メニューブックも置いてあるから、タッチばネル・タブレットアレルギーの客にも救いの道は残されている。
メニュー選択ではいくつか異なる味を選ぶことができる。辛味噌味に心が惹かれたが、それは次回に注文することにして、まずは「標準品」を頼むことにした。
しかし、背脂が乗ったスープを見るのは何年振りだろう。今になっては、なつかしいというほどのオールドファッションスタイルに見える。
薄切りのチャーシューにメンマというシンプル構成は、平成初期に大流行した背脂ちゃっちゃ系の標準スタイルだ。食べて見るとなつかしさも感じるが、普通にうまい。細めの麺と塩味が強めのスープがよくあっている。最近の主流、豚骨と魚介だしのWスープとは対極にある味だが、これは好みの味だ。
しかし、丼の中に色気がほとんど感じられない。緑も赤も黄色もない。そういう意味では麺とスープで勝負というストイックスタイルとも言えるか。現代ラーメンのビジュアル受け狙いとは一線を画している感じがする。

イチオシらしいサイドメニューのチャーハンを追加で注文した。これはシンプルな塩味で、普通においしい。ラーメンと合わせて食べるにはバランスが良い薄味の仕上げだ。チャーハンを単品で頼むと、もう少し違う仕上げをするのかもしれない。
個人的には、町中華でチャーハンを肴にビールを飲むというおっさん飲みをよくやるようになったので(だいぶ、体に悪いという自覚はあるが)、酒の肴的にたべるには塩味が薄いと感じる。
逆に言えば、一般的な町中華のチャーハンが塩味が強すぎるのかもしれない。ラーメンのお供にはこれくらいの味がちょうど良いのだと思う。これまた個人的には皿の横に紅生姜がついていてくれると嬉しい。卓上には、黄色い沢庵の細切りが付け合わせで置かれていたが、あの真っ赤な紅生姜に郷愁を感じてしまう。
美味しいラーメンランチを食べて満足した。あと、一・二度は残りのメニューを試すために来ることになると思う。そのときには餃子も試してみよう。

ただ、この日に一番驚いたことは、ラーメンの旨さではない。この店の駐車場の奥に、埼玉県ではそれなりに名前の通った高級卵屋の販売店があり(これが道路からは奥まりすぎていて存在がわからない)、おまけに自動販売機で卵や卵使用のお菓子が売られていることだった。
この卵屋は自宅からも相当に離れた場所に本店があるため、これまでは卵を買うために一大決心をして、一時間ほど車を運転しなければならない、目的を持った買い物をする必要があった。それほどのブランド力・魅力がある卵なのだ。
今ではすっかり値上がりしている卵だが、スーパーで1パック買う値段が、この店では卵一個に相当する。つまり、この店で10個入りのパックを買うと、スーパーでは100個の卵を買える。看板にある「自称世界一美味しい」は、なかなか正しいと思っているのだが、お値段も世界一?かもしれない。
ラーメン屋さんには申し訳ないが、この卵を買うついでに、また何度もこの店のラーメンを食べに来るような気がする。